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都条例とカナダの登録法令との比較 〜なぜ こんなに違うのか?〜

東京都でマンション管理情報を登録する条例が制定され、2020年4月1日から届出受付が開始されました。 (参考)  東京都マンション管理適正化条例

ここではカナダ・オンタリオ州のコンドミニアム登録法令を紹介しながら、両者の相違点を解説しています。

カナダ・オンタリオ州では
 2018年1月1日以降、すべての管理組合はコンドミニアム庁(CAO)に管理組合に関する情報を申告する義務が法で規定されました。 詳細は修正コンドミニアム法1998(Condominium Act 1998)及び同法施行令[管理組合登録申告規則] (Ontario Regulation 377/17 "Condominium Returns ")を参照してください。 (参考)  カナダのコンド法令体系

 運用開始からすでに2年経過した現在、本文の経過措置に関する説明は必要ありませんが、 制度運用の立ち上げ時に配慮すべき点など参考になることがたくさんありますので、 あえて、運用開始時点の内容でご紹介しています。

(※1)本文では、コンドミニアムをコンドと略しています。(法律名と機関名称では略しません)

登録は、(実際にそのコンドに住んでいる人にとっては) おどろくほど、簡単です。(※2)

オンタリオ州 管理組合登録法令の概要

 カナダのオンタリオ州では、消費者庁が委嘱した非営利のシンクタンクが中心となって各界のリーダーが集団協議で、 2012年から2013年にかけてコンドミニアム法1998(Condominium Act 1998)及び施行令49/01(Regulation 49/01)の見直し作業を行い、 3段階の検討報告書の公開とパブリック・コメントを経て、州議会で同法を16年ぶりに改正し、 「修正コンドミニアム法1998」を2017年11月1日施行しました。

 コンドミニアム法1998改正のいきさつは、 「マンション管理適正化法の限界」
 > 第2章 マンション管理適正化法の問題点  〜産官協調と癒着の構図〜
 > (9) カナダ・オンタリオ州におけるコンド法制改革の事例 で少し触れています。

 修正コンドミニアム法では、監督行政機関、紛争解決の司法機関などコンド専門組織の創立、 ユニット所有者の保護政策と情報提供、住民組織である管理組合の基本情報の登録など、 基本的かつ徹底的な改革を実施しました。以下に改正の主な概要を示します。

1. コンドミニアム庁 及び コンドミニアム裁判所の創立
 この改正法に基づき、コンド居住者への支援サービスとユニットオーナーの権利保護のための専門行政機関として、 コンドミニアム庁(CAO:Condo Authority of Ontario)を創立し、そのCAOの一部局の行政裁判所として、 コンドミニアム裁判所(Condo Authority Tribunal)を設立しました。

 CAO は、使いやすい情報の提供や管理組合理事向けの(委任に伴う責務についての)必須トレーニング、 および新しいコンドミニアム裁判所(行政裁判所)によるオンライン紛争解決手段を提供します。

行政裁判所はドイツやフランスなどの大陸法では現在も存在しています。 ドイツ法をモデルとした日本の大日本帝国憲法下でも存在していましたが、戦後の日本国憲法第76条で、 司法権の独立を重んじる英米法にならって行政裁判所は廃止されました。 カナダは英語・フランス語を公用語とするバイリンガル国家で、法制度の面でもフランスの行政裁判所制度が生きています。

   ○ コンドミニアム裁判所実務規則   ○ カナダの裁判所の体系

2. すべての管理組合を登録
 2018年1月1日以降、オンタリオ州内すべてのコンドの管理組合を対象に、基本情報をCAOに登録すること、 及び、定期的に更新することの義務を課しました。(同法施行令第377/17)

3. 管理組合から料金を徴収
 初回登録時及び毎年、登録情報のメンテナンス費用を管理組合ごとに徴収します。
登録・更新には期限を定め、遅延又は無申告の管理組合にはペナルティの罰金が課されます。

4. 手続きはすべて電子申告で
 登録・更新は、下記のインターネットによる電子申告で行います。
料金の納付も電子決済で、できます。金融機関への振込み、手形、カード払いもOKです。

 皆さんは税金の確定申告でe-Taxを使ったことがあるでしょうか。 税金の確定申告では、分厚い紙文書の「確定申告書」に記入して提出するやり方と、 パソコン画面に入力する電子申告のe-Taxがあります。 申請者の書類作成時間、それを処理する行政、双方にとってe-Taxは紙文書に比べて10分の1以下の負担ですみます。 登録はガイダンス付きの画面であっという間に終わってしまいます。オンタリオのコンド申告はあのe-Taxより簡単です。

管理組合の登録申告(Condominium Returns)とは?

 2018年1月1日以降、すべての管理組合は毎年、 コンドミニアム庁(CAO)に管理組合に関する情報を申告する義務が法で規定されました。 (All condominium corporations are legally required to file condo returns with the Condominium Authority of Ontario.)

