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第3章 管理と運営  ・  第1部:管理(MANAGEMENT)

 はじめに

 ※免責事項
   このマンションNPOのHpでは国連発行文書(UNITED NATION PUBLICATION-ECE/HBP/198)の
   内容をご紹介しています。同文書の日本における公式の文書ではありません。
   また文中の翻訳表現は権威ある公式の翻訳ではない事をお断りしておきます。(マンションNPO)

 ※ 本文の章・項・号番号は便宜的に当Hp日本語訳でつけたもので、報告書原文には付いていません。

3,1 管理規約(Condominium agreement)

欧州の西側と米国では、地方自治体の関与による共同住宅の管理規約(condominium agreement)方式が完成される以前から、 しっかりとした法制度が築かれていました。

経済が逼迫した国(訳注:原文ではeconomies in transition(経済的に過渡期)にある国という表現)では、大多数の既存の建物が共同住宅に変換され、 居住している借家人がそのまま区分所有者になりました。 このケースでは、地方自治体が特別に助言し、共同住宅と管理組合の登記を支援しています。

(1) 目的 (Purpose)

共同住宅の管理規約は、区分所有者、管理組合、理事会、委員会、 そして管理者(雇用されている場合)との間の内部関係を統制する中心的な文書です。
共同住宅の管理規約は、 組合にとって通常の共同住宅に関する国内法よりもはるかに几帳面な細かい規則と認識されています。
これらの文書は、包括的で透明性があり問題を処理して決定する上で明確なものでなければなりません。

共同住宅の管理規約は管理組合にとっての礎石です。 新しい共同住宅を建築する上で、管理規約はしばしば法的な乗り物に例えられます。 すべての区分所有者を例外なく平等に扱います。分譲、 若しくは賃貸集合住宅を居住者に分譲して共同住宅に変換した場合の区分所有者にとって、 売買契約の一部として管理規約に署名して承認受諾することには交渉の余地はありません。
付録Uに管理規約のモデルを示しています。   付録2 管理規約 参照

理事会は、新しい区分所有者が購入した住居の痛んだ部分や受け継いだ欠陥を修繕するために十分な時間を与えるべきです。

(2) 要旨(Contents)

管理規約は下記のような共同住宅の外観に物理的影響を与えることに関係する規定事項を明確に定めなければなりません。

・ 建物又は建物に影響を及ぼす、地方自治体によって定められた街の道路の名前と住居番号
・ 建物の登記事項を変更するような面積、構造その他全般にわたる事項についての規定
・ 建物内の位置、用途(例えば住居、商業用)、大きさ(例えば平米(u)、住戸数)、その他の特別、
  特徴的なこと、割当てられた貯蔵保管庫、駐車場区画等々の各区分所有に関する規定
・ 各区分所有部分の計算上、前提として規定されている方法と条件に変更を加える行為についての規定
・ 共有部として定められている建物内の装置、及び建物内外の敷地に関する明確な規定
・ 区分所有者の権利と義務についての規定
・ 図面、計画書、技術的証明書及び近隣の所有権についての規定

管理上の仕組及び手続きに関する規定
・ 管理組合の構成及び要素
・ 集会の方式と手続き
・ 議決権と手続き
・ 財務会計
・ 管理費と特別徴収金
・ 理事会の権限と責任
・ 管理者の役割と責任

管理規約はまた、区分所有者の行為の規則の概要と、 その規則に違反した場合の罰則についても規定しなければなりません。
使用細則は管理規約に基づいて規約とは別に作ることができます。 使用細則は、居住者同士に良好な関係を維持することを気づかせるために 管理規約の敏感な法的記述を具体的に標準的行為の規則として示した重要なものです。

建物内の静穏なひととき、ペット飼育の可否、バルコニーに置くものの制限、 特別な照明、旗をいれるポスト、窓の箱、外壁のエクステリアに立てるアンテナなど、 所有者が自由に設置できるとされているものの限度についての規定を含むこともできます。
付録Vに細則見本の文書を示しておきました。   付録3 使用細則 参照

