8.1 管理業者の違反行為と行政処分
序文
平成13年(2001年)8月、マンション管理が適正に行われることにより良好な住居環境の確保を図ることを目的としたマンション管理適正化法が施行され、 マンション管理業を営む者の登録制度を創設し、 種々の業務規制を通じてマンション管理業の適切な実施を確保する仕組みが導入されました。
しかし、適正化法施行20年を経ても管理業者のモラルは低く、管理業の適切な実施どころか、管理会社社員による着服・横領犯罪は増加しています。
国交省がマンション管理適正化法を制定して管理業者の監督に乗り出した背景には、 登録管理会社が全国で平成17年1月末で2,631社、平成26年度末で2,214社ある中で、(社)高層住宅管理業協会(※1)に加入しているのはわずか十数% (平成22年3月で417社、平成27年4月1日で372社)にすぎず、 小規模労働集約型中小企業が圧倒的であり、(加入金や審査など中小の協会加入はハードルが高い) これら中小管理会社が引き起こす業界信用毀損が何よりも厄介であり、そのため国交省が規制と罰則強化に乗り出した背景があります。
ところが管理組合の信頼を失うような犯罪は、むしろ管理業協会に加入している会員会社や管理業協会の理事に就任している幹事会社で発生しています。
国交省の狙いは「この法律によって天下り法人を二つ認定し、官僚の天下り先を拡大すること」にありましたから、 適正化法が犯罪の抑止力にはなっていないことはたいした問題ではありません。
(※1) 平成25年(2013年)4月1日(社)高層住宅管理業協会は一般社団法人マンション管理業協会に改称しています。
この頁の要点
(1).適正化法違反行為については、平成18年度に総務省行政評価局が調査を行い、監督官庁の国土交通省に対して改善勧告を出していますが、依然として改善は見られません。
(2).平成27年度に公表された違反件数10件のうち8件が管理会社社員による着服・横領であり、管理業のモラルは完全に壊れています。しかも違反のすべてが公表されているわけではありません。
(3).管理組合にどんなに損害を与えても行政処分の多くは「改善措置指示」どまりで、国交省がいうような「厳正かつ適正な処分」には程遠く、 もともと国交省には違反業者を処分する気などないようです。
(4).平成27年7月に公表された全国149社への立入検査結果では、全体の40%にあたる60社に違反行為がありましたが、それらの業者名は公表されていません。 平成17年度以降、調査は毎年実施されていて、違反業者をすべて処分していたら大変な数になりますが、立入検査で判明した違反業者名は一切公表していません。 マンション管理業協会あてに一括して改善要請を出しているのみです。
(5).管理会社の社員が着服・横領した事件でも、すべてが処分されるわけではありません。
一般報道でニュースとなった事件でも行政処分されないことがあるのです。
管理会社の複数の社員らが管理組合から2億7千700万円を横領着服して平成26年4月に業務停止処分を受けた後、 更に別の複数の社員らが2億900万円を横領着服していたことが判明して平成27年4月に再び「業務停止」処分を受けた大阪ガスコミュニティライフ(株)への処分を見ても、 「管理業の適切な実施を確保する仕組みのための厳正かつ適正な処分」など役所の空疎な作文でしかないことがわかります。
(6).無届の管理業者の適正化法違反事件は国交省の行政処分の対象ではなく、立件は検察庁です。不透明な行政処分ではなく、
すべて送検するほうがすっきりして分かりやすいですね。
監督官庁が業界を監督指導するという虚構のシステムは、NYにおける大和銀行事件(※2)をきっかけに大蔵省の金融行政は破綻し(※3)、
財務省と金融庁に分割されましたが、国交省による不透明な住宅行政はいつまで続くのでしょうか。
(※2) 1995年大和銀行NY支店巨額損失事件で、大和銀行はFRBに対し16の罪状を認め、当時の米刑法犯の罰金としては史上最高額の3億4千万ドル(約350億円)の罰金を払い、米国から撤退した。
(※3) 1996年11月に打ち出された「日本版金融ビッグバン」)
1.平成18年度・二つの省庁が実施した管理業者の調査内容
<施行5年後に行われた二つの調査>
平成18年度、マンション管理業者の調査は、総務省関東管区行政評価局と国土交通省地方整備局の二つの省庁で実施されました。 管理業者が法令遵守しているかの調査は国土交通省だけではなく、総務省行政評価局も行っています。
総務省行政評価局が行う「行政評価・監視」は、行政の運営全般を対象として、 主として合規制、適正性、有効性、効率性等の観点から評価を行い、行政運営の改善を推進するものです。
(1)総務省行政評価局の調査
