マンションの管理の適正化に関する指針(平成28年度改正版)
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マンションの管理の適正化に関する指針 (平成28年度改正版)

 マンションの管理の適正化に関する指針

( 平成十三年八月一日国土交通省告示第千二百八十八号)
国土交通大臣 林  寛子

マンションの管理の適正化の推進に関する法律( 平成十二年法律第百四十九号) 第三条に基づき、 マンションの管理の適正化に関する指針を定めたので、同条の規定に基づき、公表する。

 我が国におけるマンションは、土地利用の高度化の進展に伴い、 職住近接という利便性や住空間の有効活用という機能性に対する積極的な評価、 マンションの建設・購入に対する融資制度や税制の整備を背景に、 都市部を中心に持家として定着し、重要な居住形態となっている。

その一方で、一つの建物を多くの人が区分して所有するマンションは、 各区分所有者等の共同生活に対する意識の相違、多様な価値観を持った区分所有者間の意思決定の難しさ、 利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ、建物構造上の技術的判断の難しさなど、 建物を維持管理していく上で、多くの課題を有している。

特に、今後、建築後相当の年数を経たマンションが、急激に増大していくものと見込まれることから、 これらに対して適切な修繕がなされないままに放置されると、老朽化したマンションは、 区分所有者自らの居住環境の低下のみならず、 ひいては周辺の住環境や都市環境の低下など、深刻な問題を引き起こす可能性がある。

このような状況の中で、我が国における国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与するためには、 管理組合によるマンションの適正な管理が行われることが重要である。

この指針は、このような認識の下に、管理組合によるマンションの管理の適正化を推進するため、 必要な事項を定めるものである。

また、マンションにおけるコミュニティ形成は、日常的なトラブルの防止や防災減災、 防犯などの観点から重要なものであり、 管理組合においても、建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)に則り、 良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましい。

 一 マンションの管理の適正化の基本的方向

 マンションは、今や我が国における重要な居住形態となり、その適切な管理は、 マンションの区分所有者等だけでなく、社会的にも要請されているところである。

このようなマンションの重要性にかんがみ、マンションを社会的資産として、 この資産価値をできる限り保全し、かつ、快適な居住環境が確保できるように、以下の点を踏まえつつ、 マンションの管理を行うことを基本とするべきである。

1 マンションの管理の主体は、マンションの区分所有者等で構成される管理組合であり、 管理組合は、マンションの区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、また、長期的な見通しを持って、 適正な運営を行うことが重要である。特に、その経理は、健全な会計を確保するよう、十分な配慮がなされる必要がある。 また、第三者に管理事務を委託する場合は、その内容を十分に検討して契約を締結する必要がある。

2 管理組合を構成するマンションの区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を十分認識して、 管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努める必要がある。

3 マンションの管理は、専門的な知識を必要とすることが多いため、管理組合は、問題に応じ、 マンション管理士等専門的知識を有する者の支援を得ながら、 主体性をもって適切な対応をするよう心がけることが重要である。

4 さらに、マンションの状況によっては、外部の専門家が、管理組合の管理者等又は役員に就任することも考えられるが、 その場合には、マンションの区分所有者等が当該管理者等又は役員の選任や業務の監視等を適正に行うとともに、 監視・監督の強化のための措置等を講じることにより適正な業務運営を担保することが重要である。

5 マンションの管理の適正化を推進するため、国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターは、 その役割に応じ 、必要な情報提供等を行うよう、支援体制を整備・強化することが必要である。

 二 マンションの管理の適正化の推進のために
管理組合が留意すべき基本的事項

1 管理組合の運営

管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。 そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。 また、集会は、管理組合の最高意思決定機関である。したがって、管理組合の管理者等は、その意思決定にあたっては、 事前に必要な資料を整備し、集会において適切な判断が行われるよう配慮する必要がある。

管理組合の管理者等は、マンション管理の目的が達成できるように、法令等を遵守し、 マンションの区分所有者等のため、誠実にその職務を執行する必要がある。

2 管理規約

管理規約は、マンション管理の最高自治規範であることから、その作成にあたっては、 管理組合は、建物の区分所有等に関する法律に則り、「マンション標準管理規約」を参考として、 当該マンションの実態及びマンションの区分所有者等の意向を踏まえ、適切なものを作成し、 必要に応じ、その改正を行うことが重要である。 さらに、快適な居住環境を目指し、マンションの区分所有者等間のトラブルを未然に防止するために、 使用細則等マンションの実態に即した具体的な住まい方のルールを定めておくことが肝要である。