使用細則の作成は、特別な項目を説明した「一般的規則」として、法令とは切り離して作成することが 推奨されます。
このような方法で、規則全体を変更する必要はないが、 それに付加する形で幾つかの必要な修正を加えることがあります。 もしも、区分所有部分につながる共用部における毎日の清掃や保全業務を、 区分所有者や居住者が行う場合、 それをどのような方法で行うかの説明と案内をつけることで適切に実施することができます。

規約の中身とその規約が区分所有者に採択されるには、 (中には共同住宅を建設・分譲した会社が既にこれを準備しているケースもある) その国のすべての関連する法律に基づいた指針でなければなりません。
管理規約の中に規定している多くの管理の具体的事例は、たとえこれらが既に法に規定していたとしても、 区分所有者、理事会そして関係する管理実務担当者の責任を示す最高の概要書になっています。

これは、すべての関係者が自分自身の責任、特に存在する関係法のことをよく知らない人たちにとっても、 その責任を真剣に考えることを確実にします。

3.2 管理組合の組織構造と機能
   (Structure and functions of the owners' association)

(1)管理組合(The owners'association)

共同住宅の管理に関して推奨される法的枠組みとは、 共同住宅の一つの住戸を購入したすべての区分所有者は、 自動的に管理組合の構成員となり、 組合員資格が与えられる事を強制的とする制度です。

管理組合が果たすべき責任の基本は、組合資産を有効に使って、共有資産の保全と修繕を 完璧かつ確実に行うことです。この事を成し遂げるために、管理組合は明確に定義された権利と責任をもった 組織構造を必要としています。 総会で決定された運営方針を実行する責任を果たすことは、管理組合という組織単独では出来ません。 また、国家や地方自治体もその目的を実行することはないでしょう。

住戸を所有する区分所有者の利益を維持し、市場価値を上げるためには、 管理組合は、法廷において原告又は被告(人)となるなど、契約上の協定を結ぶ事が可能でなくてはなりません。

これらの理由により、この指針では、管理組合は国の登記法に従って法人登記することを推奨しています。
この指針では、共同住宅の区分所有者は第三者に対する管理組合の最後の保証人であることを当然のこととしています。

管理組合が保全や修繕又はアップグレードの改良工事のために資金を必要とする場合、 管理組合が十分な付帯的保証がついた借り入れをすることは認められます。

管理組合が法人となった場合、国の法律の枠組みに従って、全ての区分所有者は、 管理組合の負債の返済義務を含めて、その責任を分担して負うことになります。
例えば、管理組合が債務不履行に陥り、 貸し手が資金を管理組合から回収できなかった場合、 貸し手は全区分所有者に対し個別に請求することになりますので、 区分所有者はそれぞれの資産を失うことになるかも知れません。

総会における区分所有者の共同行為としての総会は管理組合の最高意思決定機関です。 日々の管理組合の運営を効率よく実行するために、 区分所有者の代表からなる理事会を区分所有者の中から区分所有者の総会で選任して組織し、 その大きな権限を委任しています。

理事会は、管理組合業務及び総会で決定された業務を効率的に、 費用対効果を考えて実行していく責任があります。 理事会の理事は区分所有者に対して責任があります。 代表となった理事は区分所有者の利益を守る職務に基づいて代表者としての単独の名義で行動しなければなりません。

この責任を効果的に成し遂げるために、 理事会は管理組合業務を支援するための職業的管理者と契約する権限を与えられています。 総会における区分所有者の総意に基づき区分所有者で構成され 明確に責務を規定した委員会に権限を委任することができます。
総会に関する更に詳しい情報は本指針の「3.3 集会」を参照ください。

(a) 理事会(THE CONDOMINIUM BOARD)

区分所有者による総会を頻繁に開催することは不可能です。 管理組合は、総会で区分所有者から提案を受け、 決定した内容を管理者が履行することを補佐する現実的な方法を見つけなければなりません。

一般的、効率的な解決法は理事会を設けることです。 新築の共同住宅では、全区画が完売して理事選挙を経て管理組合が結成されるまでは、 売主が理事会として行動し管理していきます。 多くの分譲会社では完売後も、管理運営を成功させるために、 理事会としての職務にかかわり続けることを願っています。

この理事会メンバーの理事は通常、管理組合の年次総会で3〜5人が選任されます。 小規模の共同住宅では一人だけ(例えば、理事長だけ)の理事会も可能です。 理事の任期を1〜2年として選挙で選任するのが典型的です。