総務省行政評価局が平成18年12月から19年3月にかけて、管理業者における法令遵守と管理組合に対する情報提供が適確に行われているかについて、局管内で登録されている1,410業者から31業者を抽出して, 「分譲マンション管理業務などに関する行政評価・監視」を実施したところ、 8割に当たる24業者で「マンション管理適正化法」を遵守していない事例などが見つかったことから、 平成19年4月25日、総務省行政評価局は国土交通省関東整備局に対し所要の改善を求めています。
総務省行政評価局としては、平成13年8月のマンション管理の適正化の推進に関する法律施行後初となる調査でした。
更に、監督官庁である当の国土交通省関東地方整備局がマンション管理業者登録簿と閲覧システムの内容を長期に渡り更新せず、最新の届出内容が閲覧できない状態だったことも指摘しています。
調査の結果
@ マンション管理業者31業者のうち24業者に登録、登録事項の変更届出の不備、重要事項説明等の不適切、財産の分別管理の不適切等、法令を遵守していない事例あり
A 関東地方整備局が、マンション管理業者登録簿及び閲覧システムにおける内容に関し、長期にわたって更新しておらず、マンション管理業者に関する最新の届出内容が閲覧できない状態であった。
[登録、登録事項の変更の届出不備]
○無登録で営業 (1業者)
○登録事項(専任の管理業務主任者の変更等)の変更が未届(18業者)
[専任の管理業務主任者が法令上の規定数に不足] (2業者)
[重要事項の説明等が不適切]
重要事項の説明が契約期間の開始後に行われている(1業者)
[契約の成立時の書面が不適切]
契約内容等を記載した書面(契約書)に管理業務主任者の記名押印がない (1業者)
[財産の分別管理が不適切]
保証契約を締結していないにもかかわらず、管理組合の預金通帳(名義人:理事長)と通帳の印鑑を同時に保管(1業者)
[その他]
○ 標識が掲げられていない、記載事項が訂正されていない等(9業者)
○ 閲覧書類が未作成等 (10業者)
○ 従業者証明書の未発行、記載事項の誤り等 (12業者)
出典:総務省「分譲マンションの管理業務等に関する行政評価・監視」平成19年4月25日 PDF(383KB)
この総務省行政評価局の調査と前後して、国土交通省各地方整備局が全国のマンション管理業者への立入調査を実施しています。
(2)国土交通省各地方整備局の調査
国土交通省の各地方整備局及び北海道開発局並びに内閣府沖縄総合事務局では、平成18年10月から概ね3ヶ月間において、 全国のマンション管理業者62社(昨年度57社)を任意に抽出し、事務所等への立入検査を実施しました。 立入検査は平成17年度から実施しています。以下、その報告書からの抜粋です。
目的
マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、「適正化法」という。)の平成13年8月の施行以来、マンション管理業者の登録数が順次拡大する(平成19年3月末現在、2,727社が登録)状況の中で、
各登録業者が適正化法に則り適正にマンション管理業を運用することを確保することは、極めて重要である。
このため、平成17年度に引き続き、マンション管理業者の事務所等へ直接立ち入り、適正化法に基づく業務規制に係る事項について検査を行い、必要に応じて、業務に関する是正指導等を実施することとした。
2.検査結果
全国62社に対して立入検査を行った結果、全体の56%にあたる35社に対して業務に関する是正指導を要する事例を発見し、
うち1社に対しては、後日、業務停止処分を行った。以下、適正化法の各条項ごとの指摘該当社数(重複該当あり)。
- 【適正化法条項】 【指摘該当社数】
- 登録事項の変更の届出(法第48条関係) 11社
- 標識の掲示(法第71条関係) 12社
- 重要事項の説明等(法第72条関係) 16社
- 契約の成立時の書面の交付(法第73条関係) 16社
- 帳簿の作成等(法第75条関係) 11社
- 財産の分別管理(法第76条関係) 4社
- 管理事務の報告(法第77条関係) 3社
- 書類の閲覧(法第79条関係) 28社
- 証明書の携帯等(法第88条関係) 17社
3.指摘事項の傾向分析及び今後の対応策
検査の結果、収納代行方式により修繕積立金等金銭を管理していたにもかかわらず、返還債務を負うことになった場合に必要な保証契約を締結していなかったことが判明した業者1社に対しては、
平成19年3月28日付けで近畿地方整備局が監督処分(業務停止処分、指示処分)を行った。
