「管理組合の運営」 > 【コンドミニアム裁判所 判例 目次】 > 【ハラスメント概論と判例 目次】 > (13)【控訴審判決】

ハラスメント(13) 【控訴審判決】 (REASONS FOR DECISION) (2023 ONSC 3758)

【年度別目次】 (2021)  (2022)  (2023)  (2024)

この頁は(13)です
No.事件番号件名判決日
(7)2023 ONCAT 9 (7) 【抗告】弁護士資格剥奪の申立て・却下 2023年1月25日
(8)2023 ONCAT 10 (8) 【抗告】弁護士資格剥奪の申立て・却下 2023年1月26日
(9)2023 ONCAT 36 (9) 【抗告】訴えを却下(裁判管轄) 2023年3月7日
(10)2023 ONCAT 37 (10) 【判決】訴えを却下(通気口ベントダンパー) 2023年3月10日
(11)2023 ONCAT 46 (11) 【判決】事件記録提出請求棄却 2023年3月21日
(12)2023 ONCAT 48 (12) 【抗告】申立てを却下(裁判管轄) 2023年3月22日
(13)2023 ONSC 3758 (13) 【控訴審判決】控訴棄却 2023年6月26日
(14)2023 ONSC 3834 (14) 【控訴審判決】言い渡しを延期 2023年6月27日
(15)2024 ONSC 4415 (15) 【控訴審判決】控訴棄却 2024年8月8日
 (最終解説:2023.04,20) 【ハラスメント概論と判例 目次】 

【控訴審判決】 (REASONS FOR DECISION) (2023 ONSC 3758)

ONTARIO SUPERIOR COURT OF JUSTICE

DATE: 2023-06-26
COURT FILE NO.:: DC-21-11
Citation: Peel Standard Condominium Corp. No. 779 v. Rahman, 2023 ONSC 3758
BETWEEN:PEEL STANDARD CONDOMINIUM CORPORATION NO. 779 Appellant
                        -and-
         AQIB RAHMAN and CONDOMINIUM AUTHORITY OF ONTARIO
         CONDOMINIUM AUTHORITY TRIBUNAL Respondents
Antoni Casalinuovo and Victor Yee,           
Mr Rahman, self-represented
Luisa Ritacca and Olivia Eng, For the Tribunal
Heard: in Brampton, by ZOOM: June 1,2023
Justice. D.L. Corbett J.:

【判決理由】 (REASONS FOR DECISION) (2023 ONSC 3758)

判決日:   2023年6月26日
事件番号: DC-21-11
事件名:   ピール スタンダード コンドミニアム管理組合(登記番号779) 対 ラーマン, 2023 ONSC 3758
上告人:  ピール スタンダード コンドミニアム管理組合(登記番号779)(”PSCC779”と略)
         代理人 アントニー・カサリヌォーヴォ と ビクター・イー
被上告人:  アキブ・ラーマン 及び オンタリオ州コンドミニアム庁・コンドミニアム裁判所
         代理人 アキブ・ラーマン/本人弁護  
         コンドミニアム裁判所 代理人 ルイサ・リタッカ と オリビア・エング 
聴聞:2023年6月1日 ブランプトンにおいてZOOM(リモート会議システム)を使用して
裁判官:    D.L コーベット

判決理由 (REASONS FOR DECISION)

[1] 上告人は、2021年2月16日付のコンドミニアム裁判所のローリー・サンフォード判事の
   判決に対して上告している。この判決では、被上告人ラーマン氏は上告人の建物の
   外にある指定された障害者用駐車区画に駐車する権利があると認定し、付随的
   救済措置(2021 ONCAT 13)を与えている。

[2] 上告人は控訴において以下の争点を提起している。
   a 仲裁裁判所がこの紛争を裁定する際に「管轄の範囲を超えた」かどうか。
   b  ラーマン氏が開始した訴訟が多数あったため、裁判所がこの訴訟を訴訟手続きの
     濫用として却下しなかったことは誤りであったか。
   c 裁判所がラーマン氏に1,500ドルの「精神的損害賠償」を命じたことは誤りであったか。
   d  裁判所は、「ラーマン氏に対して課されたチャージバックが違法であったことを証明
     する法的責任を不当に覆し」、それによってこの裁判所の拘束力のある判例に従わな
     かったという誤りを犯したかどうか。
   e 裁判所が、Amlani v. York Condominium Corporation No. 473、2020 ONSC 5090に
     おける本裁判所の判決に従わなかったことは誤りであったか。
   f 上告人が手続き上の公正を否定されたのは、裁判所側の偏見に対する合理的な懸念
     のためか、または上告人の忌避申立てに対する裁判所の不十分または誤った理由の
     結果としてか。