詳細は「修正コンドミニアム法1998」(Condominium Act 1998)及び同法施行令「管理組合登録申告規則」 (Ontario Regulation 377/17"CONDOMINIUM RETURNS ")を参照してください。
以下、同規則の条文に明記されている内容をご紹介します。

申告(Returns)とは、コンド管理組合の基本情報(設立年月日(登記日)、住所、理事氏名など)をCAOに提出(file)することです。

登録情報に変更が生じた場合は、変更後30日以内に変更通知の申告をしなければなりません。 変更に関する詳細な案内はCAOのウエブサイトに掲載しています。

オンタリオ州政府は申告の種類を4つに分類し、それぞれに提出期限を設けています。

Types, Frequency, and Deadlines for Condo Returns
申告の種類
Return Type
回数
Filing Frequency
申告義務
Required By
提出期限
Filing Deadline
年次申告
Annual
毎年 すべての管理組合 1月1日〜3月31日の期間内
この期間内に設立された場合は、設立から90日以内
初回申告
Initial
一回 2018年以降に設立された管理組合 設立から90日以内
経過申告
Transitional
一回 2018年1月1日以前に設立された管理組合 2018年3月31日
所有権変動申告
Turn-Over
一回 2018年1月1日以降に所有権の変動が生じた管理組合 所有権の変動に係る集会(Turn-Over meeting)で議決された日から90日以内

申告した情報は何に使われる?

 コンドの情報を正確に報告することは次の二つの目的を達成するためにとても重要です。
 CAOのデータベースに登録することはCAOの公益目的と社会的適合性に寄与します。
 CAOが管理組合に賦課する負担金の料金算定に使われます。

 登録情報の公益性

 

 CAOは最新の情報に基づいてデータベース(DB)のメンテナンスを行っています。 これらの情報は、CAOのウエブサイトを通じて、個別に管理組合から付与されたアクセスキーを有する所有者、 居住者、購入者、コンドのコミュニティ関係者に提供されます。

DBの商用利用、又は大量のデータの利用は許可していません。
CAOに申告したEメールアドレスは公開されません。

 年度毎の賦課金 (Assessment fee)

 

 すべての管理組合は年度ごとにCAOに負担金を支払わなければなりません。 申告年度は4月1日から翌年3月31日です。この間に新築されたコンドは、 登記日から3月31日までの分を日割り計算で前納します。

2017年夏の時点で決定された負担金の額は、ユニットの1議決権数当たり月額1ドル、 又はコンド共有部利用権の最大議決権数×月額1ドルとなっています。

法では、管理組合のCAOに支払う負担金は共益費に算入するものと定めており、 所有者個人が管理組合に支払う共益費料金の固定的費用となります。

申告する人は誰? (Who Can File Condo Returns ?)

 法では、申告の責任は管理組合から委任を受けた下記の個人と定めています。
・理事長または管理者 (A director or officer of the condo corporation)
・管理業登録免許を有する管理会社
 (A licensed condo management provider)
・管理組合から委任を受けた弁護士・コンサルタント
 (An individual having knowledge of the affairs of the condo corporation)
  (e.g., lawyer, accountant, etc.)

登録データベースへのオンライン申告は、法的に有効な受任責任を証明し、 CAOからのアカウントを取得しなければなりません。詳しくはCAOのウエブサイトに掲載しています。

登録項目(データベース項目)

(※2) 入力画面は、10ステップしかありません。 データベース項目は、共同住宅に関する歴史や制度の違いが顕著に表れてきます。 その違いを入力画面のステップごとに説明していきます。


Step1: 管理組合の基本情報
○ 管理組合名称(Name of the condo corporation)
名称には登記名称(Full legal name)と通称(Operating name)があります。 登記名称には、法人番号が付与されています。2001年5月1日以後に設立された管理組合には、 標準(Standard)、共有部(Common Elements)、 空き地(Vacant Land)などのコンドのタイプ名称が含まれています。

通称(Operating name)とは建物に付けられた看板やエントランス入口の標章などに表示されている名称のことで、 地域コミュニティの中で使われている通り名です。

○ コンドのタイプ(Type of condo corporation)
フリーホールド(Freehold)とリースホールド(Leashpld)があります。 フリーホールドは、ユニットと土地の所有権を有する管理組合、 リースホールドは土地の部分が賃借契約になっていて、ユニットだけを所有している管理組合です。
                    「世界の共同住宅」 ⇒  コモンホールド

○ フリーホールドタイプには、更に、標準管理組合(Standard corporation)、 共有部管理組合(Common Elements corporation)、空き地管理組合(Vacant Land corporation)があります。

標準管理組合とは、ユニットの所有権と共有部の通行権、使用権を持っている管理組合
共有部管理組合とは、ユニットは持たないが、道路、ゴルフコース、スキーゲレンデなどを区画分割(Parcel) して各個人が所有している管理組合
空き地管理組合とは、建物はまだ建っていないが、将来建てるために土地を所有者が共同出資して保有している管理組合です。


Step2: 段階的増設コンド管理組合(Phased Condo Corporation)
段階的増設コンド管理組合とは、 段階的に新しいユニット若しくは共用部を積み重ねていく建物のことで、 開発計画の段階から、そのような構造の建物とする宣誓証書で宣言して登記した建物のことです。

 そのような建物における管理組合であって、2017年9月1日以前に全ての増設部分が完成した場合には、 その旨、表示します。
もし、すべてが完成していない場合、二つの部分に分けて登録します。