管理規約又は使用細則等に違反する行為があった場合、管理組合の管理者等は、その是正のため、必要な勧告、 指示等を行うとともに、法令等に則り、その是正又は排除を求める措置をとることが重要である。

3 共用部分の範囲及び管理費用の明確化

管理組合は、マンションの快適な居住環境を確保するため、あらかじめ、共用部分の範囲及び管理費用を明確にし、 トラブルの未然防止を図ることが重要である。

特に、専有部分と共用部分の区分、専用使用部分と共用部分の管理及び駐車場の使用等に関してトラブルが生じることが多いことから、 適正な利用と公平な負担が確保されるよう、各部分の範囲及びこれに対するマンションの区分所有者等の負担を明確に定めておくことが望ましい。

4 管理組合の経理

管理組合がその機能を発揮するためには、その経済的基盤が確立されていることが重要である。 このため、管理費及び修繕積立金等について必要な費用を徴収するとともに、これらの費目を明確に区分して経理を行い、 適正に管理する必要がある。

また、管理組合の管理者等は、必要な帳票類を作成してこれを保管するとともに、 マンションの区分所有者等の請求があった時は、これを速やかに開示することにより、経理の透明性を確保する必要がある。

5 長期修繕計画の策定及び見直し等

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、適時適切な維持修繕を行うことが重要である。 特に、経年による劣化に対応するため、あらかじめ長期修繕計画を策定し、必要な修繕積立金を積み立てておくことが必要である。

長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に、必要に応じ、 マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、 その計画を適切なものとするよう配慮する必要がある。

長期修繕計画の実効性を確保するためには、修繕内容、資金計画を適正かつ明確に定め、 それらをマンションの区分所有者等に十分周知させることが必要である。

管理組合の管理者等は、維持修繕を円滑かつ適切に実施するため、設計に関する図書等を保管することが重要である。 また、この図書等について、マンションの区分所有者等の求めに応じ、適時閲覧できるように配慮することが望ましい。

なお、建築後相当の年数を経たマンションにおいては、長期修繕計画の検討を行う際には、必要に応じ、 建替え等についても視野に入れて検討することが望ましい。 建替え等の検討にあたっては、その過程をマンションの区分所有者等に周知させるなど透明性に配慮しつつ、 各区分所有者等の意向を十分把握し、合意形成を図りながら進めることが必要である。

6 発注等の適正化

管理業務の委託や工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要があるが、 とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、 マンションの区分所有者等から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要である。

7 良好な居住環境の維持及び向上

マンションにおけるコミュニティ形成については、自治会及び町内会等(以下「自治会」という。)は、 管理組合と異なり、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、 特に管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、 支出を分けて適切に運用することが必要である。なお、このように適切な峻別や、 代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、 防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。

8 その他配慮すべき事項

マンションが団地を構成する場合には、各棟固有の事情を踏まえながら、全棟の連携をとって、 全体としての適切な管理がなされるように配慮することが重要である。

また、複合用途型マンションにあっては、住宅部分と非住宅部分との利害の調整を図り、その管理、 費用負担等について適切な配慮をすることが重要である。

 三 マンションの管理の適正化の推進のために
マンションの区分所有者等が留意すべき基本的事項等

マンションを購入しようとする者は、マンションの管理の重要性を十分認識し、売買契約だけでなく、 管理規約、使用細則、管理委託契約、長期修繕計画等管理に関する事項に十分に留意する必要がある。

また、マンションの区分所有者等は、マンションの居住形態が戸建てのものとは異なり、 相隣関係等に配慮を要する住まい方であることを十分に認識し、その上で、 マンションの快適かつ適正な利用と資産価値の維持を図るため、 管理組合の一員として、進んで、集会その他の管理組合の管理運営に参加するとともに、 定められた管理規約、集会の決議等を遵守する必要がある。 そのためにも、マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関する法律等に関する理解を深める必要がある。

