管理組合のための
個人情報保護ガイドライン (Privacy Guidelines for Strata)
7. ビデオ監視システム上の個人情報の扱い
第7章 ビデオ監視システム上の個人情報の扱い 目次
1.ビデオ監視システム上の個人情報の扱い
2.個人情報保護指針で規定すべき事項
3.定期総会や理事会の録音・録画
7.1 ビデオ監視システム上の個人情報の扱い
監視カメラは共同住宅に入る人々や共用部での居住者の動きを録音・録画します。 そのような情報は、 個人情報保護法で言う「識別可能な個人に間する情報」の収集につながる可能性があります。 一般的に監視システムへのアクセスはセキュリティ対策がなされて制限されています。
管理組合は、 ビデオ監視システム及びモニター付きオートロックシステムから取得した映像と音声情報に関して、 個人情報保護法の規定に従わなければなりません。
この章では、管理組合におけるビデオ監視システムへのアクセスと制御に関係する幾つかの考慮すべき事項について、 述べています。
居住者や訪問者はビデオ監視システムが日常生活の防犯と安全に役立っていることを理解していますが、 しかし同時に、過剰で押し付けがましい監視システムからは自由でありたいと願っています。
個人情報保護法はビデオ監視システムの使用を禁じてはいません。 監視システムの本来の目的は外部からの侵入者対策です。 ビデオ監視システムは、深刻な問題への対応に失敗するおそれのある他の方法に比べて、 プライバシーへの侵害をより少なくする場合にのみ使用されるものです。
ビデオカメラによる監視システムを導入する前に、 管理組合はそれらの設置と個人情報の取扱いに関する管理規約を成立させておかなくてはなりません。 もし、管理規約が成立していない場合には、ビデオ監視システムの設置には区分所有者全員の同意が必要です。
すべての場合において、管理組合は、 そのようなシステムの使用とそれらが収集する個人情報を管理する、 包括的な成文化された個人情報保護方針(プライバシーポリシー)を制定するべきです。
管理組合は規約違反者に対して罰金その他の処罰を課すことができます。(共同住宅法Part7,Division3) 但し、軽微な規約違反では、ビデオ監視システムから取得した個人情報を罰金を正当化する目的で使用することは禁じられています。
個人情報保護管理委員会指令P09-02は、 個人情報保護法第14条に基づき、管理規約に規定がある場合を除き、 不法侵入者による人命、財産への危害防止安全対策として駐車場及び外部からの玄関扉へのビデオ監視システムの設置を認めています。
同時に、個人情報保護法第14条では水泳プールやフイットネスルームへの監視カメラの使用は認めていません。
不法侵入、盗難、個人の安全または財産への脅威に対する苦情や証拠がない場合、 TVケーブルシステムを介してビデオ監視システムへのアクセスを住宅ユニットに提供することや、 ビデオ録画映像の定期的チェック作業を一般の人が管理することは認めていません。
個人情報保護法はまた、「調査」または「手続」の目的で個人情報の合理的な収集、 使用および開示を認めています。 例えば、区分所有者が間違ったゴミ箱に廃棄物を投棄するなど、 不適切な投棄が細則違反となる可能性がある場合、 ビデオ録画映像で確認することはプライバシー侵害とはみなされません。
分譲時の開発業者によって既にビデオ監視システムが設置されていた場合、 監視システムを作動させる前に、 管理組合はそれが居住者にとって本当に必要なシステムなのか、 他に居住者の安全を守る手段はないのかなど、監視システム使用にあたっての正当性を 検証しなければなりません。
玄関のモニター付きオートロックシステムは 管理組合の共用部分の財産と区分所有者の安全をはかるためにのみ使用されなければなりません。、 例えば、同じフロアの全員が同じ暗号キーを使用するような方法で、 区分所有者または居住者の特定情報が匿名化される場合、 共同住宅に住む個人のプライバシーが潜在的に侵害される可能性は低いといえます。
分譲時の開発業者によってビデオ監視システムとその運用手順がすでに提供されていた場合でも、 そのシステムが個人情報保護法の規定に適合しているかどうかの検証責任は管理組合にあります。 その根拠は、管理組合の個人情報保護指針(プライバシーポリシー)と、 個人情報保護管理規約は総会で全会一致で承認されなければならないことにあります。
建物内の区分所有者と居住者は頻繁に入れ替わります。 あらかじめ個人情報保護指針と管理規約で制定しておくと、 その後に入れ替わった区分所有者と居住者はそのまま権利と義務を継承することになるので、 あらためて個別に承認をもらう必要はありません。
ビデオ監視システムの対象となった本人は、ビデオカメラの映像を含めて、 自分の個人情報にアクセスできる権利を持っています。
管理組合は本人からの情報公開の要求があった場合には、同じ画像中の他人の
個人情報を厳格に処理したもの(例えば顔や衣服の画像にぼかしを入れるなど)
を提供しなければなりません。
この画像処理には費用がかかる可能性があるため、
管理組合は提供する責任を負う個人情報の量を減らすために、
提供するビデオ記録は必要最小限のものにする必要があります。
7.2 個人情報保護指針で規定すべき事項
ビデオ監視システムに関して個人情報保護指針で規定すべき事項は下記のとおりです。
1.ビデオ監視システムによる個人情報の収集及びその情報は、 収集目的に一致したものに限り使用することができる。
2.ビデオ監視システムの取扱は管理組合が承認した者によって行われること。
3.監視システムのビデオカメラは、共同住宅の財産区域を超えた領域を監視したり、
又は共同住宅に隣接する周辺の建物の窓が映る部分などは共同住宅の内外を問わず設置をしてはいけない。
区分所有者又は居住者や訪問者、従業員が使用する更衣室やシャワールームなど、
個人のプライバシー保護の妥当性が当然に期待される場所を監視してはならない。
4.ビデオ監視システムの稼動時間
5.ビデオ監視システム映像の記録時間と消去の期限
6.ビデオ監視システム映像が安全に保存される期間及びその記録が消去される期限
7.個人からの映像情報の開示要求に対する管理組合の対応
8.区分所有者、居住者及び訪問者はモニター付きオートロックシステムによって監視されていることを告知する方法
7.3 定期総会や理事会の録音・録画
出席者の過半数が賛成しない限り、 管理組合の定期総会や理事会の議事を 管理組合又は出席者個人のビデオカメラ等で録音・録画することはできません。 但し、個人情報保護法では、出席者個人が録音・録画することは禁じていますが、 組織としての管理組合及び理事会が録音・録画することは禁じていません。
したがって、「事前の代理人を含む有権者からなる出席者の過半数の承認なしで、 総会又は理事会を録音・録画することを禁止する」旨の条項を管理規約に盛り込むことは構いません。