[3] 裁判所で争われた実質的な争点は焦点が絞られていた。ラーマン氏はオンタリオ州運輸
  省から障害者用駐車区画の使用許可を得ている。上告人は建物の外にそのような指定区
  画を持っており、ラーマン氏はそこに駐車していた。上告人は、ラーマン氏は建物の地下駐
  車場に自分のコンドミニアムの住戸に関連した駐車区画を2つ持っているため、これらの区
  画に駐車する権利はなく、割り当てられた地下駐車区画ではなく屋外の障害者用駐車場を
  使用する必要があることをラーマン氏が上告人に納得させない限り、ラーマン氏はそれらの
  駐車区画を使用する必要があるという立場をとっている。

[4] 一方、ラーマン氏は、運輸省から許可を得ているため、上告人が納得するほどの障害者用
  駐車場の必要性を証明する必要はないとの立場を取っている。地下駐車場は建築基準法
  を満たしていない。要件を満たしておらず、そのように指定されていない。上告人の宣言は、
  ラーマン氏が建物前の指定された障害者用駐車場に駐車することを妨げるものではなく、
  ラーマン氏は上告人に必要性の証拠を提示することなく駐車する権利があるという立場を
  取っている。

これまでの裁判の判決は下記のとおりである。(The Decision Below)

[5] 裁判管轄の争点は、2021年1月12日(2021 ONCAT 1)にクリフトン副議長によって最初
  に決定された。上訴人は、駐車場の問題は、スタッフや上訴人と関係のある他の人に対する
  ラーマン氏による嫌がらせの問題に関連しており、このより広い文脈の中で決定されなけれ
  ばならないと主張した。上訴人は、これらのより広い問題は、1998年コンドミニアム法
  ( SO 1998、c. 19)の第117条に規定された管轄の「除外」の範囲内であると主張した。
  副議長はこの主張を受け入れず、駐車場紛争は裁判所の管轄内にあると判断した。

  【訳注】「クリフトン副議長(Vice-Chair Clifton,)」:事件番号(2021 ONCAT 1)の判決を下した
  コンドミニアム裁判所(CONDOMINIUM AUTHORITY TRIBUNAL 略称CAT)は、判事の合議
  制で運営されており、クリフトン副議長は、日本でいう裁判所副所長の地位にある裁判官です。

[6] クリフトン副議長は下級審理の残りの部分を審理する予定であったが、管轄に関する
  判決後、審理再開前に、上告人は偏見の合理的な懸念を理由に副議長の忌避を申し立てた。
  副議長は、この忌避問題を裁定するのではなく、別の裁判官の前で問題を進めることが
  当事者と裁判所にとって最善であると結論付け、残りの問題はサンフォード判事によって
  審理され、決定された。

[7] サンフォード判事(Sanford)は次のように結論付けた(簡単に言えば、私の言葉です。)

  (【訳注】ここで括弧の中で付け加えている (in brief, in my words) の意味は、原審の
   Sanford 裁判官の判決をそのまま引用しているのではなく、本裁判を担当している
   D.L. Corbett 裁判官の言葉で要約しているとの断りの意味です。)

   a  ラーマン氏は運輸省(Ministry of Transportation)が発行した駐車許可証を持って
     おり、指定された駐車区画に駐車する権利がある。
   b ラーマン氏は、自分のコンドミニアムの住戸に付随する地下駐車場を 2 か所所有
     している。
   c  ラーマン氏の地下駐車場は、障害者用駐車場として指定されていない。
   d 屋外の指定駐車場は、建物への「訪問者」のために予約されているわけではなく、
     指定された障害者用駐車場に駐車する権利を持つ建物の居住者が利用できる。
   e. 上告人は、ラーマン氏が指定された障害者用駐車場に駐車する権利があるか
     どうかを調査する権利を有しない。この権利は運輸省によって確立されており、
     上告人による審査の対象ではない。
   f. これらすべての認定を考慮すると、ラーマン氏は屋外の障害者用駐車場に駐車
     する権利があり、コンドミニアムの宣言書はラーマン氏のこれを行うことを妨げて
     おらず、したがって、屋外の障害者用駐車区画に駐車したとしてラーマン氏に対
     して上告人が措置を取ったのは正しくなかった。
   g. 駐車場問題に関して上告人が不当であったことを考慮すると、上告人は駐車場
     問題に関する執行費用をラーマン氏に請求する権利はない。
   h. 駐車場問題の執行を追求する上告人の行為は、上告人からラーマン氏に1,500ドル
     の損害賠償が支払われるべきものである。

