ハラスメント(1)〜(4) 中間解説 あとがき・訳注
【年度別目次】 (2021) (2022) (2023) (2024)
No. | 事件番号 | 内容 | 判決日 |
---|---|---|---|
(1) | 2021 ONCAT 1 | 【抗告】管理組合が訴え却下の申立て・棄却 | 2021年1月12日 |
(2) | 2021 ONCAT 13 | 【判決】管理組合に損害賠償を命令 | 2021年2月16日 |
(3) | 2021 ONCAT 32 | 【判決】組合文書の訂正要求、訴えの却下 | 2021年4月15日 |
(4) | 2021 ONSC 7113 | 【控訴審判決】管理組合が控訴・控訴棄却 | 2021年10月28日 |
(1)〜(4)中間解説 | 目次: (1) 抗告 (2) 判決 (3) 控訴審判決 (4) 本裁判の問題点
|
事件の概要
ここは来客用だとして共用部の障害者用駐車場を障害者の区分所有者に使わせなかった管理組合
に対し、障害をもつ区分所有者が、使用者適格と管理組合によるハラスメントの確認を求めて
裁判所(CAT)に提訴
(1) 被告管理組合は、裁判所(CAT)には裁判権がないとして訴え却下を申立て、CATはこれを棄却
(2021 ONCAT 1)
(2) 裁判所は原告の使用者適格と管理組合によるハラスメントを認定、管理組合に損害賠償を
命令(2021 ONCAT 13)
(3) 組合文書の訂正要求、訴えの却下(2021 ONCAT 32)
(4) 敗訴した管理組合は高等裁判所に控訴、高等裁判所はこれを棄却。原審判決が確定
(2021 ONSC 7113)
訳注 (1) 抗告 関係
(1) 「MOTION DECISION」と「MOTION ORDER」の違い
裁判の棄却を求める棄却請求に対する通常の抗告判決の表題は、
命令「MOTION ORDER」として文末に下記の書式で言い渡されます。
(1) The motion to dismiss this Application is denied. (請求棄却)
(2) The motion to dismiss this Application is dismissed. (請求認容)
本事件では、判決の表題は「MOTION DECISION」で、文末もORDER(命令)ではなく、
Conclusion(結論) として、「以上、述べた理由により、請求棄却」としています。
棄却請求を却下して訴訟を継続し、判決で「判決理由(REASONS FOR DECISION)」を言渡すこと
から、裁判官は、本事件の争点についての判断を中間判決の形で示していることがわかります。
通常の抗告判決のパラグラフが10〜15なのに対し本判決は[24]段と、力が入っています。
(2) Motionと抗告の意味
米国やカナダの法律用語の「Motion」は、日本の民事訴訟法では「抗告」にあたります。但し、
日本の民訴法英語版では、この抗告を「審理中の控訴: Appeal Against a Ruling」と訳しています。
「Motion」は、もともとは会議中にメンバーから提出される「動議」のことで、下院(日本の衆議院)の
議会審議中に議員が採択するよう議長に提出する動議と、裁判中に、当事者の一方が判決前に
裁判長に命令を下すよう要求する動議は共通に[Motion]ですが、日本では、裁判用語に「動議」
はなく、「抗告」を使います。
※ 厳密にはMotionと抗告は異なります。日本の抗告は、判決以外の裁判である決定・命令
に対する独立の上訴方法であって、抗告審手続きは決定手続きです。
Motionは、審理の進行・整理についての当事者の申立権(裁判所に対して訴訟指揮権
の発動を求める権利)に基づく形式面の事項に関する方式規定で、日本の民訴法90条、
141条2項(即時抗告)にその規定があります。
裁判中の「抗告」の提出には手数料がかかります。当事者以外の人でも、例えば、証人召喚状
を出された人が、召喚状に異議を唱える動議(抗告)を出して、出席を免除される命令を望むこと
もできます。
今回の事件では、裁判開始直後に、被告管理組合が、「この訴えは却下すべき」として抗告し、
裁判官は理由を示してその抗告を却下したのが、(1)抗告審判決です。
