フォーラムの4つのテーマ
第2回 マンションライフフォーラム
2006年6月4日 中野区勤労福祉会館
あなたのマンションの寿命を延ばす管理組合の活性化と計画的な改修 築後30年を越えるマンションストックは60万戸を突破し、あと5年も経てばその数は倍増します。 マンションの建て替えは容易ではなく不可能に近い場合も多いのです。 どのマンションにとっても、経年劣化を適切な維持管理によって防ぎ、100年マンションを目指すことが大きな課題となります。
今回は、この問題を、高経年の管理組合の方々の事例発表と、建築や構造の技術者とのパネルディスカッションを通して考えて見たいと思います。
基調講演: マンション管理評論家 村井 忠夫
居住者レポート: 堀口 克己
司会 ルポライター 福崎 剛
回答者 一級建築士・建築構造士 横田 幸久
一級建築士 高橋 行信
一級建築士 羽鳥 修
一級管工事施工管理技士 馬渕 孝夫
分科会 「大規模修繕と長期修繕計画」
1グループ テーマ「大規模修繕と長期修繕計画」
アドバイザー : 羽鳥(一級建築士)
参加者 20名
○Aさん 初台 築18年 16戸 勉強をしに来た。
○Bさん 石神井公園 管理組合理事 築22年 16戸 長年放置されてきたが、 がんばって来年はじめての大規模修繕工事を計画している。
○Cさん 管理組合理事 築3年 169戸 理事になって1ヵ月、長期修繕計画を見ても分からないので勉強にきた。
○Dさん Cさんと同じマンションの理事長。築3年で長期修繕計画の見直しを管理会社にしてもらった。
○Eさん 田園調布 築34年 28戸 昨年3回目の大規模修繕を終了。今年1年目の点検を済ませた。
○Fさん 市川市 600戸、公団、 2年前2回目の大規模修繕を終えたが、3回目をどうするか、建替えも含めて考えている。
○Gさん 武蔵野市 築38年 47戸 築18年に1回目の大規模修繕を行った。以降は管理会社の1級建築士が長期修繕計画を作っているが、内容は雑駁。
管理会社主導で部分的な修繕しかしていない。修繕委員会を立ち上げ、第三者のチェックを入れて判断したい。
○Hさん 品川区 築24年 28戸 2回目の大規模修繕に入るが、設備、防水関係について知りたくて来た。
○Iさん 杉並区 築31年 54戸 3回目の大規模修繕で給水管(ステンレス管)給湯管、排水管の交換工事を行った。
○Jさん リニューアル会社から勉強のために来た。
○Kさん 世田谷区 築31年 59戸 管理人まかせの管理で、修繕記録も残っていない。昨年、マンションNPOの監理ではじめて本格的な大規模修繕工事を行ったが、長くもたせるための準備、方策を知りたい。
○Lさん 足立区 築26年 301戸 前理事長、現専門委員 長年修繕積立金の値上げをしていない。資金が少ないので値上げをしたいが、年金生活者もいるのでむずかしい状況。他の大規模マンションでは、どのようにして値上げをしているか聞きたい。
○Mさん 杉並区 築6年 243戸 理事長 高層階を持つ免震構造のマンション 当初管理会社の作った長期修繕計画の最後は大赤字。こんな作り方でいいのか疑問になった。今回管理会社から長期修繕計画の見直しを勧められているが、どのような点を押さえておけばいいのか知りたい。
○Nさん 新宿区 築38年 101戸 大規模修繕を2回経験。最近は漏水等雑排水関係のトラブルが多いので、役立つ勉強をしたい。
○0さん さいたま市 築12年 43戸 1回目の大規模修繕中。修繕終了後は修繕計画をどう進めたらいいか。
○Pさん 光が丘 築8年 121戸 低層3階のサテライズ4棟 1年交替の理事だが大規模修繕とはどんなものか。
○Qさん 築22年 給排水の修繕費用が どの程度か知りたい。
○Rさん 新築小規模マンションの友人から話を聞いてくるように頼まれた。
○Sさん 中野区 築30年 36戸 長年 自主管理をデタラメにやっていたが、 昨年から管理会社に委託した。長期修 繕計画をしっかり立てて、大規模修繕をしていきたい。
2.討議された内容
(1)給排水設備工事について
経年数の高いマンションからの参加者が多かったので、給排水設備工事について関心度が高く、次のような意見が出た。
・Nさん Bさん、Lさんからは これから給排水管工事を考えているが、2回目の大規模修繕と、給水設備工事の時期がダブるため、資金的に厳しいとの指摘があった。