その他、業者に対し是正指導を行ったものとしては、事務所等に設置すべき標識、業務状況調書、従業員証明書の携帯に関する指摘事項等、社内管理面での不徹底によると思われるものが多く見受けられた。 一方、重要事項説明書等への記載が十分でないなど主要事務にかかわる事項も一部あった。これらの指摘事項に対してはその場で、又は、検査後に、是正指導を実施したところである。 今回の検査では、是正指導を実施した業者数は35社と前回同様であった。その比率においては、 約56%と前回比で約5%減となったが、依然として各業者において法令の各条項に対する認識が徹底されていない事例が多数確認された。 このような全般的な傾向を踏まえ、国土交通省としては、立入検査等による法令指導体制の強化を図るとともに、悪質な適正化法違反に対しては、 適正化法の規定及び昨年度12月に施行された「マンション管理業者の違反行為に対する監督処分の基準」に従い厳正かつ適正に対処して参る所存である。また、法令遵守の徹底を図るため、 関係団体に対して、研修活動等を通じて、マンション管理業務全般の適正化に向けた会員指導等を図るよう引き続き要請を行うこととした。
出典:国土交通省 平成19年6月14日 PDF(104KB)
「マンション管理業者への全国一斉立入検査結果(平成18年度)の概要について」
2. 平成26年度・国土交通省が実施した管理業者の調査内容
<施行13年後の調査・・・業者の法の遵守は進んだのか>
国交省は平成26年10月から3ケ月の間に、全国149社(平成25年度は128社)への立入検査を実施した結果、 全体の40%にあたる60社に対して是正指導を行ったことを平成27年7月6日公表しました。
マンション管理適正化法の各条項ごとの是正指導数は下記の通りです。
(平成27年7月6日国土交通省発表資料)
- 【適正化法条項】 【指摘該当社数】
- 管理業務主任者の設置(法第56条関係) 3社
- 重要事項の説明等(法第72条関係) 39社
- 契約の成立時の書面の公布(法第73条関係) 26社
- 財産の分別管理(法第76条関係) 16社
- 管理事務の報告(法第77条関係) 20社
上記の立入検査で是正指導を受けた個々の会社名については公表されていません。
国交省では平成27年7月6日、土地・建設産業局不動産課長名で「国土動第25号」にて「一般社団法人マンション管理業協会 理事長」あてに、 「マンション管理業の適正化について(要請)」を出しています。
3. 一般社団法人マンション管理業協会とは
(注1)平成25年(2013年)4月1日(社)高層住宅管理業協会は一般社団法人マンション管理業協会に改称しています。
平成27年4月1日現在で、一般社団法人マンション管理業協会の会員会社372社で管理業務を受託しているマンションは91,356組合・109,599棟・5,647,281戸です。
平成27年6月3日現在における協会の役員は、1名の専務理事(元国土交通省大臣官房付)のみが常勤で、以下、理事長(1名)・副理事長(6名)・理事(14名)・監事(2名)のすべてが非常勤で管理会社の代表者らで構成されており、 管理会社以外では、他に弁護士、大学教授、公認会計士各1名の計3名が非常勤理事となっており、合計役員数は27名となっています。
この団体では、過去に適正化法違反(いずれも元社員らが管理組合財産を着服)で行政処分を受けたうちの2社が副理事長、1社が理事、1社が監事に就任しています。 マンション管理業協会の役員27名のうち、4名が既に行政処分を受けている会社であり、更に管理会社への立入検査では4割で違反が見つかっているという状況です。
役員構成は昔から変わらず、例えば平成21年当時の(社)高層住宅管理業協会(現在の一般社団法人マンション管理業協会の前身)の唯一の常勤役員が「副理事長・専務理事」で元建設省大臣官房総括監察官で、 他の役員はすべて非常勤の管理業界各社の代表者からなる組織でした。
官僚組織は市場主義経済の外側に身を置いて外側から市場経済を統制、コントロールし、常にその競争の審判者の役割を獲得しながら、 その分け前に預かろうとするだけでなく、自ら競争ランナーの中での優越的立場を得ようとします。
マンション管理業界への規制と監督指導行政はその典型例です。
4. 行政処分の基準
平成18年12月19日、国土交通省総合政策局不動産業課は、 国土交通大臣が監督処分を行う場合の統一的な基準として「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」及び 「マンション管理業者の違反行為に対する監督処分の基準」 を策定し、各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局及び関係業界団体等に通知しています。
「マンション管理の適正化の推進に関する法律」が施行された平成13年8月以後、5年以上も罰則の基準はありませんでしたが、 ようやく決まったその罰則も抜け穴だらけで実質、効果はありません。国交省の業界に対する配慮は行き届いています。