この判決のパラグラフ(段落)[19]で裁判官が、「被告管理組合には、裁判所(CAT)に対する
不信と軽蔑を示す冷笑と皮肉のシニシズム(Cynicism)が存在している」と冷静に観察して述べ
たように、相手を見くびった傲慢な態度は、区分所有者に対しても同様の態度を重ね、管理
組合が自分で上告した高等裁判所の控訴審でも変わる事はありませんでした。
管理組合の、この傲慢さ・「根拠なき自信」は、一体どこから来るのでしょうね。
「本裁判が提起する問題点」
(3) 裁判用語について
この事件の基本的な争点は、「原告は障害者用駐車場を使用する正当な権利を有するか」
でしたが、一審敗訴の被告管理組合が抗弁したのは、裁判所に対する不信感を背景として、
抗告(motion)、控訴(appeal)、再審(Judicial Review)、上訴(appellate)などの裁判制度の適用
についてでした。(括弧内は英連邦国家群及び米国の裁判用語です。)
この事件では、裁判制度が重要な意味を持っていて、翻訳は、わが国の民事訴訟の手続きを
定めた民事訴訟法の用語と一致させないと、読者は混乱します。
上記で挙げたカナダの裁判用語は、日本の民事訴訟法の英語版(Code of Civil Procedure)では、
抗告(Appeal Against a Ruling)、控訴(Appeals to the Court of Second Instance)、
再審(Retrial)、上訴(Appeals)となっていて、英米の実体法の用語とは全部異なります。
日本の民事訴訟法英語版は、その意味する内容を誤解のないように説明する点において多分、
「学術的に正確」なのでしょうが、ただし英米の法律実務家には殆ど通じません。
英米で「抗告」は[Motion]で、「控訴」は[Apeal]ですが、そもそも控訴権は一審判決が出されてから
発生するものなので、裁判審理中に出される抗告を[Apeal to (Against)]といわれると混乱します。
実務には使えないこの英語版は誰が使うのかな?
実際の裁判で適用する「裁判規範としての条文」は、翻訳する国の実体法の用語に一致させる
必要があります。
(ア) 本頁では、カナダの裁判用語を、同じ意味で使われる日本の実体法の用語に置き換え
ています。
(イ) あえて、本頁の訳語を日本の民事訴訟法にはない用語で代用している場合もあります。
裁判官が当事者に聴く(hearing)とき、民訴法では「聴取」「審尋」「尋問」がありますが、
尋問や(任意供述)聴取は刑法でも使用される用語で、証人尋問や当事者間の反対尋問以外で
これらの「上から目線」の権威を感じさせる用語を民事に使うには抵抗を覚えます。
本頁では"hear"を、内容によって、「審尋」、「聴聞」、「審理」と使い分けています。
「聴聞(hearing)」は行政法の用語で、民訴法にはありません。
「聴聞」
細かく述べるときりがありません。
本頁の訳語は独断かつ不完全なものが含まれることを重ねてお断りしておきます。
(4) Condominium Act 共同住宅法(コンドミニアム法)の法令体系
コンドミニアム裁判所実務規則は、「コンドミニアム裁判所 実務規則」参照
オンタリオ州法179/17 関係
法令体系 【 Act 】
【 Regulation 】
【 Administrative Authorities 】
※1 修正コンドミニアム1998年法は(2015年法案Bill 106)で改正法案が可決されたことから、
|
※ [(5)抗告に対する決定 ]パラグラフ[20]
「トランシェモンターニュ対オンタリオ州長官、障害者支援プログラム」(HRTO Claim):
HRTO Claim, since the decision of the Supreme Court of Canada in Tranchemontagne v. Ontario
(Director, Disability Support Program),[2006] 1 S.C.R. 513, 2006 SCC 14,
訳注 (2) 判決 関係
(6) 宣言書(declaration) については、「宣言書(declaration)と統治文書 (governing documents) 」参照
(6a) 区分所有者の信用回復とチャージバックの無効措置命令