・Bさん 22年目ではじめての大規模修繕になるので、まず大規模修繕をして、その後設備改修をするつもり。
・Fさん 3回目の大規模修繕では、サッシの交換や給排水管の交換があるので、資金面で思案中。
・Iさん 給排水管工事を行った際の問題点をまとめ、給排水チェックリストを作った。
羽鳥氏のコメント
給排水管工事は、施工後30〜40年間は手をつけずにもたせる内容にすることが基本。特に専有部、共用部の管のつなぎ部分を、しっかり工事することがポイントとなる。それには専有部と共用部の扱いについて、管理組合の皆さんの合意をとり、管理規約に反映させていくことが大切だ。
(2)長期修繕計画の運用について
・Gさんより、管理会社主導でさみだれ式の工事をしてきたが、築30年以上経つのに、大規模修繕工事をしたことがない、との発言があった。
・Eさんからも、管理会社任せにしていたため、管理会社を変更したが、新しい管理会社から建物に責任が持てないといわれ、資金もなく、途方に暮れていたとき、NPOに相談。アドバイスを受けてようやく修繕委員会を立ち上げ、工事に漕ぎ着けた経緯の話があった。
・Gさん 建物診断の費用はどの位かかるのか。
・羽鳥氏 1日目視の場合もあるし専門的な調査の場合もあるし、マンションの規模によっても異なる。
羽鳥氏のコメント
大規模修繕工事を行う際に、資金面で困っているという話が、先ほどから共通の問題としてあげられているが、大規模修繕工事では、前もって長期修繕計画を立て、これに合わせて積立金額を決めること、長期修繕計画を運営の基本とすることが、重要なポイントとなる。
また、長期修繕計画は管理会社が作るものと、専門家が作るものとでは、考え方に大きな差がある。専門家は30年の計画で、できるだけ工事を集約させ、効率の良い工事計画を組むことで、30年のトータルでは、大規模修繕工事にかかる費用が1〜2割安くなることが多い。こういうスタンスの専門家に作成してもらい、しっかり説明を受けるようにしてほしい。
長期修繕計画は、あくまで検討資料なので、その利用の仕方も重要。
・Sさんから、インターネットで調べると、長期修繕計画を無料で引き受けるところが結構多いが、どうなのかという質疑があった。
H氏のコメント
長期修繕計画を無料で作ってもらったらという意見に対しては、無料で作るほどロクなものはないと考えている。それを頼りにするのは止めた方がいい。
長期修繕計画は、専門家が実際にマンションを診断した上で、それに見合った計画を立てるものだ。標準管理規約が改正されて、管理会社が長期修繕計画を立てるようになっているが、中立公平なしっかりしたものかどうかは疑問がある。
管理組合が中心となった長期修繕計画を立ててほしい。私の住むマンションでは、2回目の大規模修繕工事の直前に、長期修繕計画を専門家に作ってもらい、それを基に資金計画を立て、工事を実施した。長期修繕計画は羅針盤のような役割を果たした。
(3)その他の質問
・Qさん 屋上防水の外断熱とはどういうものか。
・羽鳥氏 屋上のコンクリート上の部分を断熱するのが外断熱、下の部分を断熱するのが内断熱だが、通常は外断熱。あとは防水層の上に置く場合もある。
・Cさん 建築のことではないが、管理会社が居住者の名前や電話番号などを、個人情報保護法を盾に管理組合に教えてくれない。他のマンションではどうなのだろうか。
・数人から、居住者名簿は管理組合が持たず、管理会社が保管しているとの回答。
・Bさんから、標準管理規約では、管理組合が居住者名簿を持つことになっているのではないか、との指摘があった。
( 標準管理規約64条<帳票類の作成、保管)
3.感想
参加者の方々のマンションの維持修繕による資産価値の向上、住環境の快適さを求めることに対しての熱気と、問題解決に向けた貪欲な姿勢を感じた。(A氏)
分科会としては人数が多過ぎたので、時間が足りなくなり、終了直前に質問が立続けに出された。この人数であれば全員参加(自己紹介)に重きを置くよりは、話し合うテーマを事前に聞いておくとか、整理しておいて進めた方が良かった。(N氏)
(2006.07.17 掲載)
2. マンションの構造と耐震性
2グループ テーマ「マンションの構造と耐震性」
アドバイザー : 横田(一級建築士・建築構造士)
高橋(一級建築士)
司会進行 : 山野井(一級建築士)
