ホーム > 大規模修繕目次 >1. 悪質コンサルタントの実態 > 【次頁】 2.談合と管理会社主導の悪質事例

1. 悪質コンサルタントの実態
    〜今、マンション改修業界で何が起きているのか〜

クローズアップされた悪質コンサルタントの実態・国交省も注意喚起

管理組合から委託を請けた代理人の地位を悪用し、工事会社からバックマージンを取る悪質コンサルタントや管理会社の存在は、業界内では半ば常識でした。

2016年から2017年にかけて、そのことが社会問題としてクローズアップされてきました。
その流れを時系列で見ていきます。

(1) 2016年11月30日 マンションリフォーム技術協会が問題提起

 工事会社からバックマージンを取る不適切コンサルタントの存在について、 一般社団法人マンションリフォーム技術協会は2016年11月30日発行の会報誌第25号で提言を発表。

 「不適切コンサルタント問題への提言」
マンション改修業界の健全な発展のために

 現在のマンション改修業界は、計画的・組織的に工事会社からバックマージンを受け取る不適切コンサル タントが横行し混乱状態にあり、ユーザーであるマンション管理組合に対して経済的な損失を与え、工事の 品質にも影響している場合がある。長年の不況を背景に、営利最優先でマンション改修業界に新規参入して きたコンサルタント等の職業倫理に欠けた営業活動が一因となっており、 具体的には次のような弊害が生じている。

  • @割高な工事費
  • A過剰な工事内容
  • B不明朗な工事発注
  • C甘い工事監理
  • D不適切コンサルタントの拡大再生産
  • E真面目なコンサルタントの減少
  • F業界全体の信用失墜

 ここまで不適切コンサルタントが蔓延する最大の理由は、 彼らが管理組合に提示するコンサルタント費用の見積が異常に安いからです。

それは見かけだけであり、巡り巡って管理組合に跳ね返り、結局は高い買い物になるのですが、 管理組合は競争見積で、より安い見積金額を提示したコンサルタントをその場限りで選ぶ事が多く、 それが不適切コンサルタントの付け目になります。

不適切コンサルタントはバックマージンにより業務委託料を安くすることが出来ます。
通常の半額〜1/3の業務委託料でも工事費の3%のバックマージンがあれば十分おつりが来るでしょう。 実際にはそれ以上と言われています。

本来、コンサルタントである設計事務所は、施主(管理組合)の依頼により施主のために設計し、 施工会社との間に立って施主の適正な権利を守り、公明正大に業務を進めるのが仕事です。 工事業者からマージンを受け取るなどと言うのはあってはならない事です。

このようなマンション改修業界の実態に対し、 管理組合の正当な利益と業界の健全な発展のために問題提起・啓発し、改善に尽力したい。 (marta 個人会員一同)

※ 「マンションリフォーム技術協会(Marta)」は、設計コンサルタント、工事会社、メーカーが会員となっている一般社団法人です。 この提言が掲載されている会報誌第25号が協会ホームページにてPDF(11.7MB)で公開されています。 ( URL: http://www.marta.jp/ )

※ 同協会の発表後、2016年12月5日付「マンション管理新聞」がこの提言の要旨を記事で掲載

(2) 2017年1月27日 国土交通省通達 国住マ第41号

 国土交通省は従来からマンション改修業界の一部で利益相反行為が横行していることを危惧して、 「マンション管理の適正化に関する指針(改正附則平成28年3月14日国土交通省告示第490号)」 において「工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要がある」と明文化しました。   「マンション管理適正化指針(平成28年度改正版)」

そうした中、マンションリフォーム技術協会会報の掲載記事がきっかけとなって、 この不適切コンサルタント問題が業界内外で広く注目され、 同省への問い合わせ等も相次いだことから、関係各方面に事情聴取が行われた結果、 2017年1月27日付で『設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について』 が同省の住宅局市街地建築課長並びに土地・建設産業局建設市場整備課長名によりマンション関係団体宛に通知されました。

通知では、工事の発注等の適正化については、 マンションの大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の活用を促進することが有効として、 各団体または所属会員を通じて管理組合に対する『別添の内容』(下記)の周知、協力を呼びかけています。

 国土交通省(通知)  設計コンサルタントを活用した
    マンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について

〜管理組合・区分所有者の皆様へ〜

1.現状の課題
 マンションの大規模修繕工事等において、診断、設計、工事監理等を担う設計コンサルタントが技術資料を作成し、 管理組合の意思決定をサポートする、いわゆる「設計監理方式」は、 適切な情報を基に透明な形で施工会社の選定を進めていくためにも有効であるとされています。

 しかしながら、別紙1 の通り、発注者たる管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されています。

2.課題解決に向けた取組の実現
 (前略)設計監理方式を採用する場合は、 設計コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場を保つ形で施工会社の選定が公正に行われるよう注意する必要があります。 そのような観点に留意した取組事例として、別紙2 のような例も見受けられます。
 (中略)このような取組みを参考に、適切に行っていただくことが、 マンション管理の適正化を図っていく上で有効であると考えられます。