[Part A]においては、評価の起点日である2017年9月1日時点で存在している全議決件数を申告します。 もし、管理組合がこの時点で存在している場合、或いは、管理組合が2017年9月1日以後に設立されていた場合、 評価起点を設立日又は最初の登録日として合計ユニット数と議決件数を入力します。

[Part B]においては、2017年9月1日以後の各段階ごとの合計ユニット数と議決件数を入力します。

[Part A]と[Part B]で入力したユニット数と議決件数の総合計が画面に表示されますので、確認します。


Step3: ユニット数と議決件数(Total Number of Units and Voting Units)
標準管理組合、空き地管理組合、段階的増設コンドの場合、 ユニット(住居、駐車場、倉庫、商業用ユニットを含む)の合計数と所有者の合計数を入力します。 ユニットの種類と数は登記所に届け出ている建物の登記簿に記載されています。
共有部管理組合の場合、組合の定期総会で用いる議決権の総数を記入します。


Step4: 所有権変動集会(Turn-over meeting)
 賃貸事業者が賃借人にその居住しているユニットを分譲したり、 開発業者がその管理を専有部分所有者団体へ委譲するすることがあります。 これによって生じる不動産所有者の変動をターン・オーバー(Turn-over)といいます。 その際、カナダや米国ではターン・オーバーミーティングを行って、 新しい管理組合の理事を選出することが義務付けられています。 2018年1月1日以降にこの集会を実施したときは、その実施日を入力します。

(注):米国の場合、このような総会を、管理委譲総会(Transition Meeting)といい、 管理業務の引き継ぎが完了するまで数回開催されます。 この作業を担う委譲諮問委員会(Transitional Committee)の設置が求められる州もあります。


Step5: 会計年度(Corporation's fiscal year start and end dates)
1: 会計年度:April 1 to March 31 のように記入します。
2: 直近の定期総会(Date of Last Annual General Meeting)が行われたか(Yes/No)
   Yesの場合、開催日を(DD/MM/YYYY)形式で入力します。(Ex 14/10/2018)


Step6: 裁判所命令により監査人、若しくは、管財人が任命された管理組合ですか?
Yes/No を選択して、Yesの場合は、
任命された日を入力(DD/MM/YYYY)(Ex 16/09/2016)
監査人、管財人のどちらかを選択、その者の氏名(フルネーム)及び住所を入力


Step7: Eメールアドレスと住所
CAOとの連絡に使用するEメールアドレスと住所を入力します。
Eメールアドレスは公開されません。


Step8: 理事の氏名
最低3名以上の理事の名前(フルネーム)、Eメールアドレス、役職、選任日を入力します。
最低2名以上の理事には管理組合からの委任に基づく役職(※3)を入力してください。
(※3)理事長(President)、議長(Chair)、書記(Secretary)、会計(Treasurer)、役職なし(N/A)
役職を兼務している場合は、そのすべてを記入してください。(EX: President/Chair/Secretary)


Step9: 管理業務(Condo Management Services)
管理会社(Condominiuum Management Company)と委託契約している場合は、 業者名、郵便番号、住所(国、地域、市区)、委託開始日を入力します。
管理会社ではなく、管理マネージャー(Condominium Manager)と契約している場合、 氏名、住所、委託開始日のほかに、 個人事業主(Individual)としての契約か、管理組合との雇用契約(Emplyee)かを入力します。

Step10: 代理人(Representatives)これはオプション項目です。
弁護士などを管理組合の代理人として委任している場合は、その者の氏名、資格、 法曹資格を持たない者の場合、法律上の権能(Ability to "Act on behalf")を入力します。


入力項目は以上です。

"Go Back"ボタンをクリックして画面を戻しながら、入力した内容を確認します。
確定ボタンをクリックして送信完了です。(Review and Submit)
データは"Down load PDF"をクリックすると、PDFデータをダウンロードできます。 過去に入力したデータも年度別に一覧式で表示されます。

"Your Account Summary"画面で請求書(Assessment invoice)が表示されます。 CAOからの賦課料金(Assessment fee)と納付期限(Date Issued)が表示されています。 "Print Invoice"で請求書がPDFでダウンロードできます。

ー カナダ登録法令 解説 − 終 −

東京都条例とカナダの法令との違い

1. 登録に関するコンピテンシー基準

ここまで、ご覧になって、お気づきになられたでしょうか?
カナダの入力項目の中で建物に関する情報は、 唯一、Step3の議決権に関係するユニットの合計数だけです。 (議決権数は管理組合によって変更されることがあるから、毎年確認を要します)。
それ以外の建物や共有物件データの入力は一切ありません。
建物や共有物件データは、それらの所有権が登録されたときに、 正確かつ完全な情報が、登記所に登録されています。それらの情報を再入力させる必要はまったくありません。

登録手続きを定めた施行令49/01には、登記簿 (Land Titles Actの施行令43/96に規定しているSurveys, Plans and Descriptions of Land)と突き合わせて審査する審査官(Examiner エクザミナ)、 登記法(Registry Act)に従ってデータを登録する登記官(Registrar レジストラ)の手続きが規定されています。