書記 : 坂元(編集者・マンション管理士)
参加者 6名
○Aさん 港区 築8年 90戸 区の耐震診断を受けたいと、管理会社に構造計算書を求めたが「ない」という返答で困っている。構造計算書がないと補助は出せないと区にいわれた。
○Bさん、Cさん 独立系の管理会社に勤務。最近、大規模修繕の際に耐震問題について聞かれることが多いので参加した。
○Dさん 築9年 26戸 81年の新耐震といっても切れ目があるのでは。法が施行されたとき、確認申請が出ていれば、新耐震と判断するのか。新耐震なら震度6強で本当に倒壊しないのか。
○Eさん 築32年 15戸 オーナー 耐震性が心配。大規模修繕工事も考えている。
○Fさん 築33年 59戸 1階にピロティのあるマンションに住んでいるが、耐震性を心配している。
2.横田氏よりマンションの構造・耐震についての概要説明
1981年に新耐震となり、その後耐震基準は変わっていないが、細かな決まりや新しい解析方法が追加されている。新耐震になってすぐ出来た建物と、現在作られている建物とでは、同じ新耐震の建物といっても性能に大きな開きがある。
また、71年までは柱のフープ間隔が、200ピッチ〜300ピッチでよかった。つまり、ピッチが粗いので、地震が来たときに柱がせん断破壊してしまう。そこで71年に改正されて100ピッチとなり、柱のせん断強度がアップした。
81年の新耐震以前の建物は、震度5程度の地震に対して軽微な被害になるように設計されていたが、それ以上の地震に対しては検証されていなかった。
新耐震後は震度 6強の地震に対して倒壊しないように作られている。だから解析も震度6強の地震が来たときに、どんな被害が出るかという解析をしている。
81年以前の地震力のとり方は、高さ16mまでが建物の重量に0.2を掛けたものを地震力として設計していたが、今の新基準では上階ほど係数が大きくなり16m(マンションでは5階位)では0.3強程度で計算しているので、1.5倍位耐力差が生じている。ただし、1階は0.2で計算しているので、現在の建物と同じ耐力となる。
(新耐震以前は建物のバランスや、柱・梁にとりつく雑壁を考慮していないので、単純な比較はできないが)。
神戸の地震で5、6階部分で建物が崩壊する中間層破壊が発生したのは、このためだと思われる。
SRCの建物でも、旧耐震の建物は、柱・梁の鉄骨がラチス構造 (せん断耐力が充腹形の鉄骨に比べて小さい)の鉄骨だったので、こういう高層の建物では被害が大きかった。
特にピロティのある建物は被害が大きかった。旧耐震の建物の内でもピロティ形式のものは4割程度の建物で大きな被害が発生。新耐震の建物でも、ピロティのある建物は倒壊したものが数件あった。
旧耐震のピロティ形式の場合は、絶対に耐震診断を受けて補強をした方がよいと思う。ピロティの層がなくなるような形で倒壊した建物が、旧耐震の建物では2割近くにも及んでいる。
ピロティの補強はRCの壁1枚250万円位で出来る。4枚入れて1,000万円程度。鉄骨ブレースの補強は3〜4倍位かかる。耐震補強はバランスも重要なので、建物の形状を考慮してバランスよく補強壁を配置する必要がある。そのために入口を塞いでしまったりということもあるので、意匠の設計家と共に動線も考えて補強工事をしなければならない。また、大規模修繕の計画に併せてやるといった工夫も必要だろう。
3.討議された内容
(1)ピロティのあるマンションの耐震補強
Eさん、Fさんから、駐車場になっているピロティがあるので、耐震診断とその後の補強工事の可能性について質問があった。横田氏は2人のマンションの形状を詳しく聞き回答した。
・Fさんのマンション 築33年 6階建
1階のピロティは、6フレームの内4フレーム壁があり、1つが車路になっている。
横田氏のコメント
Fさんのマンションは1スパンだけ壁の抜けている部分ピロティになっているため、一番端のフレームの柱だけに炭素繊維を巻くだけでよいのではないか。実際には耐震診断を受けた方が良いと思う。
・Eさん 1階ピロティの駐車場を改装して事務所にしようと、壁(耐震壁でない)と梁を入れ柱に15mm厚のH鋼を入れて最低限の補強をした。
横田氏のコメント
たぶん、完全なピロティ形式なので、鉄骨でプレースを入れれば、事務所として使いながら補強できると思う。