専有部分の賃借人等の占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、 マンションの区分所有者等が管理規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負うことに十分に留意することが重要である。

 四 マンションの管理の適正化の推進のための
管理委託に関する基本的事項

管理組合は、マンションの管理の主体は管理組合自身であることを認識したうえで、 管理事務の全部又は一部を第三者に委託しようとする場合は、その委託内容を十分に検討し、 書面をもって管理委託契約を締結することが重要である。

なお、管理委託契約先を選定する場合には、管理組合の管理者等は、事前に必要な資料を収集し、 マンションの区分所有者等にその情報を公開するとともに、マンション管理業者の行う説明会を活用し、 適正な選定がなされるように努める必要がある。

また、管理委託契約先が選定されたときは、管理組合の管理者等は、当該契約内容を周知するとともに、 マンション管理業者の行う管理事務の報告等を活用し、管理事務の適正化が図られるよう努める必要がある。

万一、マンション管理業者の業務に関して問題が生じた場合には、管理組合は、 当該マンション管理業者にその解決を求めるとともに、必要に応じ、 マンション管理業者の所属する団体にその解決を求める等の措置を講じることが必要である。

 五 マンション管理士制度の普及と活用について

マンションの管理は、専門的な知識を要する事項が多いため、国、 地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターは、マン ション管理士制度が早期に定着し、 広く利用されることとなるよう、その普及のために必要な啓発を行い、マンション管理士に関する情報提供に努める必要がある。

なお、管理組合の管理者等は、マンションの管理の適正化を図るため、必要に応じ、 マンション管理士等専門的知識を有する者の知見の活用を考慮することが重要である。

 六 国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターの支援

マンションの管理の適正化を推進するためには、 「マンション標準管理規約」をはじめ必要な情報・資料の提供、技術的支援等が不可欠である。

このため、国及び地方公共団体は、必要に応じ、マンションの実態の調査及び把握に努め、 マンションに関する情報・資料の提供について、その充実を図るとともに、特に、 地方公共団体、マンション管理適正化推進センター、マンション管理士等の関係者が相互に連携をとり、 管理組合の管理者等の相談に応じられるネットワークの整備が重要である。

さらに、地方公共団体は、マンション管理士等専門的知識を有する者や経験豊かで地元の実情に精通し、 マンションの区分所有者等から信頼される者等の協力を得て、 マンションに係る相談体制の充実を図るよう努める必要がある。

マンション管理適正化推進センターにおいては、関係機関及び関係団体との連携を密にし、 管理組合の管理者等に対する積極的な情報・資料の提供を行う等、管理適正化業務を適正かつ確実に実施する必要がある。

附則( 平成二十八年三月十四日国土交通省告示第四百九十号)

( 施行期日)
この告示は、公布の日から施行する。


改正解説(国土交通省告示)

(※1) この「マンション管理適正化指針」は、 平成十二年に制定された「マンション管理適正化法」 第三条(マンション管理適正化指針を定め、公表すること) 、 第四条(管理組合等は適正化指針に留意してマンションを適正に管理すること) の規定に基づいて国土交通大臣が定めたものです。

(※2) 以下、この改正解説は国土交通省による解説の内容をそのまま掲載したものです。

平成28年(2016年)度改正(平成28年3月14日国土交通省告示第490号)の概要

経緯・背景
 ○マンションの管理ルールについて、高齢化等を背景とした管理組合の担い手不足、管理費滞納等 による管理不全、暴力団排除の必要性、災害時における意思決定ルールの明確化など、様々な 課題が指摘されており、これら課題に対応した新たなルールの整備が求められている。

 ○このため、平成24年1月に「マンションの新たな管理ルールに関する検討会(※)」を設置、平成27年 3月に報告書をとりまとめた((※)座長:福井秀夫政策研究大学院大学教授)。

(1)コミュニティ形成の積極的な取り組みを新たに明記

○ 前文及び「管理組合が留意すべき基本的事項」に、新たに、コミュニティ形成について位置付け
 ・マンションにおけるコミュニティ形成は、日常的なトラブルの防止や防災減災、防犯などの観点から重要。
 ・管理組合においても、建物の区分所有等に関する法律に則り、良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むこと が望ましい。
 ・その際、自治会及び町内会等は各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意すること。
 ・特に、管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の 徴収・支出を分けて適切に運用することが必要。
 ・なお、このように適切な峻別や代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行すること や、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。