[8] この要約から明らかなように、根本的な紛争は軽微で単純なものである。
  まさにこの紛争を裁定するためにコンドミニアム裁判所が設立されたのである。
  両当事者は、意見が一致せず、どちらの側も譲歩しないことが明らかになった時点で、
  早期に裁判所に訴えるべきであった。しかし、両当事者は、根本的な駐車場問題とは
  釣り合いが取れないほど紛争を激化させてきた。

要約と処分 (Summary and Disposition)

[9] 上告人は、下級審での管轄に関する決定を不当な偏見の恐れを理由に取り消すよう
  求めておらず、この裁判所で初めてその問題を追求することはできない。いずれにせよ、
  管轄の問題はコンドミニアム裁判所によって正しく決定された。この種の軽微な駐車
  場紛争は、まさにコンドミニアム裁判所が決定すべき問題であり、すべての当事者の
  利益と司法行政は上級裁判所での訴訟よりもコンドミニアム裁判所での迅速かつ安価
  な手続きによって最もよく守られる。
  駐車場問題は嫌がらせ問題とそれほど絡み合っていないため、嫌がらせ問題が上級
  裁判所で判決が下されるのと同じ手続きで審理され判決が下される必要はない。

[10] 訴訟手続きの濫用を理由にラーマン氏の駐車違反請求を差し止めたり却下したりする
  根拠は見当たらない。
  駐車場問題に関してはコンドミニアム裁判所が専属管轄を有する。
  ラーマン氏が提起した他の訴訟手続きが訴訟手続きの濫用に当たる可能性はある。
  複数の裁判所やコンドミニアム裁判所での複数の訴訟手続きを提起することは訴訟
  手続きの濫用となり得る。しかし、ラーマン氏が訴訟手続きの濫用を行っていたことが
  判明したとしても、管轄を有する裁判所やコンドミニアム裁判所での訴訟手続きで
  本案の判決を受ける権利が剥奪されることはない。この場合、本案の判決を下す
  適切な場所はコンドミニアム裁判所であり、そこでこれらの問題を追求することは
  訴訟手続きの濫用ではない。

[11] 実質的な問題として、
  (a) ラーマン氏は指定された障害者用駐車場に駐車する権利がある。
  (b) 地下にはそのような駐車場はない。
  (c) コンドミニアムの宣言書では屋外の障害者用駐車場の利用を「訪問者」に制限して
  いない、というコンドミニアム裁判所の結論に法的な誤りは見当たらない。

  これらの認定により、上告人がこれらの問題に関連する執行費用をラーマン氏に請求
  することはできないというコンドミニアム裁判所の見解に私は同意する。
  この問題に関する上告人の行為は損害賠償に値するものであり、賠償額は妥当である
  というコンドミニアム裁判所の結論に法的な誤りや手続き上の不公平は見当たらない。

[12] ラーマン氏はこの駐車場問題では正しいが、紛争解決に対する彼自身のアプローチは
  不適切であり、紛争を激化させ、費用を増大させる結果となった。当裁判所に対する控訴
  において、彼は口頭陳述を上告人とその弁護人に対する詐欺と不正の申し立てから始め、
  裁判所から警告を受けた後もこれらの点を主張し続けた。
  審理の終わりに、彼は控訴費用として35,000ドルを請求すると述べたが、これはあまりに
  も不合理で迷惑な主張である。

[13] 私の見解では、この控訴で提起された詐欺と不正行為の申し立ては根拠がなく不適切
  であった。この行為がなければ、私はラーマン氏に少額の費用を支払うよう命じるつもりで
  あった。私は、根拠のない詐欺と不正行為の申し立てを行った彼の不正行為の結果として、
  この少額の費用を受け取る権利を彼から剥奪したいと思う。

[14] ラーマン氏が不当な扱いを受けたと感じていることは理解できる。
  コンドミニアム裁判所はこの評価に同意し、それに応じた裁定を下した。
  しかし、上告人から不当な扱いを受けたからといって、ラーマン氏が上告人やその従業員、
  代理人を不当に扱うことが正当化されるわけではないし、嫌がらせ行為や行為が正当化
  されるわけでもない。

この裁判所の管轄と審査基準 (Jurisdiction of this Court and Standard of Review)

[15] この裁判所は、コンドミニアム法第1.46条(2)項に基づき、この控訴に対する管轄を有し、
  同項は「コンドミニアム裁判所における訴訟の当事者は、裁判所規則に従い、法律問題に
  間する命令について地方裁判所に控訴することができる」と定めている。法律問題に関して
  は、審査基準は正確性(correctness)である。Housen v. Nikolaisen, 2002 SCC 33,para.8-9