カナダに限らず近代行政システムでは、このような権限と職務機能(Competency コンピテンシー)基準 (criterion クライテリオン)が当該法令の中に規定されますが、日本の登録条例にはこのようなコンピテンシー基準もなく、 登録された情報の扱いは、行政の裁量に任されます。

日本の役所は、階層組織で誰も責任をとらないシステムですが、 専門官を設けると職務も責任もはっきりし、根回しや忖度の余計な人員コストもかからない。

「桜を見る会」問題の本質は公文書規則ではなくコンピテンシー基準(組織内職務規定)の問題

物事には必ず二面性があります。
融通の利く日本的サービスは外国にはないものです。 海外では行政に限らず民間企業でも、担当者毎の作業分担がハッキリしていることが多く、 他の担当者のやってることは我(われ)関せずという人が多いし、担当者が長い休暇中で交代要員のいない事もあります。

担当者が不在でも他のスタッフが顧客優先・組織的対応でカバーする日本的サービスは外国にはありません。 但し、日本でも最近はこれらも失われていて、その職務を誰がやるかも決まっていず、問題が起きても対策は常に後手後手で、 結局、誰も責任を取らないという悪い面だけが残っています。

融通の利く日本的サービスは組織を契約ではなく擬制の血縁関係(血脈)で運営してきた日本的土壌で生まれたものです。 日本にあるのは組織ではなく脈だと云ったのは山本七平氏(1921-1991)ですが、 同時に山本氏はそれがプラスに働くと強みになるが、マイナスに働くとそれが日本の弱点になることを歴史の事例をあげて述べています。 現代は、家族主義的な日本的土壌自体が今や過去の蜃気楼でしかない。 現実を見ると、権限と職務機能(コンピテンシー基準)をあいまいにしてきた日本の行政はすでに崩壊しています。

2021年開催の2020東京オリンピック、その後に続くコロナ騒動も、どの部署が担当なのか、誰が責任者なのかも曖昧で、 混乱を繰り返した挙句、 終わってみれば東京オリンピックの収賄汚職、コロナ対策支援金の不正流用などが明らかになりましたが、行政機構は何も変わっていません。

長期安倍政権下、森友学園への国有地払い下げを巡って国会で問題となった後、 公文書の改ざんを命じられた近畿財務局職員が自殺した。 家族主義がマイナスに働くと職務責任よりも組織防衛に走る。

公共政策を官僚主導で作る事の弊害を取り除いたカナダ
カナダでも、コンド担当庁創設(Establish a Condo Office)に関するパブリックコメントでは、 多くが消費者サポートが充実拡大することへの期待と賛同を示した中に、 杓子定規で手続きが煩雑な、お役所仕事(Overly bureaucratic)には期待しない、 或いは[full of "Red tape"]など行政機構への強い反発がありました。 "Red tape"とは、公文書を赤いテープで綴じたことに由来する「官僚的形式主義」を意味する軽蔑的慣用句です。

誰がこれらの権力機構を運営するのか、担当者にはどんなスキルが必要か、その任命権者は誰か、透明性は確保されるか、 コンド問題解決への法的強制力、組織の財政的基盤など、行政機構の根幹に係る議論と法案原文の修正が繰り返され、 結局、管理組合を保護するコンドミニアム庁(CAO)と、管理業者を登録、監督、規制するコンドミニアム管理業者規制庁(CMRAO)は、 それぞれ消費者保護省と行政契約(※4)を結んだ民間の非営利(行政)法人という形態になり、 運営費用も全ての管理組合から徴収する事になりました。

(※4) 行政契約( Administrative agreement )の規定条文
コンドミニアム庁(CAO): Condominium Act,1998 c1.2
コンドミニアム管理業者規制庁(CMRAO): Condominium Management Service Act,2015 c3.(1)

上記2つの法律で行政職務の遂行に必要な3つの権限と公益保護原則を規定しています。
(1)公権力の行使に係る行政執行権限(The Governance of the Authority)
(2)主体的に組織を運営する権限(carry out the administration of the delegated provisions)
(3)権限遂行に起因する賠償責任の適切な保証を整備し維持する。
  (liability arising out of the carrying out of its powers and duties )
(4)公益保護促進を運営原則とする義務(Compliance with operating principle):
 行政契約は行政当局に対し、公益の保護を促進する原則を遵守することを要求するものとする。
  (the administrative authority to comply with the principle of promoting the protection of the public interest.)


