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ハラスメント(10) 【判決】 (通気口ベントダンパー) (2023 ONCAT 37)

【年度別目次】 (2021)  (2022)  (2023)  (2024)

この頁は(10)です
No.事件番号件名判決日
(7)2023 ONCAT 9 (7) 【抗告】弁護士資格剥奪の申立て・却下 2023年1月25日
(8)2023 ONCAT 10 (8) 【抗告】弁護士資格剥奪の申立て・却下 2023年1月26日
(9)2023 ONCAT 36 (9) 【抗告】訴えを却下(裁判管轄) 2023年3月7日
(10)2023 ONCAT 37 (10) 【判決】訴えを却下(通気口ベントダンパー) 2023年3月10日
(11)2023 ONCAT 46 (11) 【判決】事件記録提出請求棄却 2023年3月21日
(12)2023 ONCAT 48 (12) 【抗告】双方の申立てを却下(裁判管轄) 2023年3月22日
(13)2023 ONSC 3758 (13) 【控訴審判決】控訴棄却2023年6月26日
(14)2023 ONSC 3834 (14) 【控訴審判決】言い渡しを延期 2023年6月27日
(15)2024 ONSC 4415 (15) 【控訴審判決】控訴棄却 2024年8月8日
解説:(2023.04,20) 【ハラスメント概論と判例 目次】 

【判決】(訴えの却下) (MOTION ORDER) (2023 ONCAT 37)

CONDOMINIUM AUTHORITY TRIBUNAL

DATE: March 10, 2023
CASE: 2022-00473N
Citation: Rahman v. Peel Standard Condominium Corporation No. 779, 2023 ONCAT 37
Order under section 1.41 of the Condominium Act, 1998...
Member: Nicole Aylwin, Member
The Applicant,
Aqib Rahman / Self-Represented
The Respondent, 
Peel Standard Condominium Corporation No. 779
Represented by Megan Molloy, Counsel

訴えを却下する決定 (DISMISSAL ORDER) (2023 ONCAT 37)

判決日:     2023年3月10日
事件番号:   2022-00473N
事件名:    ラーマン 対 ピール スタンダード コンドミニアム管理組合(登記番号779), 2023 ONCAT 37
準拠法令:  コンドミニアム法1998 1.41項に基づく命令
裁判官:    ニコール・エイルウィン(コンドミニアム裁判所判事)
原 告:    アキブ・ラーマン/本人弁護
被 告:    ピール スタンダード コンドミニアム管理組合(登記番号779)(”PSCC779”と略)
         代理人  メーガン・モロイ(弁護士)

訴えを却下する決定 (DISMISSAL ORDER)

[1] コンドミニアム裁判所(CAT)の実務規則 43.1項に基づき、CAT は、紛争を審理または決定する
  法的権限がないと判断した場合、第 3 段階 - 裁判所の決定で事件を終結させることができる。

[2]  原告アキブ・ラーマン氏(Aqib Rahman)は、2022 年 11 月に第 3 段階 (裁判所に判決を求める)申請を
  提出した。請求内容は、ラーマン氏によると、臭気(odours)、蒸気(vapours)、臭い(smells)、煙(smoke)、
  およびその他の空気中の汚染物質(other airborne contaminants)である。欠陥のある通気[通風]孔
  から住戸に侵入していると彼は信じている。当裁判所は、蒸気、臭気、煙などによって引き起こされる
  迷惑、不快感、または混乱を伴う事件を扱う管轄権を持っているため、当裁判所はこの訴えの申請
  を受け付けた。

[3] 被告であるピール スタンダード コンドミニアム管理組合 779 (「PSCC 779」) は、これは不合理な迷惑
  行為、煩わしい、または混乱(nuisance, annoyance, or disruption)に関する事件ではないという理由
  に基づいて、この訴えを却下するように申立てた。むしろ、これは裁判所の管轄外である保守および
  修理の問題に関する紛争であるという立場をとっている。さらに、法廷が、この事件の内容が不当な
  迷惑、煩わしさ、または混乱であると判断したとしても、その事件は成功する合理的な見込みがなく、
  却下されるべきであると主張している。

[4] 原告と、管理組合を代理する法律事務所との間に重大な対立があると言っても過言ではない。現在も
  両当事者間で複数の法的手続きが進行中である。これらのさまざまな訴訟手続きでPSCC 779 を
  代理するために PSCC779 によって選任された法律事務所との間で進行中の法的手続きも存在
  している。

[5] 本件に関する審問のいくつかの時点で、ラーマン氏は証拠、提出物、事実、および他の法的手続き
  に関連する法的な通知を、本件の証拠および提出物として検討するように裁判官に要請した。