  手続き上の公正性(procedural fairness)の問題は、正確性または公正性(correctness or
  “fairness”)基準に基づいて審査される。:Baker v. Canada (Minister of Citizenship and
   Immigration)、1999 CanLII 699(SCC)[1999] 2 SCR 817; Law Society of Saskatchewan v.
  Abrametz、2022 SCC 29、para.26-30。

争点1.管轄(裁判籍) (Issue 1: Jurisdiction)

[16 ]コンドミニアム裁判所は、コンドミニアム法第1.32条(1)に基づいて2017年に設立された 。
  同法第1.36条(1)項および(2)項は、コンドミニアム裁判所が(とりわけ)コンドミニアム所有者と
  コンドミニアム管理組合との間の「所定の紛争 (“prescribed disputes”)」を決定することを規定
  している。このような紛争は、規則(O. Reg. 179/17)によって「所定の (“prescribed”)」ものである。
  2020年10月1日以降、これらの所定の紛争には、ペット、車両、駐車場または保管を管理する
  コンドミニアム管理組合の宣言書、管理規約または使用細則の規定、およびそのような紛争に
  関する補償または賠償に関する紛争が含まれる。

[17] この法律は、コンドミニアム裁判所に対し、「その審理において生じた問題を決定する最も迅速
  な方法」を採用し、「その審理によって直接影響を受ける者」に対して手続き上の公平性を確保
  するよう指示している。(法律第1.39条(1)。また、法律第1.39条(2)および第1.40条も参照)。

[18 ] コンドミニアム裁判所の管轄 (jurisdiction of the Tribunal)に属する紛争は、その紛争が同法
  第117条(1)項に規定される事項にも関連する場合には、コンドミニアム裁判所の管轄から除外
  される。(同法第117条(1)項参照)。第1.36条(4)および規則第1条(3)

    いかなる者も、行為又は不作為により、管理組合の住戸、共用部分または資産(ある場合)
    において、当該状態又は活動が当該財産または資産に損害を与えるか、または個人に傷害
    又は疾病を引き起こす可能性がある場合、その状態又は活動を発生させてはならない。

[19]  上告人は、同法第117条(1)項を次の3つの理由で主張する。

  (a) 駐車に関するラーマン氏の主張は、上告人の職員に対する嫌がらせ行為のパターンの一部
   である。この嫌がらせは上級裁判所の訴訟の対象であり、駐車場問題は上級裁判所の主張
   と密接に関連している。

  (b) ラーマン氏は、駐車場問題に関する立場や行動を含む上告人の行為は彼に対する嫌がらせ
   に当たると主張しており、(a)で述べたのと同じ理由で、上級裁判所の訴訟手続きの中で対処
   されるべきであると主張している。

  (c) ラーマン氏は、屋外の障害者用駐車場の利用は自身の安全と健康に関わる問題であると
   主張している。

[20] この分析の目的上、私は(判断はせずに)、次の事を受け入れる。
  嫌がらせの申し立てが第117条(1)の例外規定に該当する可能性があること、つまり、
  嫌がらせ行為がそのような種類、性質および期間であり、そのような状況で発生する場合、
  その嫌がらせが「個人に傷害または病気を引き起こす可能性がある」ことを。

  これらの当事者の状況が第117条(1)の例外規定をトリガー (trigger:誘引)するようなもので
  あるかどうかは、この裁判所の審理対象ではなく、また、この分析の目的上、私は(判断はせず)
  上告人およびラーマン氏による嫌がらせの申し立てが例外規定をトリガーするのに十分である
  ことを認める。(原注[1])
   しかし、それ自体では、駐車に関する紛争に関する管轄を裁判所から奪うものではない。

  (原注[1]):
  記録上(- on the record -)、当事者の行為が個人の病気や傷害を引き起こす「可能性がある」
  (“is likely”) かどうかという問題は、当事者が紛争の激化を続ける限り、別の日に持ち越される
  可能性がある。駐車場問題はいずれにせよ、コンドミニアム裁判所によって適切に決定されて
  いるため、この問題を本控訴審で決定する必要はない。

[21] この事件の駐車場紛争は、コンドミニアムの建物にある駐車場、上告人の宣言書の条件と駐車
  場に関する規則、およびラーマン氏が指定された障害者用駐車場を使用する権利に関する、
  ほぼ争いのない事実の評価を伴う。これらの問題はいずれも、上告人、ラーマン氏、または双方
  による嫌がらせがあったかどうかとは何の関係もない。これは、進行中のより大きな紛争の中で
  分離可能な問題であり、裁判所の専属管轄の範囲内である。