(2)外部専門家の活用及びその場合の留意事項を明記

○ 「基本的方向」に外部専門家活用及びその場合の留意事項を記載
 ・マンションの状況によっては、外部の専門家が、管理組合の管理者等又は役員に就任することも考えられる。
 ・その場合には、マンションの区分所有者等が当該管理者等又は役員の選任や業務の監視等を適正に行うとともに、 監視・監督の強化のための措置等を講じることにより適正な業務運営を担保することが重要。

○ 「管理組合が留意すべき基本的事項」に外部専門家を活用する際の留意事項を記載
 (発注等の適正化)
 ・管理業務の委託や工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要。
 ・とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、マンションの区分所有者等 から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要。

(以上)

平成28年度改正に対する管理組合団体の意見

平成28年(2016年)度の「マンション管理適正化指針」と「標準管理規約」の両改正案に対して、管理組合団体からは、 改正案は「管理の実態を無視した空論、極論を指導的、押しつけ的に記述している」との厳しい批判が相次ぎました。

各団体が批判している「コミュニティ条項」の削除とは、 標準管理規約「第27条 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する」の中の 「10 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用」及び第32条(業務)15号の条項を削除したことを指しています。

これらの批判に対して国土交通省は「コミュニティとは、主として親睦目的の飲み会、一部の者のみに対象が限定されるサークル活動であり、 好ましくないので削除した」と回答する一方で、「適正化指針」では、「良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましい。」を追加しました。

その他、改正案は、マンションの購入価格に比例した議決権配分とすることや、外部専門家を管理者にする案などが盛り込まれています。

以下、各団体の主張の要点です。(順不同)


(1) 「特定非営利活動法人 日本住宅管理組合協議会」の意見

(平成27年6月6日発表意見)
(1) 2年半にわたる異例の休会をつづけていた「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が、 この2月と3月に会議を開き報告書案を確認、これにもとづいて標準管理規約の改正案とパブリックコメントが出された。 論点は14項目に及ぶが、ここでは、当初からの主題である専門家の活用という点にしぼってみてみたい。

今回の検討会と報告書の最大の問題は、この数十年にわたって区分所有者が確立してきた理事会・理事長方式に変更を加えようとすることである。

管理組合が理事会をつくってマンションの運営・管理をおこなうこの理事長・理事会方式は、 区分所有者の意思を反映した民主的運営として定着してきた。 その実態やそれに基づいてどう改善するかという検討はほとんどされていない。

検討会は、これまでマンションの管理運営にはほとんどかかわってこなかったメンバーで占められ、 「資産価値の維持向上や最大化」という営利企業の運営を想起させるような理念をかかげて、 検討内容をリードしてきたのである。

今回提起されているのは標準管理規約の改正である。しかし、 そもそも標準管理規約の性格・役割は、マンション管理組合が規約を作成したり、改正したりするときの「参考」にすぎない。
したがって、改正案も参考であり、それを使ってマンション管理組合にたいして「“標準”のように改めるべきだ」とか、 「外部専門家の活用をせよ」などと指導するようなものではなく、管理組合が自主的に判断するという性格のものである。
そうした基本的位置づけのうえではあるが、それにしても今回の「外部専門家活用」の提案は問題点が多い。

「外部専門家活用」について報告書では三つのパターンを用意している。
一つは外部の専門家に理事(理事長)や監事に就任してもらう方式、
二つ目は外部の専門家が「管理者」になるが、理事会は監視・監督役で存続する方式、
そして三つ目は理事会を廃止して「管理者」を置き、「総会が管理者を監督する」形式である。

このなかで、とくに問題なのが理事会を廃止する三つ目のパターンである。
これは従来の考え方と180度異なる管理思想を導入しようというものである。

報告書は従来の「第三者管理」という言い方を改め、「外部管理者総会監督型」と名付けているが、 通常一年に一回しかない総会が、外部の専門家を監督できるなどは空論である。