当該基準の概要は次のとおりです。
宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準
1.趣旨
事業者等によるコンプライアンス向上の取組を促進し、不正行為の未然防止を図るため、国土交通大臣が監督処分を行う場合の統一的な基準として「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」を作成するものである。
2.基準の概要
(1)個々の違反行為毎に業務停止期間の明確化・標準化
[具体例]
・重要事項説明書に虚偽の記載があった場合は、標準の業務停止期間を7日とし、関係者の損害の程度により15日、30日とする。
・契約締結等の時期の制限違反については、標準の業務停止期間を15日とし、関係者に損害が発生した場合には、30日とする。
・専任取引主任者設置義務違反については、7日とする。
(2)処分の加重・軽減措置
@ 主な加重措置
イ
違反行為により発生した関係者の損害の程度が特に大きい場合や違反行為の態様が暴力的行為による等、特に悪質である場合は、業務停止期間を2分の3倍に加重することができる。
ロ
複数の違反行為を行った場合は、次の業務停止期間のうち、より短期である日数とする。
a 各違反行為に対する業務停止期間のうち最も長期であるものの2分の3倍又は2倍の日数。
b 各違反行為に対する業務停止期間を合計した日数
ハ 過去5年間に監督処分を受けていた場合は、業務停止期間を2分の3倍に加重する。
A 主な軽減措置
イ 違反行為による関係者の損害が発生せず、かつ、今後発生が見込まれない場合、または関係者の損害補填に関する取組を直ちに開始した場合であって、当該補填の内容が合理的であり、
かつ、当該業者の対応が誠実であると認められる場合は、指示処分とすることができる。
ロ 直ちに違反状態を是正した場合は、指示処分とすることができる。
(3)地域を限定した業務停止処分
業務停止処分について、一定の要件の下、地域を限定して処分を行うことができる旨規定。
(4)処分内容の公表
処分の内容について、国土交通省の各地方整備局、北海道開発局及び内閣府沖縄総合事務局のホームページへの掲載により公表。
マンション管理業者の違反行為に対する監督処分の基準
1.趣旨
事業者等によるコンプライアンス向上の取組を促進し、不正行為の未然防止を図るため、監督処分を行う場合の統一的な基準として「マンション管理業者の違反行為に対する監督処分の基準」を作成するものである。
2.基準の概要
(1)個々の違反行為毎に業務停止期間の明確化・標準化
[具体例]
・重要事項説明書に虚偽の記載があった場合は、標準の業務停止期間を7日とし、重要事項説明会を開催しない場合等は、15日、30日とする。
・財産の分別管理義務違反については、標準の業務停止期間を30日とし、管理組合の財産に係る損害が発生した場合は、60日とする。
・専任管理業務主任者設置義務違反については、7日とする。
(2)処分の加重・軽減措置
@ 主な加重措置
イ 違反行為の態様が詐欺的である等、悪質である場合や故意により、虚偽の書面の記載又は説明をした場合は、業務停止期間を2分の3倍に加重することができる。
ロ 複数の違反行為を行った場合は、次の業務停止期間のうち、より短期である日数とする。
a 各違反行為に対する業務停止期間のうち最も長期であるものの2分の3倍又は2倍の日数。
b 各違反行為に対する業務停止期間を合計した日数
ハ 過去5年間に監督処分を受けていた場合は、業務停止期間を2分の3倍に加重する。
A 主な軽減措置
直ちに違反状態を是正し、かつ、違反行為の是正に向けた対応が誠実である場合は、業務停止期間を3分の2倍又は指示処分とすることができる。
(3)地域を限定した業務停止処分
業務停止処分について、一定の要件の下、必要に応じ地域を限定して処分できる旨規定。
(4)処分内容の公表
処分の内容について、国土交通省の各地方整備局、北海道開発局及び内閣府沖縄総合事務局のホームページへの掲載により公表。
出典:2006年(平成18年)12月19日・国土交通省総合政策局不動産業課
ダウンロード 宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準 PDF (186KB)
ダウンロード マンション管理業者の違反行為に対する監督処分の基準 PDF (184KB)
5.処分を受けた管理業者一覧
※ この項はデータベースが膨大になってきたので、頁を分けました。
詳細は 【次頁】
8.1.5 【処分を受けた管理業者一覧】 参照
2011年(平成23年) 5月 〜 2023年(令和5年)12月現在
6.行政処分はなぜ軽い?