・耐震診断は延べ床面積550uの面積で費用はどの位かとの質問には、多分100万円以下でできるだろうと回答した。
(2)耐震診断を受ける機関
・Aさん 耐震診断を受けようと思っても、診断の機関が多過ぎてどこを選んだらいいか、迷ってしまう。
横田氏のコメント
まず、経験豊富なところを選ぶことだ。
高橋氏のコメント
耐震診断の評定機関がある。
(3)いつの建物から新耐震とされるのか
・Dさん 新耐震とされる建物は、81年の法律施行時に、どこまで進んでいた建物を指すのだろうか。
横田氏のコメント
81年6月に工事着手をした建物。杭のある建物は、6月の時点で杭を打ち始めたもの(5月中に杭工事に着手したものは旧耐震で設計されている)で判断する。
(4)姉羽問題で耐震強度がコロコロ変わる理由について
横田氏のコメント
非常に難しい問題で、ソフトや解析条件、方法によって違いが出る。構造設計は、この建物はどのへんが壊れそうかと考えながら行うが、それを念頭に置かないで設計すると、全然違う数字が出てしまう。10年前のソフトと今のソフトでは全然違うので、今のソフトで10年前の建物を解析したら、違う答が出ることがある。考え方が違うので仕方がない。 構造をやっている人間なら、この建物なら大丈夫だろうということは経験で分かるものだが、構造の専門家でも、どうしてこんなに違う数値が出るのかと思うことがある。
(5)耐震診断、補強工事の困難さ
・管理会社に勤務するBさんからは、管理会社の立場からの悩みが出された。
管理会社が地震の危険性を説き、耐震診断をすすめても、管理組合では、悪い診断結果が出ると資産価値が下がるので、反対といわれた。
・Fさんからは、管理組合の理事から、「地震が来たらそのとき考えればいい」といって真剣に考えてくれない、との悩みが披露された。
4.感想
少人数での話し合いになったため個々の案件について、条件を聞き出し、横田氏が主に答えるかたちとなった。
ただ、構造や耐震という専門性の高い分野での話し合いだっただけに、言葉で説明するだけでなく今後はホワイトボードを用意して、図で示しながら話し合いをすすめれば、参加者の理解をさらに深めることができると考えられる。(坂元氏)
3. 管理形態の現状と自主管理
3グループ テーマ「管理形態の現状と自主管理」
アドバイザー : 板垣(管理組合理事長)
福崎(ルポライター・管理組合理事長)
書記 : 山本(一級建築士)
参加者 21名
1. 皆さんの管理形態と現在の問題点を紹介
○Iさん 築27年 58戸 9階建 自主管理歴27年の法人化組合。理事長として今年で9年目になる。H8年度に建物診断を実施、それを基に長期修繕計画を作成し、H12年度に一時金徴収なしの積立金のみで2回目の大規模修繕を実施した。 躯体の爆裂・中性化・防水対策を徹底して行い、外壁塗装やサッシの交換も実施。
ただし積立金のみで実施したので、給排水管やガス管の交換はできなかった。
費用の削減を徹底して行い、直接雇用・常駐管理人を解雇し、隔日勤務の清掃専門のパートを雇用することで、年間200万円の削減、管理人室を会議室に改装し、会議費(会場費)も年額30万円削減。エレベータ保守料を交渉して年額18万円減額した。電気も節電型の器具に交換し年額15〜20万円減額した。
このように費用を削り、5年経って積立金残高が大規模修繕前の額まで戻ったので、来年給排水管・ガス管の更新工事を行う予定。これをやるとあと30年はもつかなと思っている。
○Aさん 横浜 築8年 11階建 今年で理事長2年目、管理会社、管理組合役員との関係の問題を抱えている。組合運営の仕方などを知りたい。
○Bさん 築27年 123戸 今まで20年自主管理をしていたが、役員8人の内5人が70歳過ぎで限界もあり、現在の管理の状況にもついていけないので、管理会社に委託することにした。
管理会社にお任せになってしまうのではないかと懸念している。
従来、役員報酬として理事長月6万円、平理事月2万円、会計理事はプラス2万円を出していたが、管理会社委託になったので、役員報酬を半額にすることを総会で諮った。
これでちょっと内輪もめがあり、理事のやる気がなくなってきている。マンション内で裁判があり、勝訴したが今控訴されている。裁判は理事が動いているので、理事のやる気を出すには、どうすればいいか。
○Cさん 中野区 築6年 17戸 7階建戸数が少ないためか管理会社がずさんで担当者も頼りなかった。