マンションの所有者=主権者である区分所有者の意思を集約し、代表している理事会こそ、 管理組合運営の方向をしめし、管理会社や外部専門家に委託した業務を監視・監督できるのは自明である。 理事会を廃止するこの考え方は受け入れがたい。そのうえ、 報告書は専門家として数多くの専門職を例示しているが、どれ一つとして管理者の条件に合致しているとはいいがたく、 これも空論である。

したがって、 われわれはこうした専門家活用の方式を「標準」の一つとしようとする標準管理規約の改正につよく反対するものである。(日住協論説委員会)

(平成27年11月13日発表意見)
(1) まず「コミュニティ条項」を標準管理規約の本文から削除したことは、 管理組合の実態や理念を全く考慮しようとしない重大な逆行策である。

たしかに、「検討会」報告書への各方面からの批判に対応して、 「マンション管理適正化指針」に新たにコミュニティ形成を重視するとの文章を加えたことは事実である。

しかし、肝心の規約本文から削除したのでは、それに準拠する管理組合は活動上の根拠を欠くことになり、 軽視につながることは明らかである。さらに、それと合わせて重要な問題点として、外部専門家の活用、 とくに理事会を廃止する管理形態を標準管理規約のなかに持ち込むことは、 管理の主体としての区分所有者をないがしろにすることであり、とうてい認められない。

(2) 分譲価格等を基準にした議決権割合(基準の客観性に疑問)、会計情報・管理情報などの開示問題をはじめ、 マンションの所有関係そのものや管理組合と区分所有者のプライバシーにかかわる重大問題が、 十分な議論もなく標準管理規約や同コメントに取り入れられることも不適切である。

(3) そもそも標準管理規約の性格は、管理組合が規約を作成あるいは改正のさいに、参考にするというものである。 基準として押しつけられるべきものではないから、管理組合がその取捨を自主的に判断すればよい。 しかし、それにもかかわらず、 今回の改正案には「運営はこうすべきだ」「管理組合のあり方はこうだ」という類の理念、 考え方の押しつけ的な記述が多い。


(2) 「特定非営利活動法人 全国マンション管理組合連合会」の意見

(平成27年11月16日発表)
1. これまで必要に応じて改正された「標準管理規約」とは大幅に異なり、

@ 全体を通じてマンション管理行為を限定された範囲、「管理組合=財産管理団体」のみを強調している。

A 「管理規約改正(案)」に伴う「コメント改正(案)」を含めて、指導的、極論的記述が多すぎ、 「参考」と言いながら「枠をはめた規約基準」的になっている。

B 今回新たに「適正化指針」も改定した中で「コミュニティー条項」への記載がある一方で、 管理組合業務・管理費で「コミュニティー条項」を削除することは両者の整合性を損なうことになる。
これらを改め、現行の「標準管理規約」の枠組みを尊重した上での「必要最小限改定」にし、 かつコメントもこれまでのように「解説」にとどめ、適正化指針との整合性を重視すべきである。

C 国土交通省は、次回改正に際しては、マンション管理に造詣の深い委員たちによる検討と、 時代のニーズに合った標準管理規約改正を提案すべきと考える。

(理由)
@ 管理組合が財産管理団体であることは必要条件であって、十分条件ではない。 大事な役割として、「集合して住む共同体」としての役割があり、これは必ずしも自治会や町内会のみの役割ではない。 このことは今回同時に改正された「管理指針」の、 「一 適正化の基本的方向性 3」で「良好なコミュニティーの形成に積極的に取り組むことが望ましい」事項が追加されていることからも当然の帰結である。
特に「合意形成」によってのみ主要な事項が決定される管理組合だからこそ「財産管理団体」は必要条件であり、 十分条件ではない、 「共同体」としての役割がある。

A 「標準管理規約」は当初、マンション販売の不動産業に対する管理の適正化への規定に始まり、 管理規約の参考として「標準」に位置づけし、先行的な管理実態に適合すべく改定された経緯がある。

これは、マンションが一般化し、標準管理規約もまさに「標準的役割」として機能してきたことを意味している。 ここへきてこれを著しく指導的な役割に変更することは、時代の流れに逆行する由々しいことである。

特にコメントで随所に「・・・適切でない」、「・・・すべきである」の表現があり、 高度に発達した市民社会では、そうした指摘はまさに「適切ではない」。

B 「適正化指針」は「適正化法」の内容をより具体化するまさに「指針」であり、 かつ、「標準管理規約」はこの「指針」に沿って構成されるべきものである。 さらに、指針は一般の区分所有者の目に留まりやすいものではなく、管理規約が最も身近な管理の規範である。

