3.改正旅館業法の概要
民泊新法を検討していく過程で、従来の宿泊業法も同時に見直され、 今日では根拠が薄くなった規制内容が大幅に削除されました。
2018年(平成30年)6月15日、改正宿泊業法は民泊新法と同時施行です。
目次
1 旅館業の定義
2 営業には許可が必要
3 環境衛生監視員が立ち入り検査を行う
4 宿泊させる義務がある(宿泊拒否の制限・契約締結義務)
5 宿泊者名簿の作成・保存義務
6 改善命令、許可取消又は停止
7 旅館業法に違反した場合の罰則
8 旅館業とアパート等の貸室業との違い
9 旅館業の種別
10 旅館業法に関連する厚生労働省通達
11 旅館業法運用上の疑義について
12 宿泊者名簿への記載等の徹底について
13 旅館業法の改正内容
改正旅館業法(平成29年法律第84号)の概要
旅館業法(昭和23年法律第138号)は平成29年法律第84号で改正
平成30年12月15日公布、平成30年6月15日施行(住宅宿泊事業法の施行日に併せて同日施行)
1 旅館業の定義
「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう(第2条第1項)
「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう(第2条第2項)
「宿泊」とは寝具を使用して施設を利用することをいう。(第2条)
判断要素 | 旅館業営業に該当する | 旅館業営業に該当しない |
---|---|---|
@宿泊料を徴収しているか | [宿泊料を徴収している] |
[宿泊料を徴収していない] |
A社会性の有無 | [社会性があると判断される例] |
[社会性がないと判断される例] |
※この「社会性」の用語は旅館業法の法律の条文に直接出てくる用語ではなく、 厚生労働省が旅館業法に規定された内容の解釈・運用上の説明で示してきたものです。 財務省・税法でいう「事業性」と同じですが、加えて公衆衛生又は善良の風俗の維持の観点から「社会性」と表現しています。 | ||
B継続反復性の有無 | [継続反復性があると判断] |
[継続反復性がないと判断] |
C生活の本拠か否か | [生活の本拠でないと判断] |
[生活の本拠と判断] |
2 営業には許可が必要
旅館業を経営するものは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受ける必要がある。(第3条)
許可申請施設の設置場所の周囲100mの区域内に学校教育法第一条学校、児童福祉法第七条第一項施設、社会教育法第二条施設
などがある場合は許可されない。(第3条3項)
旅館業の許可は、旅館業法施行令で定める構造設備基準に従っていなければならない。
延床面積が33u以上(宿泊者数が10名未満の場合は1人あたり3.3u)、
適当な規模の入浴設備が必要などの基準があります。
旅館業の運営は、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従っていなければならない。(第4条)
その他、建築基準法では、旅館・ホテルは原則として第一種低層住居専用地域等の住居専用地域では立地ができない。 また、外壁や間仕切り壁、建物全体の耐火構造要求の規制、火災時における安全な避難経路を確保するという視点から、 廊下の幅、直通階段までの距離、非常の直通階段の設置や避難階段の設置、排煙設備、非常用照明、内装制限の規定がある。 さらに、日常的な安全性の確保という視点からは、屋内階段の寸法等の規制、及びスプリンクラー、居室、火気使用室についての規定がある。
3 立ち入り検査がある
(1)旅館業の施設が衛生基準に従って運営されているかどうか、 都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)は報告を求め、立ち入り検査をすることができる。(第7条) この業務は環境衛生監視員が行う。(平成30年1月30日厚生労働省令第9号)
(2)無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査
都道府県知事は当該職員に、旅館業の施設に立ち入り、その構造設備若しくはこれに関する書類を検査させ、
若しくは関係者に質問させることができる。(第7条第2項)※H29改正旅館業法で追加
4 宿泊させる義務がある(宿泊拒否の制限・契約締結義務)
旅館業者は、伝染性の疾病にかかっている者や風紀を乱すおそれのある者等を除き宿泊を拒むことはできない。(第5条)
(この宿泊拒否の制限については、既存のホテル・旅館について今日的意義が薄れているとして、
不当な差別的取扱いがなされないことに留意しつつ、合理的なものとなるよう改訂が予定されていましたが、平成29年改正では未改訂となっています。)
5 宿泊者名簿の作成・保存義務