[22] これほど多くの紛争、そしてエスカレートするクレームが生じた理由の一つは、紛争解決の遅れ
  が紛争を悪化させ、拡大させてきたことである。駐車場問題に関して裁判所から迅速な決定を得
  て、ラーマン氏がどこに駐車できるかという疑問に終止符を打てば、双方と司法行政にとって
  利益となったであろう。

[23] 駐車場問題自体が、財産への損害や人の負傷や病気を引き起こす可能性があると結論付ける
  根拠はない。上告人が駐車問題で間違っていたことが判明したからといって、それが嫌がらせ
  行為を行っていたことにはならない。
  当事者には間違える権利がある。(parties are entitled to be wrong.)
  駐車場問題でラーマン氏が勝訴したからといって、彼が上告人の従業員や代理人に嫌がらせを
  しなかったことにはならない。
  正しいことが悪い行為の許可証にはならない。(being in the right is not a license to act badly)

  駐車場問題に関するコンドミニアム裁判所の決定は、この高等裁判所によって支持され、嫌がらせ
  問題が訴訟される可能性がある状況の一部となる。それは、駐車場問題を第117条(1)に
  「関連する (“in connection with”)」問題にまで引き上げるものではない。むしろ、駐車場問題は
  嫌がらせ問題の状況の一部である。それ以外の判断をすることは、あらゆる合理的な範囲を超え
  て例外規定を歪曲し、嫌がらせを申し立てることで、いかなる当事者も裁判所の管轄を逃れる
  ことができるようにしてしまうことになる。

[24] 管轄問題に関するコンドミニアム裁判所の分析では、法律上の誤りは見つからなかった。
  私はこの控訴理由を認めない。

争点2.裁判手続きの濫用 (Issue 2: Abuse of Process)

[25] ラーマン氏は人権裁判所(Human Rights Tribunal,)での訴訟、高等裁判所での訴訟、そして
  コンドミニアム裁判所での複数の事件で訴訟を起こした。これらの訴訟は駐車場問題だけに
  関するものではなく、全て上訴人による嫌がらせの包括的な申し立てに関連しており、駐車場
  問題に関する申し立てはその一部であるとされている。

[26] 本法廷が口頭弁論の冒頭 (outset of oral argument,) で両当事者に述べたように、両当事
  者の互いに対する行為および互いに対して複数の措置を講じる際の行為は不合理であった。
  これについては双方に責任があるが、紛争解決プロセスの当事者としてのラーマン氏の行為
  は甚だしいものであったように思われる。口頭弁論中、ラーマン氏は、上告人側の弁護士および
  コンドミニアム裁判所自体に対して高等裁判所に訴訟を提起した、または提起する予定であると
  裁判所に通知した。本裁判所はこれらの他の訴訟を審理していない。しかし、相手方の弁護士
  (ラーマン氏に対して何の義務も負っていない)を訴えたり、行政裁判所(an administrative
  tribunal )( 絶対的な裁判権 (absolute adjudicative privilege),)を有する)を訴えると主張する
  ことは、嫌がらせ訴訟の特徴である。そして、この控訴ではラーマン氏が正しいとはいえ、
  この裁判所におけるラーマン氏の行為は、いくつかの点で同様に迷惑なものであった。

[27] 迷惑行為の通常の結果は、司法制度への自由なアクセスの制限となる可能性がある。しかし、
  それは裁判所や法廷で適切に審理される問題に関する正義そのものを否定するものではない。

[28] 本件では、ラーマン氏はコンドミニアム裁判所の専属管轄の範囲内にある問題、つまり駐車
  場問題をコンドミニアム裁判所に提起した。コンドミニアム裁判所は、この請求に対する管轄
  を有しており、ラーマン氏が紛争解決プロセスで不適切な行動をとったという理由だけで請求を
  却下すべきではないと正しく結論付けた。問題が複数の裁定機関の管轄内にある場合、その
  問題が他の場所で決定されるように、手続きを延期または却下することが適切である可能性が
  ある。本件では、その問題は適切にコンドミニアム裁判所に委ねられており、コンドミニアム裁
  判所で決定されるべきであると正しく結論付けた。私は本件上訴における上訴理由を適用しない。

[29] これは、当事者がコンドミニアム裁判所に対して迷惑な行動をとることができるという意味では
  ない。これらの当事者は、コンドミニアム裁判所の異常かつ容認できないリソースを消費しており、
  コンドミニアム裁判所は、問題が合理的に追求されることを確保するために独自のプロセスを
  管理する権利がある。2023年の最初の5か月だけで、コンドミニアム裁判所はこれらの当事者間
  で次の決定を下した。
   2023 ONCAT 48
   2023 ONCAT 46
   2023 ONCAT 37
   2023 ONCAT 36
   2023 ONCAT 10
   2023 ONCAT 9