去年、管理会社を変更し、管理費を年間290万円から200万円に減額した。変更してから半年なので目下,様子見の状態。いずれにしても管理会社には頼れない、自分達でやらなければと思っている。
○Dさん 江東区 築9年 209戸消防点検や排水管清掃など、2戸だけが留守でもないのに中に入らせてくれないので困っている。 弁護士に相談したところ、訴訟した方がいいと言われたが、他に方法はないだろうか。
○Eさん 中野区 築3年 50戸弱 販売会社系列の管理会社に委託している。理事は輪番制で1年交替。居住者の管理に対する意識が弱い。修繕積立金にしても今のままでよいのか不安。
○Hさん 世田谷区 築34年 59戸 当初から自主管理の形をとっていたが、5年前までは理事の選任も、予算の使い方も、会計までも、住込の管理人まかせで、それまでの通帳も帳簿も、記録が何も残されていなかった。
このことに気づいて、H12年から自分達で管理を始めたところ、いままで全く貯まらなかった修繕積立金が、その後の5年間で6,500万円貯まり、昨年、大規模修繕を一時金なしで実施できた。
私は昨年から理事長になったが、今年 管理人を解雇し、管理人室を会議室にした。
理事は無報酬、事務局の設置はちょっと危険だと思っている。
○Iさん 柏市 築16年 20戸 自主管理をしている。現在はリタイアした人が多く、日曜日に理事会を開いている。
理事長は1年交替で理事は2年、居住者の11戸で回している。規約に理事は推薦制、輪番制と書くともめごとになるので書いていない。私も80歳まではがんばろうと思っているが、将来は管理委託も考えていかなければと思っている。
○Jさん・Kさん 中野区 築33年 66戸 自主管理をしているが、建物はかなり劣化しているので大規模修繕をしなければならない。 理事長は8年間やっていらっしゃるが、高齢の方なのでサポートしたい。
Lさん、Mさんの場合 29戸中、16戸が賃貸で若い人が住み、残りの13戸に住んでいる人達で、理事7名、監事2名、残りの人はいろいろな運営委員になって、管理業務や清掃を交替で行っている。
住んでいる区分所有者は、みんな役があって仕事をするが、決して無理をしない。できる範囲でやるという形をとっている。
○Lさん・Mさん 築28年 29戸 点検業務は管理会社に委託しているが、管理業務は住民6名で、清掃業務も住民が、有償で行っている。
○Nさん 中野区 築3年 160戸 理事は輪番制で1年。主人が今年理事長になった。商社に勤めていて多忙だが、1年だけだからがんばろうとやっている。
入居前、管理規約にサインしてしまったが、実際に入居してみると規約に合わないところがある。変えていかなければと思っているが、別に未解決の問題もあって、後回しになってしまう。どうするか悩んでいるところ。
○Oさん 北区 築25年 22戸 理事になったばかり。半分が賃貸で、地主が管理業務をやっているが、清掃はしないし、自宅の植木剪定を管理費から出したり、息子が月5,000円で駐車場を使うなど不満が多い。
大規模修繕をするにも修繕積立金が足らず、どうしたらいいか、管理業務も自分達でやっていけたらと思っている。
○Pさん・Qさん 練馬区 築33年 56戸 現在全面委託をしているが、自主管理又は部分委託を考えている。 事務局制をとり、理事は無報酬だったが、理事会ごとに1,500円支払うことにしたら出席率がよくなった。 5年前理事長を引受けたが、その後理事長のなり手がなく、公募しても立候補者がおらず、またなってしまった。
2.討議された内容
(1)理事のあり方
高経年マンションの方からは、居住者の高齢化と、特に自主管理だと理事長を長く続ける結果になってしまう、という発言が多かった。
福崎氏のコメント
Bさんのマンションのように、自主管理をしていても、理事達の高齢化が進み管理会社に頼んで負担を軽減しようという流れは、今後も出てくるのではないか。
・Aさんから、従来の輪番制をやめて、立候補制、推薦制にしようと決議した。
積極的に管理組合の運営にかかわれる人を役員に推薦して、管理会社と話し合いのできる体制にしようと思っている。
板垣氏のコメント
そういったことに気づいて、意識を持った方が出てきたときがチャンス。こういう方が、今までの機械的な輪番制では駄目だから、新しいかたちにしようと提案をして、みんなを引っ張っていくことが必要だ。