理事は、集会で決定した管理組合の事業執行の監督をするために、 区分所有者から指名を受けています。

小規模の共同住宅では理事会は、例えば従業員を雇用する、或いは保全や 修繕工事に関わる管理上の契約行為を直接実行することもあります。 しかしながら、中規模・大規模共同住宅では 外部の専門管理者を雇用する、或いは管理会社と契約するなどの行為を理事だけで行うのは正常な行為ではありません。 この場合、外部の専門管理者、或いは管理会社は管理組合の管理運営業務を管理監督する責任があります。

理事会が区分所有者の代理としての権限を与えられているとはいっても、 集会での区分所有者の総意に基づく決定でなければ実行できません。 この理事会の責務に関する制限事項は管理規約で明確に規定されなければなりません。

理事会を効率的に運営するための要素は、 共同住宅の区分所有者の共同の利益に関して常に全体的見地から俯瞰して見ることです。 このためには客観性と倫理的誠実さ(objectivity and integrity)が要求されます。 区分所有者の個別の利益は個人的・二次的な利益です。 財務或いは他の事でも決して決定を下したり、検討する役回りを演じてはなりません。 利害の衝突は区分所有者の信頼を維持するために慎重に避けなければなりません。

管理規約に理事解任手続規定がある場合には、 区分所有者からの信用を失った理事会メンバーを投票によって解任することは構いません。

理事会メンバーは、管理組合業務に関わる業者や団体などから、直接、間接を問わず、金銭的代償を受け取ってはなりません。 金銭的報酬を受け取ることは、即座に免職となる違法行為とみなされます。

しかしながら、理事会メンバーは管理組合から業務報酬を受け取る事は構いません。 その場合、報酬の支払に先立って、理事選出の選挙の前に全区分所有者にその情報を伝え、 区分所有者の同意に基づいて報酬額を決定することが必要です。

管理組合が活動していくなかで、理事会の責任として、 区分所有者に包括的、明確、正式に情報を伝えることは重要不可欠な要素です。 理事会が区分所有者からの信頼と信任の維持を確実にすることは極めて重大です。
管理規約はその規定の中に、区分所有者に対する情報の伝え方に関して、 伝える情報の種類と伝える頻度を規定することを推奨します。 例えば、「理事会は総会終了後の規定期日内に、全区分所有者に総会議事録の要旨を配布することができる」 とします。
総会議事録の要旨は出席できなかった区分所有者に、 業務上のやりとりの公式記録として、そこで話し合われた事を知らせる手助けとなります。
全てのコミュニケーションは、 国際法の下で法的に根拠の確実なものとして公式かつ正当に認められたものでなければなりません。 この中にはEメールや物理的な紙文書、または両方含まれます。

理事会は、業務に関する問題を討論したり、 委員会報告を聞いたりするための集会を開くことができます。
これらの理事会集会を区分所有者に公開することは構いませんが、 理事会決議の際に理事が議決権を行使する場合は公開すべきではありません。 これらの集会の開催回数を管理規約に規定しても構いませんが、 少なくとも年4回(又は4半期ごとに1回)は開催すべきです。 理事会の集会は、通常のカレンダー月ではなく、管理組合の事業年度に結びついていなければなりません。

(b) 委員会(COMMITTEES)

委員会は予め管理規約で業務範囲と権限を定められ、 区分所有者の総会における投票で承認されて設立されます。 扱う業務範囲は例えば、敷地景観計画、監査、投票、その他の活動などです。
総会前に、委員会委員候補者の申込を受け付け、 管理組合の年次総会で委員会委員の選任投票を経て、公式にその設立が認められます。

(c) 管理者(THE MANAGER)

中規模・大規模共同住宅で日々の管理業務をきちんと処理していくために専門の管理者を雇用することは賢明(advisable)なことです。 管理者は理事会により監督され、理事会に対して定期的に報告します。 管理者は専門の職業管理者または管理会社、 或いは区分所有者の中から数名が指名されて行うこともできます。

ほとんどの国内法では管理組合は管理者との間で、 業務要素と日々発生する管理者の責任を分割細分化した契約を締結することを推奨しています。 管理業務契約は契約当事者間の権利と義務の細部を定義したものでなければなりません。