(注)上記カナダの「行政契約」は、日本の「行政契約」とは根本的に異なります。

日本の行政契約では、(1)の「公権力の行使」にあたる業務は公的主体がおこなうべきものとされ、 権力的業務は民間委託できないこととされてきました。

平成16年の道路交通法改正では、 駐車違反対策の確認と標章の取付けは事実行為にとどまり、公権力の行使にはあたらないという解釈の下で、 当該事務について公安委員会の登録を受けた法人に委託できる(道路交通法51条の8)としました。

また、公民館などの管理運営等を委託する指定管理者制度も同様に、指定を受けた者は管理を代行する者として、 使用許可などの一定の権力的業務を行う(地方自治法244条の2第3項〜11項)としています。

(2)行政契約の手続的統制については行政手続法の対象外とされており、法的枠組は整備されていません。

(3)の権限遂行に起因する賠償責任についても、行政契約は「行政庁の公権力の行使」にあたらないから、 抗告訴訟で争う事はできない(行政事件訴訟法3条1項)とされており、行政契約に関する法的紛争の受け皿として、 民事訴訟としての損害賠償請求事件で扱われてきました。
(抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいいます。)

日本では公権力の行使は行政のみが行うべきものであり、 行政契約は行政の監督のもとに限定された一部の行政事務を民間下請けに委任するものとなっています。


カナダにおける管理組合を保護するコンドミニアム庁(CAO)と、
管理業者を登録、監督、規制するコンドミニアム管理業者規制庁(CMRAO)

日本にもこの二つの機関に似た組織がありますが、似て非なるものです。

  (1). 適正化法第91条指定法人   「一般財団法人 マンション管理適正化推進センター」
  (2). 適正化法第95条指定法人   「一般社団法人 マンション管理業協会」
  (3). 適正化法第5条の13指定法人 「指定認定事務支援法人」(新設)
   (注)令和2年6月のマンション管理適正化法の改正で(3)が更に増えた。

 カナダでは消費者保護を目的にして、必要な監督行政機能を二つの機関に行政契約で委任しています。 背任、横領、詐欺などの刑法犯罪や不正などの倫理規定に違反した管理業者には、 即座に業務停止命令(フリーズオーダー:Freeze oder)及び事業者の資産凍結命令を出すなど、 消費者保護のための強力な執行権限を与えています。  (Freeze=そこを動くな!)

日本では国土交通大臣が指定する二つの法人がありますが(※4.2)、管理業者の保護育成を目的とし、 行政執行権限はもたず、国民大衆を教育、啓蒙、宣伝する活動に限定しています。

例えば、適正化法第91条指定機関であるマンション管理適正化推進センター(公益財団法人マンション管理センター )には、 分譲業者と管理業者のそれぞれの業界団体の現役役員がセンター理事を兼務しています。
癒着どころではない。官と業界の正規の合同組織です。消費者保護が出来るわけがない。

(※4.2) 国土交通大臣が指定する天下り法人は令和2年の適正化法改正で3つに増えた。

また、適正化法第95条指定機関である管理業者団体(一般社団法人マンション管理業協会)の業務には「管理組合等からの苦情の解決」が入っていますが、 管理組合からの苦情申立ては「申立てを決議した理事会議事録を添えて管理組合理事長が申立てする」規定があって、 一般組合員からの苦情申立ては拒否されます。

この規定は管理会社相手に裁判を起こすときは、まずは、業界団体相手に申立てしなさいという請求前置主義を狙ったのか、 或いは、クレーマー対策としての業者側の防衛手段なのかは不明ですが、 苦情を自分達に都合良く勝手に決めた手続き規定で押さえ込む露骨な排除手段です。

もっとも、こんなところに申立てしたところで問題が解決されるとは誰も思っていない。
いずれも消費者保護行政を目的にしたカナダではありえないことだらけです。


(※5) 日本のマンション管理適正化法の規定条文(要約)
第91条(マンション管理適正化推進センター):
 「国土交通大臣は、管理組合によるマンションの管理の適正化の推進に寄与することを目的とする一般財団法人を指定することができる。」

第92条(業務): @情報・資料の収集・整理・情報提供、A技術的な支援、B講習、C指導・助言、D調査・研究、 E啓発活動・広報活動、Fその他管理の適正化の推進に資する業務

第95条第1項(マンション管理業者団体):
 「国土交通大臣は、マンション管理業者の業務の改善向上を図ることを目的とした一般社団法人を指定することができる。」

第95条第2項(業務): @社員の営む業務の指導、勧告その他の業務、A管理組合等からの苦情の解決、B研修、 C調査及び研究、Dその他必要な業務

上記でわかるように、これらの機関は監督執行権限をもたない単なる教育啓蒙宣伝機関です。
管理業者への登録・監督・指導権限は国交省地方整備局です。
官僚は権限を手放さず、これらの指定機関への天下りの利権も手に入れた。


公共政策作りを官僚主導に任せると消費者の為ではなく、官僚と業界の利害関係者のための制度になります。 我が国のマンション管理適正化法も東京都条例もその典型例です。

カナダのコンド公共政策は消費者保護省が委託した民間のシンクタンクが18ケ月かけて管理組合やコンド購入者・消費者を含む各界の意見を吸い上げ、 ワーキンググループで討議した結果を専門家会議にかけ、3段階ごとに討議結果を公開し、 一般公募で意見を募って法案に纏めました。その法案を議会の法制局で法律的な審査と関係法の調整を行い、議会に上程しました。 管理組合に罰則付きで登録と負担金の徴収義務を課すなど、強制力のある法律ができた理由です。

   共同住宅法制改革の公共政策 「住宅法制改革第U期報告書」


2. 法定登録情報の違い

データベースの項目要素となる「登録に必要な法定情報」には大きな違いがあります。

東京都条例の特徴は、形式的外形基準(書類があればOK、内容や実効性は問わない)で、 微に入り細にわたって「計画書や書類の有無」を登録させます。
ウンザリするくらい多いが実効性は問わない。形だけ整っていれば良い。5年間は再登録なし