・Eさん 自分も同じようなことを管理組合のみなさんに発言しているが、築3年ではまったくリアクションがなくて困っている。
・Aさん 築2〜3年では、なかなか意識は出てこない。規約にしても、長期修繕計画にしても、もう少し時間が経たないと、管理会社主導への疑問を持つようにならないようだ。
福崎氏のコメント
築3年位でこういった意識改革をした方が頑張れば、10年目、15年目の大規模修繕の時期までには、一時徴収金がなくても済むようになるのではないか。
(2)管理組合の訴訟問題
・Eさんから、理事になって訴訟問題が起きたとき、裁判所に行ったり、仕事上の支障が起きはしないかとの疑問が出た。
板垣氏のコメント
自分のマンションで悪質な滞納問題で本人訴訟で裁判を起したことがある。周到に準備しないといけないが、出廷は4回で終わって滞納額を取り返すことができた。
裁判スケジュールは自分で決められるので、行くこと自体は負担にならない。逆に弁護士を使って書類を作ってもらうことの方が、手間がかかって大変。本人訴訟はそんなに難しくないし、自分でやった方が早いということもある。
(3)自主管理の一つの方向
自主管理の場合、理事長一人が頑張る形になって、どうしても抜けられないというジレンマを抱えながら、なかなか次の人が出てこない状況が多い。
板垣氏のコメント
この事例はとても大事なヒントかも知れない。全員が参加して、できる範囲でやっていこう、それをまとめていこうというのが、自主管理の方向だと思う。
(4)管理規約について
・Nさんから、原始規約が実際と合わないという発言があった。
・板垣氏 原始規約は変えていかなければいけない。
・福崎氏 実情に合わないものや不利益になるものは、できるだけ早く変えていく方がいい。
・板垣氏 何をするにも、一人で孤立することのないように進めてほしい。
(5)等価交換のマンション
・板垣氏 Oさんのマンションのように、等価交換のマンションについては、分譲後も続く不公正な地主特権を認めてはいけない。
(6)その他の意見
・Hさん 現在の自主管理に対して、管理会社を入れてはどうか、という意見もあるが、年間300万円〜400万円も違ってくる。
今後10年間で1億5,000万円貯めないといけないので、自分が元気な内は絶対に管理会社を使わない。
自分達で居住者を雇用して、完全な自主管理にしたい。
・板垣氏 その思いを、みんなの共有の思いにしていかないといけない。
・福崎氏 これからは理事長が頑張るだけでなく、一人でも多くの人が協力していけるといい。自分達で守っていこうという共通の意識がないと、いい住まいの環境は作れない。
・板垣氏 理事が専従職員としてやっているところや事務局を置いているところもある。自主管理といっても様々な形態があるので模索してほしい。
4. 設備改修の時期と内容
4グループ テーマ「設備改修の時期と内容」
アドバイザー : 馬渕(一級管工事施工管理技士)
司会進行 : 小塚(司法書士・マンション管理士)
書記 : 古薗(マンション管理士)
参加者 9名
1. 設備における専有部分の問題
マンションは建前上、専有部と共用部に分けているが、基本的には一体のものである。設備工事はできるだけ専有部と共用部を同時に行った方が良い。
しかし規約では通常、横引き管は専有部分になっているので、規約をそのままで専有部まで工事をすることが難しくなる。
専有部まで管理組合が費用を負担すること、つまり修繕積立金を取り崩せるかどうかが問題になる。
管理規約に「横引き管は共用部」と明記した岩崎さんの経験を伺いながら、話をすすめたいと思う。
○Aさん この種の集会に初参加した。
○Bさん 練馬 給排水管の工事をやら なければならないので、専用部分の工事に関する規約改正に興味がある。
○Cさん 練馬 理事長 大規模修繕をひかえ設備工事の勉強をしておきたい。
○Dさん 築31年 100戸 マンション管理士 何回か事故があり排水管の交換を考えている。給水・給湯管も一緒にやりたいが、大規模修繕をしたばかりなのでそこまでできるか悩んでいる。
○Eさん 築23年 85戸 来春大規模修繕を予定。10年前に更生工事をした給水管の2回目工事も検討している。