違反業者への処分は上記に示したように、ほとんどが形式的な指示処分で終わっています。 国の処分基準には抜け道が用意されていて、処分に手加減(役所の用語では軽減措置という)が加えられる仕組みになっています。
指示処分とは、「従業員に対する教育周知徹底を図り、業務管理体制の整備に努め、その実施状況を報告すること」というものです。
「業務停止」といっても、停止期間中の新規受注契約ができないだけで、処分が発令される以前に契約済みの業務はそのまま継続できます。 だから、大阪ガスコミュニティライフ(株)のように業務停止を受けた1年後に再び業務停止を受けても、実際にはそれほど影響はなさそうです。
国の処分基準には軽減措置だけではなく加重措置もあって、例えば「過去5年間に監督処分を受けていた場合は、業務停止期間を2分の3倍に加重する。」ことになっているのですが、 大阪ガスコミュニティライフ(株)の場合、それは適用されず、前回の90日に対し2回目は半分の45日になっています。 どちらも元社員の着服事件で、同社では複数の社員が入れ替わりで着服横領を繰り返していました。
大阪ガスコミュニティライフ(株)の2回目の行政処分による業務停止期間は平成27年4月29日〜6月12日ですが、 業務停止明け5ケ月後の平成27年11月12日、伊藤忠アーバンコミュニティ(東京都中央区)による同社の買収が発表され、 伊藤忠アーバンコミュニティは、平成27年(2015年)12月10日、大阪ガスコミュニティライフ株式会社の全株式取得手続きを完了し、 伊藤忠アーバンコミュニティのグループ会社として、大阪ガスコミュニティライフ株式会社の社名を「IUCコミュニティライフ株式会社」(本社・大阪市中央区)へ変更しました。
伊藤忠アーバンコミュニティはマンション管理業協会の理事に名を連ねている管理会社で、 伊藤忠アーバンコミュニティも管理員が横領着服して平成24年8月24日に改善措置指示処分を受けています。 この買収により、伊藤忠アーバンコミュニティグループにおける西日本エリア内のマンション管理戸数は313棟、3万2千戸とビル・施設管理195棟となり、 グループ会社全体でマンション管理戸数は4割増の約11万戸、ビル・施設管理450棟となりました。
日本の汚職の伝統は生きていて、元気である。
2005年11月末に耐震強度偽装事件が明らかになったとき、国内マスコミ各社は耐震強度偽装事件を元建築士や販売会社、検査会社など関係者の個人的な犯罪としてセンセーショナルに扱いましたが、BBCなど外国メディアは、 最初から一貫して、これは建設スキャンダル(Japan construction scandal)であり、その本質は日本の建設業界の構造的な問題にあるとして報道しました。
BBC NEWS(29 November 2005)のタイトルは、「日本の汚職の伝統は生きていて、元気である」(The tradition of political corruption in Japan is alive and well)という皮肉なものでした。 そして、その後の問題の広がりはそれを裏付けました。
あれから10年、2015年10月に明らかになった「くい打ちデータ改ざん事件」でも、 多くの業者で同様に改ざんが行われ被害も全国に広がっていたことが明らかになった(※4)以後も、 事件を矮小化して押さえ込む監督官庁とそれに追随する国内マスコミ報道の姿勢など、 何も変わっていないことを我々は思い知らされます。
「○○よ、そちもワルよのう ウッフッフ」
「いえいえ、お代官さまにはかないませぬ」
伝統は今も生きている?・・・
(※4) 詳しくは 「今、建築業界で何が起きているのか」 (2)パークシティLaLa横浜
平成27年(2015年)12月10日掲載/平成28年(2016年)3月5日改訂
【次頁】 8.1.5 処分を受けた管理業者一覧
8.2 相次ぐ着服と横領犯罪
老朽化対策と法改正(令和2年マンション管理適正化法改正)