3. 応急危険度判定
(東日本大震災の6ケ月後、2011年10月16日開催のフォーラム「管理組合の防災を考える」発表)
3.1 応急危険度の判定基準(RC)
1.外観調査
:下記に該当する場合、「危険」と判定し調査を終了
1. 建築物全体又は一部の崩壊・落階
2. 基礎の著しい破壊、上部構造との著しいずれ
3. 建築物全体又は一部の著しい傾斜
4. その他一見して危険と判断される場合
2.隣接建築物・周辺地盤等及び構造躯体に関する危険度
判定(1)
Aランク | Bランク | Cランク | |
損傷度V以上の損傷部材の有無 | 1. 無し | 2. 有り |
判定(2)
Aランク | Bランク | Cランク | |
隣接建築物・周辺地盤の破壊による危険 | 1.危険無し | 2.不明確 | 3.危険有り |
地盤の破壊による建築物全体の沈下 | 1. 0.2mm以下 | 2. 0.2mm〜1.0mm | 3. 1.0mm超 |
不動沈下による建築物全体の傾斜 | 1. 1/60以下 | 2. 1/60〜1/30 | 3. 1/30超 |
損傷度Xの柱本数/調査柱本数 | 1. 1%以下 | 2. 1%〜10% | 3. 10%超 |
損傷度Wの柱本数/調査柱本数 | 1. 10%以下 | 2. 10%〜20% | 3. 20%超 |
判定(2) | 1. 調査済 全部Aランクの場合 |
2. 要注意 Bランクが1の場合 |
3. 危険 Cランクが1以上又はBランクが2以上 |
危険度の判定 判定(1)と判定(2)のうち大きな方の危険度で判定する |
1. 調査済 |
2. 要注意 |
3. 危険 |
3.落下危険物・転倒危険物に関する危険度
Aランク | Bランク | Cランク | |
窓枠・窓ガラス | 1.ほとんど無被害 | 2.歪み、ひび割れ | 3.落下の危険有り |
外装材 湿式の場合 | 1.ほとんど無被害 | 2.部分的なひび割れ、隙間 | 3.顕著なひび割れ、剥離 |
外装材 乾式の場合 | 1.目地の亀裂程度 | 2.板に隙間が見られる | 3.顕著な目地ずれ、板破損 |
看板・機器類 | 1.傾斜無し | 2.わずかな傾斜 | 3.落下の危険あり |
屋外階段 | 1.傾斜無し | 2.わずかな傾斜 | 3.明瞭な傾斜 |
その他 | 1.安全 | 2.要注意 | 3.危険 |
危険度の判定 | 1.調査済 全部Aランクの場合 |
2.要注意 Bランクが1以上ある場合 |
3.危険 Cランクが1以上ある場合 |
総合判定
調査の1で危険と判定された場合は危険、それ以外は調査の2と3の大きい方の危険度で判定する。
【構造別危険度判定の基準】
構造 | 調査済(緑色) |
要注意(黄色) |
危険(赤色) |
木造 | ・Aランクのみ | ・Bランク有り | ・Cランク有り |
S造 | ・Aランクのみ | ・構造躯体等 Bランク<4個所 ・落下物等 Bランク有り |
・Cランク有り ・構造躯体等 Bランク≧4個所 |
RC造 | ・Aランクのみ | ・構造躯体等 Bランク<2個所 ・落下物等 Bランク有り |
・Cランク有り ・構造躯体等 Bランク≧2個所 |
3.2 損傷度の判定基準
RC,SRC部材の破壊の程度をT,U,V,W,Xの5ランクに分類
損傷ランク | 外壁全般の損傷内容 | 構造体、耐力壁、柱梁の損傷内容 | ||
T | 近寄らないと見えにくい程度のひび割れ(ひび割れ幅0.2mm以下) | 追加調査不要 | 同左 | 追加調査不要 |
U | 肉眼ではっきりと見える程度のひび割れ(ひび割れ幅0.2〜1mm以下) | 同左 | 追加調査が必要 | |
V | 比較的大きなひび割れが生じているが、コンクリートの剥落は、極わずか(ひび割れ幅1〜2mm以下) | 追加調査が必要 | 同左 | |
W | 大きなひび割れ(2mmを超える)が多数生じ、コンクリートの剥落も激しく、鉄筋がかなり露出している。 | 同左 | ||
X | 鉄筋が坐屈、内部コンクリートも崩れ落ち、一見して柱(耐力壁)の高さ方向の変形が生じていることがわかる、沈下や傾斜が見られ、鉄筋の破断が生じている場合もある。 | 同左 |
(注)
被災建築物応急危険度判定は、地震被害を受けた鉄筋コンクリート造のラーメン構造または壁式構造の建築物の規模が10階程度、または高さ30m程度までです。
高層建築物の被害認定の開始は相当遅れることが予想されています。
高層建築物は、 再度被害を受けた場合の社会的影響度が大きい、 柱が高軸力となっている可能性がある、 転倒モーメントによる柱軸力の増大等、高層専門の構造建築士でなければ危険度の判定は無理なので、判定士が限られていることと、判定にも相当の日数がかかることなど、場合によっては、地震発生後の1カ月近くもしくはそれ以上になってようやく判定が開始される事態も予想されています。
その間、住民は住んでいいものかどうかの判断が出来ないということになります。
また鉄筋コンクリート造以外のコンクリート系建築物( 鉄骨鉄筋コンクリート造、 プレキャスト鉄筋コンクリート造、 補強コンクリートブロック造、プレストレストコンクリート造 等)に応急危険度判定を適用する場合には、その構造独特の損傷状況を考慮した対応が必要です。