管理不全の原因となる、「管理組合が設立されてない、 或いは機能していないマンション」を見つけて早期に手当てする目的で、 登録制度を作ったはずが、評価基準自体が自己目的化して、 結果的に管理不全マンションを落ちこぼれとしてDBから外すという矛盾。都条例はシュールだねぇ


(都条例にあって、カナダ法にはない項目)
(a) 管理不全を予防するための必須事項
 修繕積立金 u当たり月額_円、大規模修繕計画の有無、直近実施年_年

(b) 適正な維持管理に関する事項
 長期修繕計画(最新作成年・計画期間)、滞納対応ルールの有無、 区分所有者名簿の有無、空き住戸割合、賃貸住戸割合、耐震診断の有無、耐震改修実施の有無、 設計図書の有無、修繕履歴の有無

(C) マンションの社会的機能の向上に資する取組に関する事項
 (次の事項に関して有無を登録) - 自主防災組織、防災マニュアル、防災用品の備蓄、 避難行動要支援者名簿、防災訓練の定期的な実施、エントランスのバリアフリー化、共用廊下等への手すりの設置、 エレベーターの設置、共用部分のLED化、開口部の遮熱性能の向上(二重窓、外断熱)、電気自動車等用充電設備の設置、地域コミュニティへの取組み


(カナダ法にあって、都条例にはない項目)
 カナダ法令の特徴は、ヒューマンリソース(Human Resouce)基準(管理の主体は人間であり、維持管理は委任された理事会役員の責任) で、東京都条例のような細かな項目は一切ない代わりに、Step8で示したように、 毎年の役員名簿を登録させます。そして、コンドミニアム庁(CAO)では、理事(Director)に対し、 インターネットを使ったオンライン受講システムで、 受託責任に関する必須トレーニングを義務付けています。(※1)

(※1) Director Training(1) & self-help(2)
(1) Online training is available to ensure condo boards run smoothly.
(2) Resolve an issue with self-help resources
  Find a solution to your dispute using a variety of self-help resources.

データベースの公開(Publication of database)は施行令O.Reg 377/17で規定されています。
しかし、都条例にはデータベースの公開に関する明確な規定はない。
(データベースは行政のもの。どうしようと勝手でしょ。悪用されると困るから公開しないもん)


3.結言

〜 国民を愚民とみなして、上から目線で一方的に細かな基準と規則を押し付ける日本と、
   自立した公民としての理事に受託責任を要求するカナダの違い 〜

日本:
行政と業者が癒着して国民の税金(マンション管理適正化事業費)を使い、 過干渉と隠蔽体質の行政が国民に訓示し、それに乗っかって管理業者が管理組合を支配し搾取する日本

カナダ:
すべての管理組合を登録させた上で、管理と維持の受託責任を持つ管理組合の全理事に対して、 無料のオンライントレーニングプログラムの受講を法律で義務付け、 理事選任後6ケ月以内に講座を履修しなかった者は理事資格を剥奪する、 更に所有者・消費者保護のためのコンドミニアム庁及びコンドミニアム裁判所の運用を含むコンド行政の負担費として、 1戸1ドル/月(1棟100戸の組合から年間1万2千ドル)を徴収し、消費者保護と自立を支援しながら、 管理組合にそのための費用の応分負担を求める厳しい法律をもつカナダ
詳細は 「理事トレーニングプログラムの受講義務」 を参照ください。

ー 終 −

行政がコンピテンシー基準を設けない理由

都が条例にコンピテンシー基準を定めず、職務責任をあいまいにしておく理由

理由は責任回避です。
下記は、マンション管理士が届出義務のあるマンションに出向き、 都から管理アドバイザー派遣料(1回分21,600円)をもらって登録事務を行った件で、(何らかの不正により)、 都が訴えられたと仮定したとき、都の代理人弁護士が作成するであろう陳述書を勝手に想定したものです。

【被告東京都の主張】
ア 被告東京都が本件国家賠償請求の被告とならないことについて
(ア) マンション管理士が管理組合登録調査事務を行う場合、 特定行政庁は、届出義務を有する管理組合の登録事項の審査時及びその後の報告時においても登録事項等の具体的な審査対象書類等の提出を受けているものではなく、 具体的な審査手続にも関与していないし、 積極的にマンション管理士の業務や審査あるいは調査指導内容の妥当性や適法性を審査することを求められているものではない。

(イ) さらに、マンション管理士は、特定行政庁に代わって管理組合登録調査事務を行うものの、 マンション管理士に対する監督命令や指定の取消し等を行う権限を有しているのは国土交通大臣等であり、 地方公共団体はこのような権限を有しているものではない。

(ウ)  以上のとおり、特定行政庁は、マンション管理士が行った個別具体的な審査内容について、 その妥当性や違法性を判断することは不可能であり、 マンション管理士の行ったすべての調査事務につき、常に担当部署において再度確認をすることが必要となってしまうが、 このような結論を認めることは、特定行政庁に余りに過重な負担を強いることになるばかりか、 法が独立したマンション管理士を設けた趣旨を無意味にするものである。