管理契約を規定し明文化することには、職業専門家個人又は管理会社とで差異を設けるべきではありません。 複数の人が管理を共同で実行するとき(区分所有者の中から選任されて)は、 各人ごとに責任を明確に定義した分割協定書で理事会を設立することを推奨します。 ただし、単体契約といってもこのケースが当てはまる場合があります。

この管理委託契約書のモデルを付録Wに示します。   付録4 管理委託契約 参照

(d) 委託契約(CONTRACTORS)

管理者は理事会の承認を得て、修繕、保全、景観計画、管理運営等に関して必要に応じて専門の、例えば、弁護士、建築士や技術者、設備業者、 清掃業者等々を選定して業務委託契約を締結します。
この業者選定に関して管理規約で入札又は応募者(社)数の最低数を通常3者(社)以上と規定することができます。

(e) 設備業者(UTILITY SUPPLIERS)

温水供給業者、ガス、電気、通信その他多くの設備業者が 区分所有者との間で使用及び保全契約を締結しています。 これらの契約種別は通常、戸別契約となっており、管理組合の管理業務範囲には含まれません。

特別な事例では、管理組合が臨時に区分所有者と供給業者との間に立って契約を交わすことがあります。 経済的に逼迫している多くの国では、区分所有者は業者と直接契約するか、又は幾つかの事例では、 管理組合が供給業者と契約又は信用保証するなどのケースもあります。

これらの業者への定額又は使用量に応じた料金の支払手続きは、 管理組合と区分所有者との間の契約が確立しています。 管理組合が支払料金の中から報酬、或いは使用者からの契約委任に対する報酬を受け取る権利を 法律上与えられているかどうかにかかわらず、 共同住宅に対しては優先的特別価格で提供されている場合、国内法では問題となる重要な事項です。

(f) 直接雇用の従業員(EMPLOYEES)

必要に応じて、及び、法に従って、 管理組合は管理員や清掃員などを フルタイムの或いはパートタイムの従業員を直接雇用することができます。
従業員の雇用と監督は管理者の仕事です。

3.3 集会 (Meetings)

管理組合は同等の権利を有する複数の区分所有者で成り立っています。 所定の場所で関連する問題を話し合い決定する公式の集会では、 区分所有者と理事会にとって重要な決定が成されます。

それゆえに、これらの集会の開催と召集を拘束力のある手続きによって行い、 集会終了後にその結果の報告をすることは管理組合を成功に導くために重要です。

この章では、この集会の召集、開催案内、議事録のガイドラインを提供します。
議案書の見本は付録に、定期総会開催案内は付録に、議事録は付録に示しました。
付録5 定期総会議案の要領    付録6 定期総会開催案内    付録7 定期総会議事録 参照

(1)定期総会(Annual general meeting of owners)

区分所有者の全員が集まる定期総会は管理組合にとって最も権威ある公式の集会です。 この集会で最も重要なことは、毎年一定の時期に開かれる年次総会だということです。 この集会は定期的に、 通常は共同住宅ごとに定められた事業年度終了後の一定の日に、開催しなければなりません。

(a) 総会の招集(CALLING THE MEETING)

定期総会は年一回、事業年度終了後の3ケ月(first quarter)以内に開催されなければなりません。

定期総会の開催通知は開催日の14日前に開催場所、開始時間、すべての議案(討議される事案と同意を求める事項) を記した書面で通知されなけれななりません。 通知から開催日までの日数については、休祭日を除く商業的営業日又はカレンダー通りの日数かについて、 規約に規定が無い場合は国内法の定めによります。

先例として、法律上認められる通知方法として、EメールやFAX(mailed hard copy letter)が許可されるかどうかは、 国内法又は管理規約にその許可規定があるかどうかによります。

通知される議案書には、前年度の事業報告書、財務報告書、当年度の予算案、選挙委員会からの提案書が含まれていなければなりません。 管理者には定期総会を召集する責任があります。もしも管理者がその義務を果たさなかった場合、 定期総会は理事会によって召集されます。理事会が行わなかった場合は数名の区分所有者が召集することができます。

