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11.総会を成功させよう

 総会承認決議

大規模修繕工事にかかわる事柄の最終決定は、区分所有法の規定に基づき総会承認決議が必要です。
ここでは、総会の「大規模修繕に関する特記事項」を挙げておきます。

総会の手続きや総会進行の手順は:  「管理組合総会の進め方」

1. 普通決議か特別決議か

昔から、大規模修繕の総会決議は普通決議か特別決議かといった争いがありました。
区分所有法17条第1項がその原因です。そのため、この条項は平成14年に改正されました。

区分所有法17条第1項(平成14年以前)
 共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)は、 区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で決する。

(解説):
 建物の維持保全の観点から定期的に実施する必要のある大規模修繕工事についても、 著しく多額の費用を要する場合には特別多数決議が必要なため、修繕工事の円滑な実施が困難になり、 建物の適正な管理に支障をきたす事例があったことなどから、法17条は平成14年に改正されました。

《改正》平14法140(平成14年12月改正 平成15年6月施行)
(共用部分の変更)
第17条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、 区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で決する。
ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を 及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

(共用部分の管理)
第18条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。
ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3  前条第2項の規定は、第1項本文の場合に準用する。
4  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

(解説):
(注1):上記新旧条文の太字以外の但書やその他の部分は変更になっていません。

(注2):皆さんの管理規約で、旧法17条第1項と同じく「著しく多額の費用を要するものは特別決議とする」規定があった場合、 その規定は改正法施行後もその効力を失うことはなく、自治規範として尊重され有効です。
区分所有法では、法改正に伴って規約に影響を及ぼすときは、その規約を無効とする経過措置が採られますが、 平14法140による法17条第1項の改正では、そのような措置はありません。
参考までにそのような経過措置がとられた過去の例を挙げておきます。

(参考) 昭和58年(1983年)改正のときに採られた経過措置の例(同法附則9条2項)
(規約に関する経過措置)
第9条  この法律の施行の際現に効力を有する規約は、新法第31条又は新法第66条において準用する新法第31条第1項及び 新法第68条の規定により定められたものとみなす。
2  前項の規約で定められた事項で新法に抵触するものは、この法律の施行の日からその効力を失う。

 区分所有法の基本的な考え方

1.大規模修繕工事は、その規模・内容・程度等から、共用部分の変更にあたる工事となり、 「共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴う場合」には、区分所有者及び議決権の 各3/4以上の多数による特別多数決議が必要となります。(但し、規約でその過半数にまで減じることができる)

2.共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴わない場合には、区分所有者及び議決権の 各過半数以上の多数による普通決議で決することが可能です。(但し、規約で別段の定めをすることができる)

2. 普通決議で実施できるケース

1. 形状又は効用の著しい変更を伴わない工事とは鉄部塗装工事、外壁の補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新(取替え)工事、照明設備、TV共聴設備、エレベーター設備の 更新(取替え)工事などです。
建物の構成部位の材質や性能をグレードアップする工事についても、建物の基本的構造部分を 大きく取り壊す等の大きな加工を伴わない工事等については普通決議により実施可能です。

2.普通決議で決することが出来る工事の事例は、平成16年6月3日付の国交省住宅局市街地建築課発行「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」や 平成16年1月公表の「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント」の中に、バリアフリー工事、IT化工事、耐震化改修工事、防犯工事などの工事区分ごとに示されています。

3.店舗比率の高い複合型マンション、旧地権者が複数戸を所有する等価交換型マンション、投資用賃貸オーナーが多いマンションなど、あえて普通決議ででも通さなければ工事ができない マンションも現実に存在します。
そのような場合には、上記の掲載事例が参考になります。

4.普通決議の場合、総会は委任状を含めて区分所有者の過半数以上で成立し、議決はその過半数以上で成立しますから、 実質、全区分所有者の1/4余りの賛成さえ得られれば、法的に合意は成立したことになります。

5.形だけ法律上の正しさが成り立っても、現実に普通決議で大規模修繕工事を実施するのはかなり無理があります。 例え、全区分所有者の過半数を超える賛成を得られたとしても、残りの半数近くが反対しているのが明らかな場合、 理事会は苦情や批判に対して防衛的な対応をとらざるを得ず、上記(3)のような特殊な事情がある場合を除けば、法的な理由付けなど、 所詮、「議論のための議論」でしかありません。

法令上は、普通決議で決することが出来る工事であっても、3/4以上の特別多数決議をクリアする目標を掲げ、 全組合員の合意と協力という住民パワーを武器に、無駄のない合理的な工事を管理組合が一丸となって進めることを具体的に考えることのほうが より現実的ではないでしょうか。

3. 特別多数決議が必要なケース

1. 「共用部分の形状の著しい変更」(法17条第1項)とは、共用部分の外観、構造等を著しく変更する行為で、

@ 既存住棟への集会室・管理事務室等の共用部分の増築、エレベーターの増築など既存建物の外観形状を 大きく変化させる工事

A 戸境壁やスラブの一部を抜いて住戸をつなげる工事、一区画の専有部分に戸境壁を設けて区画するような 工事、既存階段室をエレベーターに改造する工事など、壁・柱・スラブ等の建物の基本構造部を大規模に わたって加工する工事 等

2. 「共用部分の効用の著しい変更」(法17条第1項)とは、共用部分の機能や用途を著しく変更する行為で、

@ 不要となった機械室を廃止して集会所や共用倉庫、賃貸店舗に転用する場合

A 集会所・コミュニティセンター等の既存の付属施設の建替え、増築、大規模な改造 等

3. 「敷地の利用の著しい変更」とは、敷地を共有するマンション(団地)において、敷地表面の利用方法を変更する行為で 敷地内の広場・公園を廃止し、それを駐車場、自転車置場等に変更する場合などが該当します。

4. 団地において建物を棟別管理している場合、各建物の専有部分や共用部分の増築工事は一棟の建物ごとに 決議しますが、一方で、当該増築工事により団地の共有敷地の利用方法が変わることになるので、当該建物 における決議に加え、団地管理組合の集会において「敷地の利用の変更」についての特別多数決議が必要です。
  (法第66条で準用する第17条)

4. 総会を行うタイミング

 2回目以降の大規模修繕は、改修の内容が多岐に亘り金額も大きくなるので、住民の合意形成は1回目とは比較にならないくらい難しくなります。 そのため、臨時総会は2回以上にわたって実施する場合があります。

4.1 改修計画案の説明会(臨時総会の承認) の説明(承認)内容

1) 工事範囲、内容、実施期間
2) 工事予算額(仕様書算出概算額にもとづく)
3) 修繕積立金が不足する場合の不足額の手立て(一時金拠出、借入)
   施工業者の選定方法
4) 工事監理業務の委託及び費用(基本的に調査、設計実施の専門家)

4.2 最終業者内定、契約前の総会の説明(承認)内容

1)最終選定業者、工事金額承認
選定経過はできるだけ詳細に。
工事金額は、見積金額に予備費を加算した金額で承認を。
下地補修費の精算増額、追加工事の事態への対応も考慮して。