  これらの手続きは私が決定しなければならない問題とは関係がなく、他の紛争に関して他の訴訟で
  提出された資料を検討することは公正または適切ではないため、私は辞退した。
   しかし、このことをラーマン氏に説明したにもかかわらず、彼はそのような問題を提起し続け、
  しばしば審理を遅らせ、手続きに時間と費用を追加した。

  決定を下すにあたり、裁判官は適切に私の前にある、この訴えに関連する提出物と証拠のみを考慮した。

[6] 以下に示す理由により、裁判官は、この事件の内容は、当裁判所の管轄外であるメンテナンスと
  修理の問題に関するものであると判断した。したがって、本件の訴えを却下するものとする。

分析 (ANALYSIS)

[7] コンドミニアム裁判所実務規則 19.1 は、以下を含む特定の状況において、裁判所はいつでも申請
  または事件を却下できると規定している。
  (a) 事件が、申請者の懸念に対応するために被告に CATの裁判手続きを通過させることが不公平
     なほど小さな問題に関するものである場合。
  (b) 事件が成功する合理的な見込みがない場合。
  (c) 事件が、CAT が審理または決定する法的権限を持たない問題に関するものである場合。
  (d) 原告が不適切な目的で CAT を使用している場合 (例: 煩わしい申請書の提出)。

[8] PSCC 779 は、裁判所に対し、何よりもまず 19.1(c) に基づいて訴訟を却下するよう求めた。

規則 19.1 (c): 当裁判所は、この事件を審理または決定する法的権限を有しているか?

[9] この申請は、裁判所の管轄下で提出された。
  オンタリオ規則 179/17 (「O. Reg 179」)の 1(1)(d)(iii.2) には、当裁判所は以下に関する紛争を処理
  できると規定されている。
  (iii.2)共用部、住戸内の個人に対する嫌がらせ、迷惑、または混乱を禁止、制限、または管理する
  規定(Provisions that prohibit, restrict or otherwise govern any other nuisance, annoyance
  or disruption to an individual in a unit, the common elements...)

  (訳注) オンタリオ規則 179/17は、コンドミニアム裁判所(Condominium Authority Tribunal)規則で
       コンドミニアム裁判所(CAT) の権限と運営管理規定です。

[10] 嫌がらせ、迷惑、または混乱に関する救済を命じる裁判所の管轄権は、コンドミニアム法(「法」)の
  117(2) bには、次のように規定されている。
  (2) なんびとも、その活動が以下の発生または継続をもたらす場合、コンドミニアムの住戸、共用部又は
    資産 (存在する場合) で活動を行ったり、活動が行われることを許可したりしてはならない。
  (a) 住戸内の個人、管理組合の共用部または資産 (存在する場合) に対する嫌がらせ、迷惑、
    または混乱、不当な騒音
  (b) 住戸内の個人、共用部、または管理組合資産 (存在する場合) に対するその他の所定の迷惑行為
    煩わしさ、または混乱

[11]  「その他の所定の迷惑行為」は、オンタリオ規則 48/01 (「O.Reg 48/01」)の26 に定義されている。
  それらが「不合理」である場合は、臭気、蒸気、および煙を含む。

  (訳注) オンタリオ規則 48/01は、コンドミニアム法の内容全般にわたって実施のために必要な細則又は
       手続きを定めた、コンドミニアム法施行規則です。

[12]  この紛争の始まりは 2022 年の 8 月と 9 月にさかのぼる。PSCC 779 は、ラーマン氏からの苦情に
  対応して、ラーマン氏の住戸も他の住戸も同様ですが、調査の結果、(ベント カバーの後ろにある)
  ダンパーが現在の建築基準法要件を満たしていないことが判明した。そのため、PSCC 779 は、
  エンジニアの推奨に従って、来年 (現在の年である 2023 年) 内にすべてのダンパーを改造すること
  を提案した。

[13] PSCC 779 によると、この事件は、その本質において、不合理であるかどうかにかかわらず、迷惑、
  行為(Nuisances)、煩わしくさせる事(annoyances)、混乱させる事(disruption)に関するものではない。
  むしろラーマン氏は、PSCC 779 が提案した各住戸の換気口を改造する計画に不満を持ち、換気
  システムに関して、彼が提出した苦情に対するPSCC 779の処理方法に不満を持っている。
  その結果、彼らはラーマン氏がこの紛争を「迷惑行為(Nuisances)」論争として組み立てて、彼の不満
  を公表した(to air his grievances)と主張している。この主張を裏付けるために、PSCC 779 は以下を
  指摘した。ラーマン氏は本件をニューサンスとして主張しているが、PSCC 779 の統治文書(宣言書、
  管理規約、使用細則)の中のニューサンス規定のどの条項を適用するのか、彼は特定していない。
  ラーマン氏の主張のほとんどは欠陥のある通気孔とそれらの修理に焦点を当てていると指摘した。