したがって、指針で「コミュニティーが重要」と記載しても、「標準管理規約」で削除すれば、 区分所有者にはその重要性が知られないこととなる。 「適正化法」、「指針」、「標準管理規約」間に整合性を図るべきである。

C 高経年化するマンションで、管理組合は配管の更新等、建て替えでない選択をする中で、 標準管理規約のさらなる改正が早晩必要になってくる。

今回の改正案を直ちに改めると同時に、次回改正時にはその時代の要請を射程に入れた「標準管理規約」にし、 社会から見直される存在になって頂きたい。

D 今回の改正案には、暴力団の排除規定(第19条)や専有部分の修繕(第17条)、 災害等への対応(第54条第1項10、同上第2項)等、 検討に値するものもあるが、偏向的記述が多いため、それらがかすんでしまうことになりかねない。


2. 標準管理規約(案)に対する個別項目について:以下、特に改めて頂きたい主要な項目に限って記載する。

2.1 対象部分:第27条(管理費)10号、第32条(業務)15号、「コミュニティー条項」削除について)

(意見)
現行標準管理規約を生かすべきこと

(理由)
本条文は、阪神・淡路大震災の復興に際してコミュニティー活動の活発な管理組合ほど建替え、修復、 いずれの場合も合意形成が取りやすかった事実から、マンション管理のうえで必要な条項として加えられた経緯がある。 本条文がなかった時代から取り入れていた管理組合が多々あったのである。

自治会・町内会活動と一部混乱するからと言って、一旦入れた条文を削除し、しかもコメントで事細かに事例を挙げて 「・・・適切でない」、「・・・すべきである」とすることは、コミュニティー条項が入っていなかった時より、 悪い結果を招き、管理の実態を知らない管理組合の業務である合意形成のための絆を無視した論理である。

適正化指針で必要性を加筆しながら、規約上は削除するということは、それらの整合性も取れないことになる。


2.2 対象部分:第35条(外部専門家を理事として選任・・・)の場合の4項「・・・細則で定める」、 複数パターンの一つとして位置づけ「総会監督型」について

(意見)
外部専門家による管理者・総会監督型の別紙第3パターンは、 これまで定着してきた総会・理事会管理型とは著しく異なる方式で、第4項の「選任する場合は細則で定める」範囲ではない。
上記総会・理事会型が標準管理規約であれば、「外部専門家委託型管理規約」として別建ての規約を設けるべきである。

(理由)
上記意見でも述べた通り、これまで総会・理事会選任方式は、 わが国のファミリー型マンション管理組合で広く定着してきた管理方式である。 但し、高経年・高齢化の中で理事のなり手が出にくい状況は無視できない。これについては、 別にそうした背景に対して構ずべき体制を設ける必要はありうる。 その場合、規約を別に設ける必要はあろう。細則で組合員以外から理事、監事等を選任する方法で、 特に別紙第3のパターンによるものは、ワンルームマンションやリゾートマンションなど、 ファミリー型でない特殊なマンションである。決して大規模戸数のマンションにみられるものではない。

標準管理規約でパラレルに記載されると、これまでの総会・理事選任型が「ワンノブゼン」となりかねず、 既存マンション管理組合に混乱を招く危険がある。


2.3 対象部分:第46条(総会)@代理人の範囲、A議決権のコメント(価値基準)

(意見)
@ 総会の代理出席や議決権行使は、現行規約の範囲で十分である。 理事・監事の選任と合わせ、「管理組合の実情により規約で別段の定め」をコメントで述べておけばよい。

A 価値基準による議決権方式は、コメントにあるだけなので条文自体には当面影響しないが、 コメントとはいえ加筆すべきことではない。

(理由)
価値基準による議決権方式は、価値基準自体が変動性のあること、議決の権利だけ主張し管理費等に連動しないこと、 合意形成に寄与すべき標準管理規約が逆に区分所有者間を分断しかねないこと等から、 「考え方がある」からと言って加筆すべきでない。