  しかし、これは決してラーマン氏のせいではない。双方とも法廷で不当な行動をとった。
  法廷での当事者の争いに秩序と均衡を取り戻すために適切と思われる措置を講じるのは法廷の
  役割であり、このより広範な問題はこの控訴においてこの裁判所に提起されているものではない。

争点3.損害賠償金 (Issue 3: The Damages Award)

[30] 上告人は、ラーマン氏が精神的苦痛に対する損害賠償を受ける権利を主張しておらず、裁判所
  がこの見出しで損害賠償を裁定したことで手続き上の公正さを否定したと主張する。私は上告人
  がこの請求について知らされていなかったことに同意しない。また、裁定が精神的苦痛に対する
  損害賠償のみに関するものであったことにも同意しない。

[31] この問題に関して、裁判所は(とりわけ)以下のように認定した。
   (a) 「 PSCC779は、ラーマン氏が少なくとも、障害者用駐車区画を使用する正当な理由がある
     ことは常識ある人なら明らかであったにもかかわらず、最初から、遵守を強制する強硬な
     姿勢をとった。」(判決、段落46)

   (b) 「ラーマン氏の財産に対して登録された留置権または売却通知のどの部分が、ラーマン氏
     による障害者用駐車場の使用に関する執行費用の補償請求に関係するかを判断するこ
     とは不可能である。」(判決、段落47)

   (c) 「この問題を追及する中で、PSCC779は、積極的に主張を追求する姿勢から、コンドミニアム
     の所有者の一人に対する嫌がらせへと転じた。」(判決、段落48)

  これらは事実認定であり、記録によって十分に裏付けられており、この裁判所で控訴することは
  できない。

[32] コンドミニアム裁判所が指摘したように、裁判所には駐車場問題に関連する「補償または賠償
  (“indemnification or compensation”)」を裁定する権限がある。ラーマン氏は、上告人の命令で
  市が発行した複数の許可証の対応に何時間も費やし、上告人による不当な執行努力(上告人
  が要求した執行費用を支払わなかったためにラーマン氏の住戸を売却しようとする試みを含む)
  に対応し、彼の障害者用駐車許可証の正当性に対する付随的な攻撃に耐えなければならなかった。
  彼は裁判所に、これらすべてが彼に精神的苦痛を与えたという証拠を提出した。
  裁判所はこれらの出来事が精神的苦痛を与えたことを認め、上告人の行為に対して
  合計1500ドルの賠償金を裁定した。

[33] 裁判所の理由から、賠償金の裁定は上告人の行為全体とそれがラーマン氏に及ぼした影響
  すべてに対するものであることは明らかである。ラーマン氏がそのような裁定を求めていたことは
  記録上明らかであり、私の見解では、明示的な要請がなくても裁判所がそのような裁定を下すこ
  とは可能であっただろう。裁判所の役割の一部は、コンドミニアム管理組合の行為を監視するこ
  とである。上告人は駐車場問題でラーマン氏を虐待し、その行為は「積極的に請求を追求するこ
  とから[ラーマン氏]への嫌がらせへと転じた」。賠償金の裁定は、これらすべての状況において
  合理的かつ妥当なものであった。私はこの上告理由を適用しない。

争点4.チャージバックを課すこと
(Issue 4: The Chargeback Levy)

[34] 上告人は、弁護士費用を含む駐車場問題に関する執行費用をラーマン氏に「請求」した。
  駐車場問題に関して上告人は間違っており、そのような執行措置を取るべきではなかった。
  裁判所は、上告人がラーマン氏から請求を回収しないように命じた。

[35] この結論、つまり上告人は執行問題でずっと間違っていたのに執行費用をチャージバックする
  権利がないというのは法的に正しく、確かに単純な常識の問題である。
  チャージバックの違法性を証明する責任は分析には含まれない。誤りは上告人のものであり、
  上告人は自らの執行費用を負担する。実質的には、これは上告人のすべての住戸所有者
  (ラーマン氏を除く)が不適切な執行手順の費用を負担することになるということであり、住戸
  所有者は、なぜ自分たちのお金がこのように無駄になったのか、決定の責任者に疑問を抱く
  のは当然である。この問題に関して、私は法的誤りや立証責任の逆転は見当たらないと考えて
  おり、この控訴理由は適用しない。

争点5.アムラニ判決の適用
(Issue 5: Application of the Amlani Decision)