3.相談窓口の活用
 (前略)
 〈相談窓口〉
 〇(公財)住宅リフォーム・紛争処理センター  https://www.chord.or.jp/reform/consult.html
    (電話番号)住まいるダイヤル・・・0570(016)100
 〇(公財)マンション管理センター  http://www.mankan.or.jp/06 consult/tel.html
   (電話番号)建物・設備の維持管理のご相談・・・03(3222)1519

別紙1 〈指摘されている事例〉
最も安価な見積金額を提示したコンサルタントに業務を依頼したが、 実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントの職員ではなく、 施工会社の社員であったことが発覚した。 コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社を内定していたが、 発覚が契約前だったため、契約は見送られた。 なお、同コンサルタントのパンフレットには技術者が多数所属していると書かれていたが、 実質的には技術者でない社長と事務員一人だけの会社であった。

一部のコンサルタントが、 自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、 過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、 結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している。

(他1 事例省略)

 

別紙2 〈取組事例〉
○利益相反的な提案をしてきた設計会社を除外して選定した事例
管理組合において、公開資料に記載の実績等を基に3社に見積りを依頼し、設計会社を決定。 3社のうち2社は、設計費は安価だったものの、工事とセットでの契約が条件となっており、 かえって高額になるため、選定されなかったもの。

 管理組合において、新聞・雑誌・経験上の知識などの情報を基に15 社に見積りを依頼し、 うち7社から見積りが提出され、金額・内容・実績等を勘案し、上位2社に絞り込んだ。 工事項目の絞り込みなど工事費の削減に向けた提案を行った施工会社を管理組合が決定。

(他2事例省略)

 通達の全文のダウンロードはこちら  「2017年1月27日 国土交通省通達」 (pdf 127kB)

(3) 2017年2月4日号 週刊ダイヤモンド

業者にだまされない
マンション管理と大規模修繕

リベートから談合まで
知られざる大規模修繕の闇

マンションの大規模修繕は、業者間で談合が横行し、 裏でリベートが飛び交う不透明な業界。

独占禁止法でもカバーし切れない実態について、 国土交通省でも調査を開始した。

・・・として、独自取材記事を交えて掲載しています。

(4) 2017年4月25日 毎日新聞

「修繕リベート横行」

分譲マンションで十数年ごとに実施される大規模修繕工事。 専門知識を持たない管理組合のため、 管理会社や設計事務所がコンサルタントとして支援することも多い。

ところが悪質なコンサルが施工業者にリベートを要求するケースが相次いでいる。 工事費の高騰や手抜き工事につながるが、多くの住民は気付いていない。 リベートは工事費の3〜20%に上るといい、ある施工業者の元社員は「受注していない管理会社が『場所代』として要求することもある」と話す。

記事の内容はこちら
https://mainichi.jp/articles/20170420/k00/00m/040/162000c

(5) 2017年5月29日号 AERA

「修繕積立金が巻き上げられる

住民でつくる管理組合は、専門知識を持たない。 大規模修繕の際は、設計事務所などコンサルタントに頼る。 ところが悪質コンサルが跋扈(ばっこ)している。

・・・として、独自取材記事を掲載

(6) 2017年9月10日 マンションNPOのセミナー発表事例

「大規模改修で失敗しないために」

2017年9月10日 マンションNPOセミナー開催

マンションNPOは改修業界で起きている事態についての危機感から、 セミナーを開きました。

3人の建築士が、現場で直面した事例を紹介。 50名を超える参加者が真剣に耳を傾けました。詳細は次頁
「2.談合と管理会社主導の悪質事例」

(7) 2017年10月19日 NHK クローズアップ現代

2017年10月19日(木)22:00〜22:25

マンション住民
「許せないですね。マンションを食い物にしてる。」 「ちょろまかすというか、完全になめきってますよね。」

一体何が起きているのか。トラブルの詳しい実態に迫るため、 複数の関係者に取材すると、驚きの事実が浮かび上がってきました。

元設計コンサルタント
「管理組合がいくら積立金を持っているか、当然握っております。 その金額を使い切るほど、リベート(バックマージン)は増えますから、 なるべく工事種目は増やします。お客さんは素人ばっかり。 『これをやらなかったら大変ですよ』と言われたら、 従うしか、一般の住民はないわけですね。」

追跡!マンション修繕工事の闇
狙われるあなたの積立金

あなたのマンションも? 狙われる修繕積立金
「現金ですね。領収書のない現金お渡しします。あの人ら、うまいこと考えてますよ。お金の取り方、上手です。」

私たちがマンションを修繕するためにためている積立金が悪徳業者に狙われているといいます。

コツコツためた、あなたの積立金が知らぬ間に奪われているかもしれない…分譲マンションで行われる大規模修繕工事。 そのウラ側で悪質な設計コンサルタントが工事業者に巨額のバックマージンを要求、 修繕工事に3億円かかった場合、3,000万円〜6,000万円に及ぶこともあるという。

マンション老朽化時代、修繕待ったなしの物件が急増する中、多くの人が被害に遭っている可能性も? 対策を考える。

番組の内容はこちら
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4049/index.html

(2018年1月25日掲載)