 以上のとおり、特定行政庁は、マンション管理士が行った個別具体的な調査内容について、 その妥当性や違法性を判断することは不可能であり、 当該特定行政庁の所属する地方公共団体は損害賠償請求訴訟の主体として十分な攻撃防禦を行えないのである。


こんな裁判は、いままで何度も繰り返されてきたから、結論は容易に想像できる。 こんな見え透いた責任転嫁やごまかしを許さない為にも、行政法にコンピテンシー基準を盛り込むことは絶対に必要なのですが、 政治と行政の質の低下は甚だしいから、いつまで経っても日本は変わらない。

[注1] 上記に対する判決文も他の頁で勝手に想定しておきました。「この都条例の分析と傾向」

[注2] 上記の想定陳述書のなかの「特定行政庁」とは建築基準法の用語です。 本件管理組合登録調査事務の担当庁が建築基準法第12条に基づく定期報告制度と異なる行政区分となった場合は、 本文の「特定行政庁」を「担当行政庁」に読み替えて下さい。[参考]「@「特定行政庁」とは」

※ この頁は令和2年(2020年)1月31日掲載しましたが、その後、担当行政庁は、
  (1) 平成31年公布 「東京都マンション管理適正化条例」:令和2年(2020年)4月1日 施行
  (2) 令和2年度公布 「マンション管理適正化法改正」  :令和4年(2022年)4月1日 施行
  とも建築基準法の特定行政庁とは別の「担当行政庁」となりました。(2022年追記)

理事トレーニングプログラムの受講義務
   (Condo Director Training)


(注)以下は、CAOによる”Condo Director Training”の説明をそのまま掲載しています。

管理組合の理事は健全な管理組合の運営と建物設備の維持を決定する役割を担っています。

管理組合の理事会はコンドのすべての区分所有者から委任されて業務を行います。
たとえ管理組合の資産が数百万ドルでなくても、非常に多くの責任を負っています。

2017年11月1日以降に指名、選任、又は再任されたすべての理事は、選任された日から6ケ月以内に、 コンドミニアム庁(CAO)が提供するコンドミニアム理事トレーニングプログラムを完全に履修することが、 修正コンドミニアム法1998及び施行令48/01で義務付けられました。

CAOの理事トレーニングプログラムは無料でオンラインで提供され、区分所有者、居住者、 管理を委任されたマネージャーや地域コミュニティ関係者も受講することができます。
トレーニングに関するフエースブックでは受講者の88%が満足したと回答し、95%以上が受講を推薦するなど、 高い評価を得ています。

CAOの理事トレーニングプログラムは管理組合の理事会が直面する重要な事項を21の短い問題にまとめて構成され、 問題に対して幾つかの選択肢から正しい答えを選びながら、ステップバイステップで易しく自分の知識をチェックしていきます。

質問の長さは音声で流してもおよそ10分から20分で終わる程度です。
音声を聞くか、質問を読んで回答するかによって異なりますが、 全プログラムの受講に要する時間は3時間から6時間程度でしょう。


理事トレーニングプログラムにおける法定事項


1.トレーニング受講義務(Mandatory training)

施行令48/01の11.7項において、2017年11月1日以降に指名、選任、又は再任されたすべての理事は、 選任された6ケ月以内に、コンドミニアム庁(CAO)が提供するトレーニングプログラムを完全に履修することが義務付けられました。

CAO理事トレーニングプログラムを完全に履修していれば、7年間は再受講する必要はありません。
同様のシナリオで、コンドの区分所有者が2017年に履修していて、2019年7月までの3年間に理事会の理事に選任された場合、 そして、2022年7月に再任され2025年7月までの3年以内に関しては同様に再受講の必要はありません。

これらの法に基づく新任理事に対して適用される正規のCAO理事トレーニングプログラムコースとは別の、 CAOに適合していない他の機関が提供するものもあるので注意してください。

施行令48/01の11.9項において、開発業者又は開発業者がセットした事前所有権委譲理事会(pre-turnover board) から理事として選任された区分所有者はこの受講義務を免除されます。
その後、所有権変動集会(turn-over meeting)が開催され、そこで新しく選任された理事は6ケ月以内に受講しなければならない 義務があります。

2.修了証(Evidence of Completion)

施行令48/01の11.8項の規定によりコースの修了者に対して修了証が与えられます。 この修了証は当該コンドミニアムの“Contacts”頁に理事のプロフィールとして記載され、更に、 電子署名によるPDFファイルとしてダウンロードして印刷することができます。

3.期限を逸した場合の法の規定

T.結果
もしも2017年11月1日以降に理事に任命、 選任又は再任された日から6ケ月以内に理事トレーニングコースの履修義務を果たしていない場合、 令48/01の11.7 (1) (4)項29 (2) (e)号の規定により、その者は直ちにかつ自動的に理事資格が停止されます。 このことは、その者にとって、
・理事会メンバーとは認められず、理事会への出席資格がない。
・理事会議決の定足数にはカウントされない。
・理事会議決事項への議決権がない。
・法38条で定める費用の支払を受ける権利及び管理組合に対して賠償を求める権利を有しない