[36] 裁判所は、Amlani v. York Condominium Corporation No. 473、2020 ONSC 5090(Div. Ct.)を
  検討し、この事件の状況には適用されないと判断した。私はこの点に関する裁判所の分析に
  同意する。判決の段落44と段落45で、裁判所は アムラニ(Amlani) の次の言葉を引用している。

   アムラニ 事件(Amlani case,)は、 補償条項の解釈 (interpretation of an indemnification clause)
   と同法第134条の運用を扱っている。しかし、同事件は、補償条項の巧みな文言によって、コン
   ドミニアム管理組合が同法第134条(5)項に規定されているように、所有者から出廷の機会を
   奪うことができるという主張を支持するものではない。実際、裁判所は判決段落34で次のように
   述べている。

      区分所有者全員に適用され、区分所有者の過半数が承認した共益費を、管理組合が
      先取特権によって強制執行することを認めることがある。しかし、区分所有者 に望む
      費用を自由に一方的に課し、それを共益費と称して、区分所有者の住戸を売却する
      権利を取得する権利をコンドミニアム管理組合に認めることは、全く別のことである。

   この問題を検討する別の方法は、PSCC779 の補償条項の解釈が合理的かどうかを判断
   することである。ここでも、 Amlani事件を参照することができる。同事件の 裁判所は、
   段落46で次のように述べている。

      最後に、管理組合が主張する解釈は、法第 134条(5)に違反している。なぜなら、管理
      組合が請求する費用は、裁判所命令に明記されていない遵守および執行費用に関連
      するものだからである。法定規定に違反する解釈は、定義上、不合理です…。

[37] 私は、アムラニ事件で述べられた原則に対する当裁判所の解釈と適用に誤りはないと考える。

争点6.偏見に対する合理的な懸念
(Issue 6: Reasonable Apprehension of Bias)

[38] 偏見の合理的な懸念の申し立ては、管轄の問題を決定したクリフトン副議長に対して
  なされたものであり、残りの問題を決定したサンフォード判事に対してはなされなかった。

[39] 偏見の合理的な懸念の申し立ては、クリフトン副議長が管轄の問題を決定した後、残りの
  問題についての審理の前に行われた。求められた救済は、偏見の合理的な懸念を認め、
  その結果として手続きの残りの部分から除外される命令、または代替案として、副議長が
  手続きの残りの部分を審理しないという命令であった。求められた救済には、管轄の
  決定を取り消して裁判所の他のメンバーによって再審理することの要請は含まれて
  いなかった。

[40] クリフトン副議長は、偏見があるという合理的な懸念があるかどうかについては判断せず、
  またそのように認定しなかった。むしろ、彼は裁量権を行使して、忌避問題を訴訟で争う
  ために事態をさらに遅らせる必要性を回避するために自発的に退いた。
  偏見があるという合理的な懸念があると判断しなかったため、副議長は、この懸念が
  いつ生じたのか、また、その認定が管轄に関する以前の判決にどのような影響を
  与えるかについては考えなかった。

[41] その後、サンフォード委員は、この問題を次のように扱った。(判決段落1、3、8-11)
  この公聴会はマイケル・クリフトン副議長の前で始まった。 2021年1月19日、
  クリフトン副議長は辞退し、私が公聴会の裁定を任された。当事者は公聴会の再開を
  要求しなかった。公聴会は書面で行われ、証人は召喚されなかった。意見陳述は
  まだ行われておらず、私は当事者に質問する機会があった。これらすべての要素を
  考慮して、私は公聴会を再開するのではなく、継続することに決めた。……

  PSCC779 は、この件を審理する CAT の管轄に異議を唱えている。この件における
   CAT の管轄の問題は、この手続きの以前の段階で決定されており、この問題を
  再度決定することは適切ではない。動議の決定では、CAT にはこの件を審理する
  管轄があるというものであった。……。

  PSCC779 は、この問題を審理する CAT の管轄に異議を唱えている。しかし、この
  訴訟の初期段階で、PSCC779 は、CAT には審理する管轄がないとして、
  ラーマン氏の申請を却下する動議を提出した。この動議は、
  Rahman v. Peel Standard Condominium Corporation No. 779, 2021 ONCAT 1
  の判決で却下された。PSCC779 は、現在の提出物で同じまたは実質的に同様の
  根拠を主張している。PSCC779 は、この問題を再審理する説得力のある理由を
  示していない。