旅館業者は、宿泊者名簿を作成し3年間保存しておかなければならない。(法第6条・旅館業法施行規則第4条の2)
宿泊者名簿には宿泊者の氏名、住所、職業その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、
都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない。
宿泊者が外国人の場合は、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存しておかなければならない。
旅券の写しをもって当該宿泊者に関する宿泊者名簿の氏名、国籍及び旅券番号の記載に代替しても差し支えない。
(平成17年1月24日厚生労働省令第7号「旅館業法施行規則の一部を改正する省令」平成17年4月1日施行)
この省令は感染症患者の感染経路を調査するパンデミック対策からの要請、及び、 政府の国際テロ対策推進本部「テロの未然防止に関する行動計画」において、その実施を求められたもので、 旅館業法では感染症対策公衆衛生とテロ対策治安維持の両面から宿泊者の本人確認を対面で行うことが規定されています。
宿泊者名簿は、 「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」第4条1項に基づき、 電磁的記録による保存ができる。
6 改善命令、許可取消又は停止
都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)は構造設備基準又は衛生基準に反するときは改善命令、 許可の取消又は営業の停止を命ずることができる。(第8条)
7 旅館業法に違反した場合の罰則
許可を受けないで旅館業を営んだ者は、6カ月以下の懲役又は100万円以下の罰金、又は併科に処する。(3万円以下から100万円以下に、更に「又は罰金刑と懲役刑との併科」に改正)(第10条)
第7条の規定による報告をせず若しくは虚偽の報告をし、又は当該職員の検査を拒み、妨げ、忌避し、若しくは質問に対し答弁をせず、 若しくは虚偽の答弁をした者、又は報告をせず虚偽の報告をした者は、50万円以下の罰金に処する。(5千円以下から50万円以下に改正)(第11条)
8 旅館業とアパート等の貸室業との違い
@施設の管理・経営形態を総体的にみて、
宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること
A施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないこと
上記2点が該当する場合が旅館業、該当しない場合が貸室業です。
9. 旅館業の種別
旅館業には「旅館・ホテル営業」、「簡易宿所営業」及び「下宿営業」の3種があります。
改正前は「ホテル営業」(第2条第2項)、「旅館営業」(第2条第3項)とそれぞれ分かれていましたが、
近年、旅館・ホテルの区別がつかなくなってきていることから、
改正法で「旅館・ホテル営業」(第2条第2項)に営業許可が一本化され、
第2条第3項は削除されました。
(1) 「旅館・ホテル営業」(第2条第2項)
改正前の「(ホテルは洋式、旅館は和式)の構造及び設備を主とする施設を設け」は削除されました。
@ ホテルは部屋数が10室以上、1室の床面積が9u以上、旅館は部屋の数が5室以上、1室の床面積が7u以上の基準がありましたが、
最低客室数(ホテル営業:10室、旅館営業:5室)の基準は廃止されました。
A 洋室の構造設備の要件の廃止
洋室の構造設備の要件(寝具は洋式であること、出入口・窓に鍵をかけることができること、
客室と他の客室等との境が壁造りであること)の規定は廃止されました。
B 1客室の最低床面積の緩和
1客室の最低床面積(ホテル営業:洋式客室9u以上、旅館営業:和式客室7u以上)を
、7u以上(寝台を置く客室にあっては9u以上)と改正されました。
C 玄関帳場等の基準の緩和
厚生労働省令で定める基準を満たす設備(ビデオカメラによる顔認証による本人確認機能等のICT設備を想定)を、
玄関帳場等に代替する機能を有する設備として認めることとする。(旅館業法施行令第3条第2項)
D 暖房の設備基準の廃止
ホテル営業の施設における暖房の設置要件を廃止する。
E 便所の設備基準の緩和
適当な数の便所を有すればよいこととする。
(2) 簡易宿所営業(第2条第4項)
宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けて行う営業をいいます。
ゲストハウス、民宿、ベッドハウス、山小屋、スキー小屋、ユースホステル、
カプセルホテルが該当します。
客室の延床面積は33u以上であること(10人未満の場合は1人あたり3.3u以上)、 入浴設備や洗面設備、適度な数のトイレがあることなどの規定があります。 簡易宿所は宿泊する場所を多数人で共用する施設として想定されています。