この判決末尾の項は、裁判で勝訴して管理組合から賠償金、補償金を得た区分所有者の住戸に、
管理組合によって設定登記されていたこれまでの先取特権と本訴に関係する管理費上乗せ課徴金
(これをチャージバック"chargeback"という)の不利益を課すことを無効として宣言した定型文です。
(例) 2020 ONCAT11 (2020年4月29日判決) でMary Ann Spencer裁判官が担当した判決の文末で、
言い渡されたもので、以後の同種の判決でも、定型文として踏襲されるようになりました。
訳注 (3) 控訴審判決 関係
(7) ENDORSEMENTの意味:
ENDORSEMENTは、会計用語では小切手などの「裏書」の意味ですが、「裏書して銀行に廻すと現金になる」
のではなく、「控訴を棄却して原審を裏書する=原審の判決通り実行せよ」という意味です。
小切手には縁のない庶民の感覚としては、「裏書」より「お墨付き」のほうが近いけど、訳語で使う勇気はない。
「裏書は小切手より生ずる一切の権利を移転す。(日本国 小切手法第17条)」
(8) 控訴裁判所とは:
控訴裁判所(カナダ:Divisional Court 米国:appellate court )は高等裁判所(オンタリオ州で7箇所)内にある。
本件の控訴裁判所はオンタリオ州ブランプトン市にある高等裁判所のCentral West支部で行われた。
高等裁判所(Superior Court of Justice)の組織,
民事部(Civil)、刑事部(Criminal)、控訴裁判所(Divisional Court)、家庭裁判所(Family)
少額裁判所(Small Claims Court)、出版禁止部(Publication Ban Forms)
控訴裁判所は、控訴(appeals)と再審(judicial review)事件のみ扱う。通常は3名の裁判官で行う。
(9) 裁判の公平性:
公平性は裁判の大原則です。原告管理組合は、控訴審含めて、ここまでの裁判は公平ではないと主張
してきた。確かに、(1)抗告に対する決定 の段落[14] で裁判官自身が述べているように、弁護士が
ついて言いたい放題の主張を繰り広げる管理組合に対して、裁判官は、本人訴訟で臨む区分所有者の
側の主張をなんとかくみ取ろうとしている。
実はそれがCAT設立の背景になっている重要な役割です。
裁判では、当事者が主張しないものは、判決に盛り込めない。(日本の民事訴訟法第246条も同じ)、
段落[14]では、その想いがどうしても出てきます。その扱いを原告は「公平ではない」と主張する。
この段落[22]及び[23]の最後にも、繰返し出てくる「CATの適正な役割」の意味、そして
この[22]で、裁判官がいう「裁判所の権限が違う。CATの役割が違う」という背景は重いのです。
自己責任原則から逸脱して釈明権に介入する不適切に過剰な行為は、ことに相手方当事者との関係で、
弁論主義に基づいた公平な裁判を前提にした信頼を損ない、また、当事者がそれに誘引されてかえって
事案の真相をまげるおそれがあることが指摘されていますが、当事者が事案の適切な釈明に必要な
申立てや主張・立証をしていない場合に、裁判所がこれを示唆し、指摘する積極的釈明は許容されて
います。(日本・民事訴訟法第149条「釈明権等」)
これを不公平な釈明義務違反として上告の理由とした場合、その違反の基準の定立は極めて困難であり、
また、逆に、適切な釈明いかんによっては、主張・立証の余地があるのに、それをしないで請求を認容
したのは審理不尽として原判決を破棄した最高裁判例(最判昭45/9/24 民集24巻10号1450頁)以来、
我国でもこの釈明権の許容と限度は法学上の高度に専門的な内容になっています。 「最近の判例」
当事者保護と訴訟能力をめぐる当事者平等を実現するために、当事者双方に弁護士を付ける事を義務づけ
る弁護士強制主義と、裁判所ごとに登録された有資格弁護士に限る弁護士分属制を採用しているドイツ法
と異なり、本人訴訟原則のカナダや日本では、当事者主義の訴訟構造の下で当事者保護と実質的当事者
平等を実現して、審理の質と円滑性を確保するには、主として弁護士代理原則(代理人を立てる場合は、
弁護士でなければならない)と、訴訟能力及び意思能力のほかは釈明に期待する以外にありません。