2.4 対象部分:第41条(監事)第2項、第4項、第5項、第6項、第7項関連、監事の過剰業務

(意見)
現行の第3項「監事は理事会に出席し、意見を述べることが出来る」に戻すべきである。

(理由)
区分所有者以外の外部から監事を選任することを射程に入れた結果と想定されるが、 総会で理事と同様に監事が選任される場合には、各項にあるような義務は過剰であり、 これでは監事のなり手が難しくなる危険がある。前記のように、外部から監事を選任する場合は、 別建ての規約によるべきである。

以上

(全文は下記をご覧ください。)
「マンション管理適正化指針」及び「マンション標準管理規約」改正(案)へのパブリックコメント
(PDF 203KB)


(3) 「日本マンション学会 理事会」の意見

(平成27年5月29日発表) (要旨)
今回の改正は、以下の点で基本的な問題があります。

(1) 管理の現場において必要性が乏しい内容を唐突に提示していること
 コミュニティ条項の削除、価値割合による議決権の提案など、マンション管理の現場 (管理組合、管理会社、管理士等)は求めていない、あるいは、むしろ否定した内容を示していることは、 標準という名がつく管理規約の基本を逸脱しています。

(2) 管理組合に対する偏った法的理解に基づいていること
 管理組合の役割には、@共有物の直接的管理(修繕や清掃の実施等)、 A間接的管理(使用方法の決定と遵守等)、B共同生活秩序の維持(生活やトラブルの未然防止等)があり、 それを遂行するために合意形成が重要である、という基本認識への配慮が不十分です。

(3) 管理の実態を踏まえていないこと
 理事会の専門性及び役員個人の責任を重くみなす記述が目立ちます。 これは、役員の個人責任を分散すべく理事会・総会での意思決定を重視し、 かつ管理会社という専門組織のサポートのもとに運営がなされている管理の実態を踏まえていません。

 以上の結果、本改正案は、理事等の負担感を増し、役員就任意欲を削ぎ、 偏った法的理解のもとにマンション管理の現場に不要な混乱を生じさせる恐れがあります。

従って、一般マンションを対象とした標準管理規約としては、一旦撤回するか、 または大幅な見直しをするように要望します。

 (以下、5頁にわたって個別項目の問題点を指摘しています。ここでは一部列記)
 ・実態を無視して一方的に決めつける記述は不適切。
 ・必要性が乏しい内容を過度に誇張している。
 ・利益を目的とする株式会社の役員会と管理組合の理事会を同一視することは不適切。
 ・価値割合による議決権を提案するのであれば、同時に共有持分割合も変更し、 管理費・修繕積立金もそれに連動させるべき。「クチは出すがカネは出さない」という現行提案は不適切。
 ・管理費等の滞納者の保有資産調査条項は現実には不可能で実効性がない。


(4) 「ご意見に対する国土交通省の考え方」

下記は、パブリックコメントへの「ご意見に対する国土交通省の考え方」の報告書から
(その他、全般に係るご意見、改正事項以外に係るご意見等) の一部を抜粋してご紹介しています。

・本規約改正案については、多くの論点を扱ったこと、 別の法律改正作業のために本規約改正案の検討作業を中断した期間があったこと等から、 やむを得ず長期間を要しました。

また、検討に当たっては、検討テーマを踏まえ、個人の学識や実務経験などを総合的に考慮しつつ、 年度ごとに委員・専門委員を選任するなどし、必要に応じて有識者意見聴取を行いました。

多様な意見の全てを盛り込むことは困難であり、今回の規約改正に採用できたご意見もあれば、 採用することができなかったご意見もありました。

海外調査としては、ヨーロッパ等での調査を実施しましたが、 各国のマンション管理制度について検討会にも報告する等、 本規約改正案の検討に活用しています。

このような検討プロセスについてご批判があることについては受け止めますが、 国土交通省として現時点で最適と考える規約の改正を提示させていただいたものです。

(全文は下記をご覧ください。)
「パブリックコメントにおける主な意見の概要とこれらに対する国土交通省の考え方」
(PDF 251KB)


<お断り>
本頁の「適正化指針」は、見やすくするために目次を追記するなどして編集を加えています。 本文内容の字句には手を加えておりませんが、引用される場合は、念のため、下記の国土交通省の頁を参照されますよう、お願い致します。
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000270.html