○Fさん 築42年 66戸 5年前に排水管工事を実施。給水管の改修はこれからだが、給湯管、ガス管についても検討中。今まできちんとした大規模修繕をやってないので積立金が4千万円ある。
○Gさん 全26戸の内23戸を法人が所有している特殊なマンション。これでいいのかという意識があって参加した。
○Hさん 築16年 20戸 2年前にマンションNPOのコンサルで大規模修繕をやった。
送水ポンプの部品がなくなったといわれ交換を検討している。
また、建物の陰になった家に電波障害があってテレビ信号を転送しているが、デジタル化で今後はどうなるのだろうか。
○Iさん 築20年 134戸 11年目に第1回大規模修繕、17年目に給水管工事済み。22年目に第2回の大規模修繕を予定。
2.討議前に馬渕氏からの問題提起
(1)設備改修の時期と内容
機械物(ポンプ)は10年〜12年でオーバーホールまたは改修の時期になる。
配管を基本的にどこに置くか、どう押さえるか、つまり、しっかり固定すると同時に建物の揺れにどれだけ対応できるシステムになっているかが、耐久性にも絡んでくる。
改修工事を計画するときはそれらを考えて行うことが大切だと私は考えている。
給湯管は銅管の接続部分のハンダミスによる金属の腐食や、加工された薄肉の銅管の長期使用による漏れなどがよくあるが、施工の状況や時期によっても変わってくる。
図面がしっかり残されているところは少ないので、まず管の材料や配管がどのようなところを通っているかを把握することが大切だ。
新築時における設備工事は、作業ローテーションが厳しく、建築中は囲ってしまうので、支持金具の工事やクッションのとり方などが見逃しがちになり、後で事故になるまで気がつかないことがある。
それだけに工事監理は難しく、慎重を要する仕事であり経験も必要だ。
3.討議された内容
(1)横引き管の共用化
I氏のマンションでは規約改正により横引き管も共用部分にしているが、その経緯について以下の説明があった。
「私の住むマンションは1974年完成で、旧建築基準法で建てられている「既存不適格」の建物。建て替えると現在の容積の 1/3 がなくなってしまう。だから管理組合としては、長持ちさせることを選んだ。そのために設備配管をきちんとしておこうという発想になった。
13年前、任意で給湯管のライニング工事をした際、2戸だけやらなかった家で事故が起きた反省を踏まえ、また、一部の住戸で配管が階下の天井裏を通っている設計になっていることもあって、居住者全戸に、建物を60年もたせるために、全戸の設備工事を同時に実施することの必要性をPRした。
その結果、横引き管を共用部分にするという規約改正ができた。」
小塚氏のコメント
新しい標準管理規約では、管理組合が専有配管と共用配管を統一的に管理できるようになった。専有部分の工事には、私のマンションの場合、1戸当たり70〜100 万円かかるが、新しい規約に対応していれば、専有部分の改修工事費用も、住宅金融公庫からの借入れの対象になる。
だから規約のチェックが必要。専有部分に積立金を使うには総会決議が必要であり、60年もたせることを管理組合員にPRし、合意形成につなげることが大切。
(2)工事実施に関する質問
○Fさん 個人でリフォーム時に配管の更新をしている場合、費用の清算はしてもらえるのだろうか。
小塚氏のコメント
積立金は返還できないはずなので、積立金を安くしてあげるなどの形で清算すればよい。
ただし、超高級壁クロスとか、インテリアの違いから、各戸の専有部工事費用を査定するのは非常に難しい。
・Jさん Iさんのところと同様に、配管が階下の天井裏を通っているのだが、反対者がいても多数決で実施できるだろうか。
小塚氏のコメント
専有部分に強制的に立ち入ることはできないので、反対者がいる場合は自己責任を明確にするため、
念書をとっておくのがいいだろう。売却された場合も、購入者に引継いでもらうようにしたい。
また、管理組合が専有部分の工事を考える場合は、各自のリフォームとの絡みがあるので、早めにPRしておき、
無駄を省くことを心掛けたい。
馬渕氏のコメント
給水管更新の場合は、配管ルートを変更して自分の階で配管する方法もあるが、排水管の場合は、
天井高との関係で床上配管にはできない。
・Gさん 改修時の費用分担はどう考えたらいいのか。
・小塚氏 専有部分の面積基準で、按分するのが基本。
・Fさん 配管材料としてどういうものがあり、なにが良いのか。