民訴法149条で積極的釈明が許容されている理由です。
訴訟能力及び意思能力が欠けている当事者に対しては、本人陳述を禁止し、当事者のため事務を処理し、
または補助する者で裁判所が相当と認める者(法定代理人)に陳述をさせます。(民訴法151条1項2号)
最近の判例
令和4年4月12日 最高裁第三小法廷判決「令和3年(受)第919号 共有持分権確認請求事件」
「本件請求については、本件建物の共有持分権が上告人の構成員全員に総有的に帰属することの
確認を求める趣旨に出るものであると解する余地が十分にあり、原審は、上記共有持分権が上告人
自体に帰属することの確認を求めるものであるとしてこれを直ちに棄却するのではなく、上告人に対し、
本件請求が上記趣旨に出るものであるか否かについて釈明権を行使する必要があったといわなけれ
ばならない。したがって、原審が、上記のような措置をとることなく、本件請求は上記確認を求めるもの
であるとしてこれを棄却したことには、釈明権の行使を怠った違法がある。原判決は破棄を免れない。」
として、釈明権不行使による違法な認定を行ったとして原判決を破棄し、裁判を原審に差し戻した。
(10) 敗訴しても代理人弁護士には管理組合から規定の報酬が支払われる。
本件被告管理組合側の代理人弁護士は、多くの管理組合と顧問契約しているエリア法律事務所(Elia Associates)
に所属する弁護士で、CATの裁判にはよく出てくるものの、その多くで訴えの棄却、または敗訴判決を受けています。
本事件では、原告から、弁護士が所属している法曹協会へ人権侵害の申立てを受け、本判決でも、「法的に有効な
防御反論をせず、根拠なき主張を繰り返している」と批判を受けました。 (2) 一審判決 段落[47] 参照
当Hpにも、彼が担当した別の裁判の同様事例があります。
「判例7. 理事の資格喪失をめぐって」 参考まで
訳注 (4) 本裁判が提起する問題点
(a) 理事会と区分所有者間の不公平な格差
訴訟で管理組合と住民が争うとき、管理組合は住民より優位な立場にあり、「訴訟負担の不平等」の
問題は従来から指摘されてきました。
理事会と区分所有者間の不公平な権限の格差
管理組合は理事自ら手を出す事はなく、弁護士に代理人を依頼し、その費用は管理組合からの支出
です。対して住民は訴訟手続きから弁論まで本人が行うか、或いは弁護士を雇うなら自費です。
勝訴すると訴訟費用が補償される場合もありますが、基本的には弁護士費用までは補償されない。
下記はそのことが原因で争われた別の裁判です。
「コンドミニアム裁判所 判例3.訴訟費用の監査請求 No. 2018 ONCAT 1」
コンドミニアム紛争専門の裁判所が設立された背景には、この不公平な格差の是正が一つの理由に
なっています。下記はコンドミニアム裁判所の設立を検討した2013年の住宅法制フォーラムの議事
録の一節です。
「この種の紛争では、区分所有者は通常、法律上の助言を受けたり代理人を立てるほど余裕がある
わけではありません。弁護士を雇うことができる理事会に対しては圧倒的に不利な立場にあります。
作業部会では早期に中立的な立場で裁定を下すための大きな障害となっている区分所有者と理事
会の間に存在する力の不均衡を是正することに注目しました。」
(b) 管理組合は第4の政府か、または、私的政府か
(1) 「管理組合は第4の政府」 〜Publicな面から見て〜
カナダ・オンタリオ州の消費者省が2013年9月に発行した「共同住宅法制改革・第U期報告書」の中
で、「共同体との契約
(ENGAGEMENT WITH THE COMMUNITY)」の項で下記のように述べています。
「もしも共同住宅の共同体が政府の第4番目の機関(訳注:連邦政府−州政府ー地方自治体ー
共同住宅管理組合)に属するとしたら、彼らは他の3つの機関と共通の不調 ―それは公共社会に
対する無関心(public apathy)―をも分担するように見えます。」
(2) 「管理組合は私的政府」 〜Privateな面から見て〜
1994年に米国のEale Universityから出版されたエヴァン・マッケンジー(Evan McKenzie)著
「PRIVATOPIA:Homeowner Associations and the Rise of Residential Private Government」で、