管理組合は、定期総会における採決で代理人を含めた区分所有者の総議決権数が過半数を超えたことをもって 議案を決定する採択のための権利を有しています。 もしも定足数がこの基準に満たなかった場合、速やかに次回の定期総会開催を召集しなければなりません。 総会において決定する権利は欠席者の数に委ねられます。 この管理組合関連文書を含めた総会召集通知を準備することを公式行事として確実に実行しなければなりません。

(b) 総会議案書(AGENDA FOR THE MEETING)

定期総会の議案書には、総会提案議題に関係する法、制定法、規約に適合する決定事項が記載されます。 総会で採決されるべきすべての議案は議案書に含まれていなければなりません。 集会で区分所有者に資産価値を高める修繕や改良工事の費用を示して討議、採決して欲しい提案内容を明確にすることは重要です。

(c) 総会投票規定(VOTING RULES)

総会において理事会からの提案を多数決で決定することは管理組合の権限を行使することです。 議案の採択に関しては、規約にある欠席者若しくは代理人の規定を通して召集された集会のなかで適切に 取り扱うことができます。

不在投票者の投票は、正確かつ広範囲の情報を配布することを要求します。 そして区分所有者の間で意見交換する必要性を排除しています。 この理由からしても、管理の目的からしても、それは推奨できません。
(訳注:国際的な域外からの不在投資者の存在を考慮すると、この事は理解できると思います。)

集会における投票は挙手、或いは投票用紙への記入でも構いません。 もしも一定の割合の出席者から要請があった場合(通常は10%)、投票用紙への記入による方法とすることができます。 議決権は通常は1戸に1票が基本になりますが、国内法や地方自治体の法令及び管理規約の規定に従い、 所有権に基づく加重配分による議決権とする事もできます。 どちらでも構いませんが、この指針では運営と管理のしやすさから、1戸1票を基本としています。

投票する環境以前に、全ての出席代理人の確認と承認、 投票を数える立会人などの公正な仕組みが確立されていることが重要です。 ほとんどの問題は投票に関連しています。 集会における承認又は決定は、大多数の区分所有者の単純かつ厳然たる意思決定です。 この事は、候補者に対する、或いは問題に対する定足数の過半数の賛成をもって決することを意味します。 同じ議案で集会を2回行ったとしても、定足数にかかわらず単純に多数により決定されます。

多数決により決するといっても、重要な問題は特別多数で決する必要があります。 幾つかの国では、出席した区分所有者の3分の2以上の賛成で決する特別決議のルールがあります。 この特別決議とすべき事項は管理規約に明確に規定しなければなりません。

多くの国で区分所有者から承認をうけている事例を下記に示します。
 ・ 管理規約又は区分所有者の所有権に係る登記事項の改正
 ・ 共有部の重要な部分の売却又は永久的処分
 ・ 1つの住戸を複数の住戸に永久的に分割すること(管理規約に規定ある場合を除く)
 ・ 住戸の用途に関する基本的変更(居住用を商業用にするなど)

多くの国で4分の3以上の多数決によると規定している例を示します。
 ・ 管理規約の改正
 ・ 社会的慣習や必要性から見て現状維持を超えた修繕、保全、改良工事
 ・ 借入れ契約の決定
 ・ 共同住宅の建物及び又は共用部に影響を与える建築協定に関する決定

適用できる法と管理規約で認められている場合、 区分所有者は集会の開催を要求することなく決議案を採択する権利を行使することができます。 このケースの場合、理事会は全区分所有者に対して決議案の草案と、 その決議案の中で提案者の賛否の立場と回答期日を記して送付しなければなりません。 規定の期日内に区分所有者が決議案に対する賛否を示さなかった場合、 決議案に棄権、賛成、反対かどうかを関連する法と管理規約に規定されている方法によって 決定することになるでしょう。

(d) 総会議事録(MINUTES)

定期総会の議事録には議長、書記、及び議事録署名人2名の署名が必要です。 議事録は管理者と共同住宅の全区分所有者にできるだけ早く配布されなければなりません。 議事録に記載すべき事項は管理組合文書として規定された様式若しくは集会で同意された方法によります。