  CAT の管轄は、コンドミニアム法の施行規則 179/17 (以下「規則」) および同法の
   1.44 項に基づく。規則のサブパラグラフ 1(1)(d)(iii) は、PSCC779 の屋外駐車区画
  などの共用部分への駐車を含む「駐車を禁止、制限、またはその他の方法で管理
  する」コンドミニアムの宣言書、管理規約、または使用細則の条項に関する紛争に
  ついて CAT の管轄を与えている。規則のサブパラグラフ 1(1)(d)(iv) は、PSCC779
  の宣言の「この条項に記載されている紛争に関して、法人の補償または賠償を管理
  する」条項に関する紛争を審理する管轄を CAT に与えている。

  コンドミニアム法の1.44項は、CATが発することができる命令を規定しており、1.44(1)2項
  には、「訴訟当事者が特定の行動を取ることを禁止する、または訴訟当事者が特定の
  行動を取ることを要求する命令」が含まれている。1.44(1)3項は、「不遵守行為の結果と
  して」損害賠償を認めている。1.44(1)4項は、費用の裁定を認めている。

  私は、CAT がこの件を審理し、下記の命令を発行する権限を有していると結論付ける。

[42] 記録から明らかなのは、上告人が管轄の問題を再審理するのではなく、新しい判事
  にこの事件の実質的な審理をさせようとしていたということである。そうでなければ、
  上告人は、忌避問題を実質的な審理で裁定するのではなく、副議長が自発的に退任する
  ことを提案しなかったであろう。この問題に対してこのようなアプローチをとった以上、
  上告人は、副議長が忌避問題を決定し、自身の以前の判決を破棄するかどうかを検討
  する義務があったと主張することはできない。

[43] 最後に、この点に関して、管轄の問題は法律の問題である。駐車場問題はすでに
  合理的に可能な範囲を超えて多くの資源を費やし、非常に長い時間を要しており、
  当事者間の紛争は悪化の一途をたどっている。たとえ私が、副議長が紛争問題を決
  定しなかったのは誤りであり、サンフォード判事が管轄問題を新たに裁定しなかった
  のは誤りであると結論付けたとしても、私はこの問題を再裁定に差し戻すことは
  しなかったであろう。法律上、この紛争はコンドミニアム裁判所の管轄の範囲内であり、
  事件を再審理することは正義の利益に反するからである。
  私はこの上訴理由を適用しないであろう。

要 約 (Summary)

[44] 裁判所の決定の要点は、住戸所有者が許可証を発行する権限を持つ当局から障害者
  用駐車許可証を取得している場合、コンドミニアム管理委員会が許可証所有者の障害者
  用駐車場を使用する権利を問うべきではないということである。

  本件では、住戸所有者がどの障害者用駐車場に駐車すべきかという問題はない。
  指定された障害者用駐車場は、ラーマン氏が駐車していた屋外の区画のみである。
  この分析は法律上の誤りを明らかにしておらず、事実上明らかに合理的である。
  管轄、手続き、技術に関する控訴理由は、下級審の決定の実質的な合理性を損なう
  ものではない。私は控訴を棄却する。

費 用 (Costs)

[45] ラーマン氏は、上告人とその弁護士に対する詐欺と不正行為の申し立てから口頭
  陳述を始めた。私は、審理委員会の議長として直ちに介入し、上告人に控訴中の争点
  を示し、詐欺と不正行為の申し立てを恣意的に行うことで起こり得る結果について警告
  した。ラーマン氏は、自ら立証していない申し立てを主張し続け、実質的には控訴中の
  争点とは無関係か、上告人が間違っており、それが間違っていることを知っているべき
  だったという申し立てに過ぎなかった。

[46] その後、控訴の結論として、ラーマン氏は約35,000ドルの費用を求めていると述べた。
  彼は自分で弁護している。この控訴に応じる当事者が代理人を立てれば、通常、この
  控訴に対してこの裁判所で5,000ドルから10,000ドルの費用が認められると予想するで
  あろう。

[47] 通常、私はこの種の控訴に応じる自弁訴訟当事者に対して、支払い経費と控訴に費
  やした時間に対する適度な金額をカバーする費用裁定を検討するであろう。本件では、
  私はラーマン氏からこの控訴に関する彼の行為に対して、彼の費用を受け取る権利を
  剥奪するであろう。

判 決 (Order)

[48] これらの理由により、私は費用を請求することなく控訴を棄却する。

 .DL コーベット(D.L. Corbett J.)
 フィッツパトリック(Fitzpatrick J.)
 ヘブナー(Hebner J.)

ONTARIO SUPERIOR COURT OF JUSTICE DIVISIONAL COURT

公開日: 2023年6月26日


(以上 コンドミニアムNPO 訳)       (2024年11月18日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 18 November 2024/ Revised Publication -time to time)