注意:
1.いかなる理由があっても6ケ月を延長する権限はCAOにはない。
2.期限を過ぎた者が為した理事としての職務に対して、 修正コンドミニアム法1998の37 (2)項に該当するかどうかを含めて、 特別に考慮すべき事情があったのかどうかについての法的なアドバイスは管理組合の責任で調べてください。

U.すべての所有者とCAOから求められている管理組合の法的な責任
もし、期限内に受講義務を果たすことを逸した理事がいた場合、管理組合として下記を行う義務があります。
・CAOに対して、当該理事の削除を申告すること。その結果自動的に登記事項は変更される。
・管理組合の区分所有者に説明した上で、新理事を選出し、理事変更に係る証明事項の変更を送信して情報を更新すること。

V.理事会に一人又は数人の欠員が生じた場合
理事会理事のいかなる指名又は選任であっても、修正コンドミニアム法1998と同法施行令48/01の11.7(4)項に規定する義務は遵守してください。
・理事数が定足数を満たしている場合、次期の定期総会で選出するか、或いは欠員補充選挙を行うかは任意決定できます。、
・理事数が定足数を満たしていない場合、 残りの理事は欠員が生じた日から30日以内に定足数を満たす欠員補充選挙を行う集会を開催しなければなりません。
・すべての理事が期限内に受講する義務を果たさなかった場合、 所有者の一人が理事となってすみやかに管理組合の正式の新理事を選出する集会を開催しなければなりません。

W.必須トレーニングを履修した者が欠員補充選挙で選出された場合、正式の理事になることは可能か?
可能です。但し、コンドミニアム法第29条第(2)項の規定による受講終了者が欠員補充で理事となった場合に限ります。 令48/01の11.7(4)項の規定では、指名、選任を受けた日から6ケ月以内に必須トレーニングを受講しなくてはなりません。
この理由は、誰でも2017年11月1日以降に最初の指名、選任、再任を受けた日から6ケ月以内に必須トレーニングを受講しなくてはならないという意味です。
それゆえに、欠員補充選挙の結果、正式な理事となった者は選任を受けた日から6ケ月以内に必須トレーニングを受講しなくてはなりません。

注意:
一度必須トレーニングを修了した者がその後7年の間に指名、選任、再任された場合は受講の必要はありません。

区分所有者、居住者、一般人が受講プログラムを受講するときのログイン方法

CAOのコンドミニアム理事トレーニングプログラムは区分所有者、居住者、一般人でも誰でも無料で受講することができます。 もし、CAOのHpにアクセスするアカウントを持っていない場合は、Hpにアクセスして受講申込いただければ、アカウントを発行します。

iPadを使用してトレーニングプログラムを受講される方は、 最初にフリーソフトの「Articulate Mobile Player」を、 アップルストアからダウンロードしてインストールしてください。

(CAOによる”Condo Director Training”の説明) ー 完 −


(参考1) 新任理事に課せられた必須トレーニングの履修内容
What does director training cover? 理事トレーニングの履修範囲
1) Fundamentals of condo corporations.管理組合の基本的事項
2)The legal framework governing condos.管理組合の法的な枠組み
3)The role of directors and their key responsibilities.理事会の役割の鍵・受託責任
4) Financial management and insurance 財政管理と保険
5)Physical maintenance of the condo,modifications and procurement processes.建物の修繕改修調達手順
6)Information sharing with owners.区分所有者との情報共有
7)The three regulatory and dispute resolution authorities.コンド3法と紛争解決機関

   トレーニングは各項目ごとに重要点を3つに集約、全体で21の問題にまとめています。
(注1)コンド3法:カナダのコンド法令体系 ー 「コンド所有者を守る3つの法律」 参照

(参考2)  理事選任資格(new director qualifications)
○ must be an individual;(個人であること・法人は不可)
○ must be at least 18 years of age;(18歳以上)
○ must not have a status of bankrupt;(破産者ではない)
○ must not be found, under the Substitute Decisions Act, 1992
  (被後見人ではない) or the Mental Health Act, to be incapable
  of managing a property;(精神衛生法による禁治産者ではない)
○ must not be found incapable of managing a property by any court in Canada
  or elsewhere;(裁判所から他人の資産を管理する事を禁じられた者ではない)
○ must have complied with the disclosure obligations set out in the Regulations.
  (法に基づく告知義務を遵守する者であること)(注2)

 ※ 管理組合は上記の理事選任資格及び就任後に上記の資格を失った理事の
    解任規定を管理規約に盛り込むことが義務化された。

(注2) 法に基づく告知義務とは:
  管理組合に対する裁判係争中の原告、若しくは被告としての訴訟当事者又は家族、
  過去10年以内に有罪宣告を受けた者、管理組合の業務に特別の利害関係を有する者、
  管理費等の共益費を60日以上滞納している者、区分所有者ではない者

 理事候補者は上記に該当する場合、選任投票前に理事会に告知しなければならない。
  告知された事実は本人の意思を考慮することなく公開されるものとする。

(2020年1月31日掲載・随時更新)