区分所有者へ通知したとみなす行為には下記があります。
 ・ 区分所有者あてに郵送
 ・ 共同住宅内の管理組合所定の掲示板に掲示
 ・ 全区分所有者がEメールにアクセスできる場合、Eメール送信
 ・ 全区分所有者がWebにアクセスできる場合、Webに掲載

重要情報を伝える広報は、定期総会議事録を各区分所有者に郵送又はEメールで送付する上で推奨される手段です。
議事録はまた安全かつセキュリティに配慮したコミュニティのWebサイトに掲載することもできます。

議事録には、議案、すべての提案議題、それに対する承認・採決結果が記載されていなければなりません。 討議の内容をそっくりそのまま議事録に反映させる必要はありません。 但し、出席者には自己の発言の要旨を議事録に記載するよう要求する権利があります。

(2) 区分所有者の要求による臨時総会(Meetings of unit owners)

区分所有者は必要に応じて当期と次期の定期総会の中間に集会の召集を要求することができます。 この総会は解決すべき緊急の事態が発生しても、 管理者若しくは理事会がその解決のための集会を決定しなかったとき、 少なくとも全区分所有者の10分の1以上の要求により召集するものです。

区分所有者集会は決議案の提示、議案の採択、そして議事録の配布も含めて、定期総会と同じ手順で開催されます。 議案には集会開催手続きと、 議案事項の停止は正式動議の討議のために差し控えるべきものとする事を含むものでなければなりません。

(3) 理事会の会議(Board meetings)

理事会の会議は、正式かつ理想的には毎月開催されるべきです。
理事会の会議での典型的な議題としては、修繕と保全のための計画に関する事項、 財務とその他の問題に関する月次報告書、そして管理者または区分所有者から提案された問題に関する討議などに関して、 完璧かつ前向きな討議を会議の議題に含めるべきです。

会議のルールとして、 理事会は一般区分所有者が同席して公開会議とすることを決定しても構いません。 ひとつの代案は、理事会内でフリーディスカッションやファッシリテーションを進めるために、 理事だけの出席に限定した会議とする方法もあります。

公開会議を選択した場合、区分所有者の個人情報などの機密情報に関する討議は公開しないことが必要です。 区分所有者は、理事会への出席を許可された場合、或いは意見を求められて討議に参加する場合は出席が可能です。

理事会の会議は、議長からの、又は理事2名による公式の召集により開催されます。 管理者は理事会が意見を求めた場合に或いは参考人としての要請に応えて出席することが出来ます。

理事会の会議は管理組合の明文化された規定による場合と、若しくは管理組合による要請を承諾する形での公式な会議以外は、 非公式なものです。

理事会での議案の採決に関しては特別な議論を必要とします。 例えば、理事会の中では少数意見派に属する理事が採決を要求した場合です。 この例では、議長がキャスティングボート(訳注:casting vote:賛否同数のとき議長の投じる決定投票)を行使しなければなりません。

理事会議事録は議案と討議の主要な論点を含めて、少数意見と投票結果は記載されなければなりません。 議事録は区分所有者が閲覧・入手できるようにしておかなければなりません。

3.4 区分所有者による共同管理
  (Management of jointly owned property)

前もって断っておきますが、管理組合に課せられた義務を遂行する責任上、最も重要な事は、 管理組合の資金を最も効率的な方法で用いて、 共有部の十分な維持修繕を確実に行うことです。

この業務は次の3つの主要な責任範囲に分けられます。
 ・ 組織管理
 ・ 財務管理
 ・ 日々の管理、共用部の保全と修理

組織として、これらの責任を効率よく果たすには、 さまざまな方法で専門資格者を選任することが必要になります。 管理者は共有部の資産をただひとりで扱うか、或いは、 外部からさまざまな熟練専門職の支援を得るか、又は、 管理会社に委託するか、個人管理者を雇用する方法のどちらかを選択することもあります。

共用部の管理を最も適切に行う方法は、各区分所有者で構成する管理組合を注意深く選任することです。 理由は、この方法だけが効果的な管理を安全に実行できるからです。 すべての組織における権利と責任は明確でなければなりません。(付録8 利害関係者の権利と義務 - 紛争解決事例  参照)

(1) 管理者の責任(Responsibilities of the manager)