馬渕氏のコメント
今は、排水管にしてもコーティングされており、ジョイントにはネジではないものを使用している。
施工の正確性を求めるのであれば、軽い材料のビニール系塩ビ系が良く、値段も安い。
欠点は、伸縮に対応する処理をしなければならないことと、衝撃に弱いので場所によっては、コーティング鋼管を使用した方が良い。
今の材料は30年間は期待できるし、継ぎ手も良くなってきており、昔のようなことはない。
(3)増圧直結方式の導入について
馬渕氏のコメント
最近は給水管工事の際に、増圧直結方式を導入してシステム変更を考える管理組合が多いが、高架水槽を残すかどうかは、
非常時の飲料確保の問題もあり、意見の別れるところである。 衛生面を重視したタンクレスのシステム導入に関しては、
水道局管理になるので、専有部分を含めた給水管・給湯管の水質管理や耐久性を考えなければシステムの導入は難しい。
また、滅多にないが増圧直結式の場合水不足などで給水制限を受けたとき、高層階で水の出が悪くなる場合がある。 水道本管の水圧が7m以下になるとポンプが自動停止になる設定になっているからだ。
新築当初の設備の基本的な設計は、住戸の面積から人数を割り出して設定するので、余裕を見て大きめになっている。 しかし、年数の経過と共にマンションの人口体系が変わってくると、受水槽が大き過ぎるため水の回転率が悪くなることが多い。その点、増圧式は必要な分しかとらないので非常に衛生的である。また受水槽の跡地利用や受水槽清掃などのメンテナンス費用削減といった利点もある。 以上の事を考慮して、給水システムの変更をされるとよい。
(4)TVのデジタル化対応ほか
・Hさん デジタル化されて、受信障害の問題はどうなるのだろうか。
・古薗氏 2011年7月23日のアナログ放送停止により、テレビ電波が東京タワーでなく、曳船の近くに予定されている 第2東京タワーからの発信に変わるため、影響を受ける近隣の家が変わってくる可能性がある。 この対策を総務省が予算をとってやってくれるかどうか分からないが、最悪、マンションで対策をとらないといけない可能性がある。
・Gさんのマンションは、大部分が法人所有の等価交換のマンションだが、その問題点や対策について、 参加者から意見が交わされた。
5. 総括: フォーラム分科会を振り返って
取り上げ方がこれからの課題になるだろう 村井忠夫
マンションの数だけ並ぶマンション管理の課題、その中から選んだ四つのテーマを取り上げた今度のフォーラム。
結果予想通りでもあり、予想を超えてもいました。
同じテーマで、もう10年早く話し合っていたら、問題はもっとまとめやすかったでしょう。
逆に今から10年たってまた話し合ったら、同じテーマでももう簡単にはまとめられないかもしれません。
年々増えていくマンションの課題、その取り組み方を考える必要の大きさを実感します。
同じ言葉でもマンション次第で意味がまるで違う。
「大規模修繕工事と長期修繕計画」を取り上げて20名が参加した第1グループ。
戸数も16戸から600戸まで、大規模修繕工事もまだのところから、3回目を済ませたところまで様々。
言葉としては同じでも、キーワードの意味にはマンションごとに想像以上の幅があることを浮き彫りにした感じがします。
「マンションの構造と耐震性」を取り上げた第2グループ。
現実的な話題だったのに6人と最小の人数でした。難しくて歯が立たないのに気がかりなこの課題。
厄介でも敬遠できないこういう課題がこれからはさらに増えるはず。
素人でも言葉の意味を具体的に理解できるようなやさしい表現法を用意した話し合いが必要になることを予感します。
この点で専門知識の要らないテーマを扱った第 3 グループが21名と最大の参加者になったのは当然だったでしょう。 しかし難しさのないこのグループの「管理形態の現状と自主管理」というテーマも、実は人の数だけ理解の幅が分かれていたような気がします。 自分の経験幅を超えた語り方を考える必要を感じました。
「設備の時期と内容」を語った第4グループは9名の参加。
テーマに取り付きにくさがあったはずなのに、有益な発想のヒントが多かったと思います。
ドアの向こうに見えたものを確かめるのが課題では
結論は出なかったものの、何かが見えたのも確かです。見えたことを次の機会にぜひ確かめましょう。
(2006.07.17 掲載)