[14] PSCC 779 の主張に対して、ラーマン氏は抗告として提出した最初の陳述書のかなりの部分を費やし、
  建物内および彼の住戸内の換気システムがどのように機能しているか、及び PSCC 779 の修理計画
  が何故、どのように施工されるかを説明した。換気システムですでに特定されている瑕疵(deficiency)を
  修正(fixing)する組合の計画は欠陥(is flawed)を重ねるものである。彼はこの分野の専門知識を持って
  おり、彼の専門知識に基づいて、PSCC779 の提案された計画と現在の行動は、換気の問題に対処
  するには不十分であることを主張した。彼の最初の陳述書では、彼は住戸内の嫌がらせ、迷惑行為、  
  混乱についてほとんど、またはまったく言及していない。

[15] 以上の経緯から、裁判所が本件申立てを決定するために必要な情報を、ラーマン氏本人が認識して
  いるかを確認するために、裁判官は ラーマン氏に裁判所の規則 19.1 (b) および (c) と、本件申立て
  が被告側から却下を求められていることを伝え、更に、これらの規則に基づく場合、この事件が裁判
  所の決定権の範囲内であると彼が信じた理由の説明を求めた。
  即ち、この事件が、メンテナンスや修理に関する事件ではなく、迷惑行為、煩わしさ、混乱に関するも
  のであることを説明すること。そして、この訴訟が法第 117 条 (2) に基づく迷惑行為、煩わしさ、又は
  混乱の申し立てとして成功する可能性があることを示す証拠を示すように彼に求めた。
  裁判官はまた、彼が PSCC 779 によってなされた主張について最終的な答弁陳述書の提出を行うこ
  とができることを示した。

[16] 彼の最後の返信で、ラーマン氏は再度、通気口ベントの吸引ダンパーの欠陥が PSCC 779 によって
  適切に対処されていないと彼が信じる理由を詳細に説明した。非常に風の強い日には、ダクトから
  大きな遠吠え音が聞こえ、「天候によっては」ダンパーの欠陥により、住戸に空気が戻り、悪臭などが
  発生する可能性がある。

[17] ラーマン氏は、適用したい PSCC 779 の管理文書の条項を特定していない可能性があるが、その必要
  はない。裁判所は、サブセクション 117 (2) に記載されている活動を禁止、制限、またはその他の方法で
  管理する…」という条項を含む紛争に対して、コンドミニアムの書類に相当する規定があるかどうかに
  関係なく、法律条項の117(2)により、裁判管轄権を持っている。

[18] ただし、117(2) に基づいて紛争を決定するために裁判所の管轄内に入るには、迷惑、煩わしさ、または
  混乱の証拠がなければならない。ラーマン氏は、通気孔の欠陥が彼の住戸内の臭気、他の臭い、蒸気、
  または煙の原因になっている可能性があると主張しているが、これらが不合理であるという主張や証拠は
  提示していない。したがって、裁判官は、それらが法117(2) の目的のために迷惑な迷惑または混乱を形成
  すると結論付けることはできない。

[19] 最終的に、この紛争の中心にあるように見えるのは、PSCC 779 が故障したダンパーの特定に対応して
  取った行動、それらに対処するための計画、その計画がどれだけ迅速に実行され、誰にどのような費用
  がかかるかということである。一般的なメンテナンスと修理の問題はすべて賛否両論が出るものであって、
  それらの計画に関する管理組合の決定権は裁判所の管轄外である。

[20] したがって、上記の理由から、裁判官は、この事件はその本質において、法第 117 条第 2 項の下で
  不合理な迷惑、煩わしさ、または混乱に関するものではないと判断する。
  したがって裁判官はこの訴訟を却下する。

[21] この紛争は当裁判所の管轄権に属さないと判断したので、コンドミニアム裁判所実務規則 19.1(b) に
  基づく合理的な勝訴の可能性があるかどうかという問題について、裁判官は判断する必要はない。

命令 (ORDER)

[22] 当裁判所は下記を命ずる。
   1.コンドミニアム裁判所実務規則43.1の規定により、本事件の第三段階の審理を却下する。


裁判官 ニコール・エイルウィン(コンドミニアム裁判所判事)
公開日:2023年3月10日


[訳注]
[19] (後段)一般的なメンテナンスと修理の問題は、すべて賛否両論が出るものであって、
       それらの計画に関する管理組合の決定権は裁判所の管轄外である。
  (its plan to address them, are all matters of disagreement. All matters of general
  maintenance and repair -which are outside the jurisdiction of the Tribunal.)

(以上 マンションNPO 訳)       (2023年4月28日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 28 April 2023/ Revised Publication -time to time)