管理は、その方法の選択如何にかかわらず、管理者とスタッフが法令、管理規約、 その他の決定事項に従って適正に執行していくことで成り立っています。 管理者とスタッフが遵守すべき項目を例示します。
 ・ 民法とその関連法が規定している手続き
 ・ 共同住宅関係法令
 ・ 管理規約
 ・ 管理契約
 ・ 管理組合によって採択された決定事項

管理業務の実務においては以下に示すような、専門の工業標準規格に関連するような補助的な基準も含まれます。

(a) 管理業務(ADMINISTRATIVE TASKS)
 ・ 適正な集会を確実に実行していくための必要な任務の遂行
 ・ 総会、理事会において採択された決議事項の実施
 ・ 年間事業計画の実施
 ・ 月次/四半期の事業報告書の準備
 ・ 管理要員の雇用
 ・ 外部契約者との契約受諾義務(保険・行政への報告含む)
 ・ 新しく入居された所有者/賃借人への情報提供
 ・ 迷惑行為の入居者への警告・罰金の請求
 ・ 管理組合の代理人としてのすべての業務

(b) 財務管理業務(FINANCIAL TASKS)
 ・ 銀行口座の開設と管理
 ・ 予算と会計の準備
 ・ 請求書・税金の支払と管理
 ・ 区分所有者が支払う管理費等の徴収、督促
 ・ 直接雇用従業員への給与の支払

(c) 資産の保全活動(PROPERTY OPERATION)
 ・ 設備の供給(電気・ガス・温水・その他)
 ・ 保全・修繕・改良工事
 ・ 管理規約に規定の使用細則の履行
 ・ ボランティア作業の管理(植栽・清掃その他)
 ・ 国内法に基づく安全・避難計画の作成

(2) 専門管理者の雇用(Hiring a professional manager)

専門管理者を選定し、最終的に管理者と雇用契約を結ぶのは時間はかかりますが重要です。 それは総会で選ばれた理事会や専門委員会の担う責任です。

管理者の雇用は重要な決定であり、 管理者を選定し最終的に管理者と雇用契約を結ぶプロセスは、もしも、 委員会に商業的専門的知識があり、専門の技術的問題として捉えることができるなら、簡単です。

国によっては管理組合の成立を法では要求していないところもあります。 この場合は通常、より好ましい方法として、(特に大規模の共同住宅では)、 自主管理よりも単純多数決で専門管理者の雇用を決定する方法を推奨しています。

もしも管理規約に管理に関する記述がなければ、 委員会は委託する管理業務の内容と定義を草案として作成しなければなりません。 (管理委託契約書の見本は 付録4 管理委託契約 を参照)

管理業務の草案が完成したら、通常、委員会は地方の業者公募欄に公告して、 できるだけ多くの候補者を募集します。
可能性のある候補者を限定したら、委員会は各管理項目に基づいて候補者に証明書や推薦状の提出を依頼します。 もしも必要な場合は、関連参考項目の中に銀行からの証明書(bank references)を入れることもできます。

各管理項目に基づいて候補者の書類審査を行います。応募者の中には公式の質問請求書(official interviews)を要請する場合もあります。 各応募者の書類審査が終了したら、できるだけ同一の方法で、下記の情報についての回答を引き出します。
 ・ 応募者の経歴
 ・ 管理項目と雇用についての応募者の考え方・意見
 ・ 管理業務に関する管理能力(証明書、時間、対応能力)
 ・ 管理組合が目指す最終目標に対する応募者の洞察力(vision)と適合性(compatibility)

各応募者からの聴取が終了したら、委員会で各応募者について討議し、 理事会に対して推薦候補者を提示します。もしも必要なら応募者への二次聞き取りを行うこともあります。 理事会への推薦は全員合意又は少数意見、多数意見をつけても構いません。 十分に検討するためには、一人の候補者を指名するより、むしろ望ましい方法です。 この場合、候補者は優先順位をつけて推薦されるべきです。

理事会における最終決定で選定者に対し管理者雇用契約申込を行います。 業務契約申込が受諾された場合、候補者は契約受諾書に署名します。 理事会は契約書にサインする前に、区分所有者、関係する弁護士、 自治体、その他の関係機関に候補者の評価結果を通知します。

(2021年5月12日初版掲載・随時更新)