「管理組合は私的政府(Private Government)として機能している」としています。法人は私的
政府だという表現は古くからあり、彼が最初ではありませんが、私有財産制に代わる準集合的
な財産所有権という新しい形態と、その膨大な構成員人口に着目して、その組織と機能が自由
民主制の基本的なPublicの枠組みからどのように離れているかを説明しています。
いずれにせよ、管理組合の組織を「ひとつの政府」と見ているのは同じです。
世界には、ロシア、ベラルーシ、中国、北朝鮮などの独裁強権国家が現に存在し、独裁政権の
支配・弾圧に抵抗し市民の人権を守る人たちがノーベル平和賞を受賞している(抵抗すらできない
北朝鮮を除く)ように、管理組合にも強権型の管理組合が出る可能性はある。そういった管理組合
が本裁判のような問題を起こしている。
たとえ、そうであっても、この裁判のように、法の番人たる裁判所がきちんと機能している国の国民
は救われます。裁判所には、その力の不均衡・不平等を是正する役割があります。
そうは言っても、裁判所が正しく機能するには、実際の裁判で適用する「裁判規範」としての法律で
区分所有者の権利と義務も明確化せず、消費者保護規定も整備されていない状態では、欧米の
共同住宅法のようには、法の番人には到底成り得ない。すべてが曖昧な区分所有法では、人権
と財産を守る現実の問題にはまったく対応できていない。
2020年2月10日公開の国連欧州経済委員会 「共同住宅の所有権と管理に関する指針」
「第2章 共同住宅の法制」 に、
法律に盛り込むべき基本的事項が述べられています。
日本の区分所有法は区分所有者の権利と義務に関して、これに対応していない。
(c) 裁判制度の背景
裁判では、(1)具体的事実に、(2)法規を適用して、判断します。
本裁判における(1)具体的事実をめぐる判断 と (2)法規の適用について、若干解説を加えておきます。
(1) 証拠資料の証拠力の評価は裁判官の自由な心証に任され、法による制約を受けません。
日本国・憲法第76条第3項 (裁判官の独立)
「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。」
日本国・民事訴訟法第247条(自由心証主義)
「裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、
自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。」
具体的事実について、当事者の認否を確認し、争いのない事実は不要証事実として証明を要しないが、
当事者の主張した事実に相違がある場合は、裁判所はその事実の存否を法律の適正な手続きによって
事実認定したうえで、法規を適用して判断します。
事実認定が裁判所の恣意的な確信ではなく、裁判所の心証形成過程が客観的・合理的なものとして、
両当事者及び国民一般に承認され得るものでなければ、裁判所は信頼されず本来の機能を果たすことが
できません。自由心証主義が成立するには、その判断が客観的・合理的であることの証明を要します。
(注) 日本では、1970年代から裁判官の独立も自由心証主義も機能しなくなりました。
「多様な判断基準を整理して提示〜自由心証主義」
(2) 法規の適用についても同様に、法律判断が客観的・合理的であることの証明を要しますが、
カナダの裁判所は積極的に他の判例や立法府の法の制定意図の文献を引用して、説明を尽します。
「判例6. 不誠実な管理業者にペナルティ(後編)」 ⇒
(1.2) 二つの法体系の違い
(d) CATの裁判権
今回の事件のもう一つのテーマは、CATの裁判権に関するものでした。
CATの裁判権は、民事で扱うすべての領域ではなく、共同住宅コミュニティという限定された領域にしか
及ばないという事をわからせてくれる裁判があります。
それが、
CATの裁判権と請求棄却 です。
(2022年9月20日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 20 September 2022/ Revised Publication -time to time)