簡易宿所に求められる義務規定
(1)本人対面確認のための帳場の設置義務
(2)「都市計画法」の用途地域で旅館業法を営業できない区域制限がある。
(3)消防法で自動火災報知器、誘導灯の設置義務がある。
(4)各自治体の旅館業施行条例:東京都、大阪府の条例では1〜5名の定員の施設でもトイレは2つ設置しなければならない。
他に、地域に対する迷惑行為、騒音、ごみなどのトラブルに対する責任の所在を明らかにすること。
民宿
民宿は、旅館業法の簡易宿所で、営業形態としては「専業」「兼業」「季節営業」があり、
営業を行う地域によって、「観光地民宿」「スキー民宿」「海水浴民宿」「釣り宿」「合宿向け民宿」「工事関係者向け民宿」などが代表的です。
民宿には営業日数の制限はありません。
農家民宿
農家民宿(農林漁業体験民宿)は、旅館業法上の簡易宿所です。
農家民宿制度は、グリーン・ツーリズムを進める農林水産省の働きかけで実態に合わせる形で、
平成15,16,19年と数度にわたって旅館業法施行規則が改正されてきました。
その改正内容は、住宅を宿泊に使用する制度として旅館業法のみならず、建築基準法、消防法、道路運送法、
食品衛生法その他の関連法令に及んでいます。
農家民宿は住宅を宿泊に使用する制度として事実上、民泊制度のさきがけともなった制度です。 以下、その改正内容について経緯を挙げておきます。
平成6年制定の「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」(略称「農山漁村余暇法」)に基づき、 農林漁村体験と宿泊を一体として進めるグリーン・ツーリズム(都市と農山漁村における交流事業)として、 簡易宿所営業における33u以上の客室面積要件が撤廃されました。(平成15年改正旅館業法施行規則第5条第1項4号)。
客室延床面積33u(10坪)以上とは、畳に換算すると20畳以上、つまり、8畳間2部屋と6畳間1部屋、6畳間4部屋以上の客室が確保できなければ、 簡易宿所営業の許可が下りませんでしたが、農家民宿にあっては空部屋1部屋からの開業が可能となりました。
また、農家民宿が行う送迎輸送等を道路運送法の許可対象外として明確化されました。(H15、H23改正)
農家民宿が行う農業体験サービスを旅行業法の対象外として明確化(H15)
農家民宿における消防法の消防用設備等の設置基準の柔軟な対応(H16、H19改正)
具体的には通常の民宿と同じ消防用設備等の設置を義務付けていたものが、地元の消防長又は消防署長の判断により、誘導灯等を設置しないことが可能となっています。
更に、囲炉裏や茅葺き屋根のある住宅の場合、火災時の延焼を防ぐ内装を義務付けられていましたが、小規模で避難上支障がなければ、 新たな内装制限は適用しないことを明確化(建築基準法上の取扱いの明確化(H17))されました。 建築基準法上の「旅館」に該当しないので、「一般住宅扱い」となり、「新たな内装制限が適用されない」
余暇法登録の対象である農林漁業体験民宿業者の範囲を農林漁業者又はその組織する団体に限定していたものを、 登録対象を「農林漁業者又はその組織する団体」以外の者が運営するものにも拡大(農業生産法人の業務として農地法施行規則に民宿経営等を追加(H17))
更に、食品衛生法関係では、農家民宿において飲食物を提供する場合には、飲食店営業許可証が必要ですが、その際、 都道府県等が条例で定める通常の飲食店営業と同じ許可基準を適用(営業専用の調理施設必要等)していたものを、 既存の家屋で農家民宿を行う場合には、一回に提供する食事数や講習会の受講等により家族兼用の調理場を認める等施設基準の緩和が可能であることから、 厚生省、農水省から都道府県等に対し条例の改正の検討や弾力的な運用について要請をしています。(H17)
また、構造改革特区による規制緩和として、特区計画の認定を受けた地方自治体内においては、 農家民宿等を営む農業者が、自ら生産した米を原料として濁酒を製造する場合、 最低製造数量(6キロリットル)を適用しない農家民宿等による濁酒の製造事業の特区(どぶろく特区)(H15)も開始されています。
イベント民宿
イベント民宿は、年1回(2〜3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、
開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの。
「反復継続性」がなく「業」に当たらないと判断されるため、旅館業に該当せず、旅館業法は適用されません。
宿主(オーナー)がイベント民宿だと主張しても、そのことを自治体の要請文書などで証明できない場合には、違法民泊として扱われます。
ウイークリーマンション
ウイークリーマンションは旅館業法の適用対象で、単に使用期間が1ケ月未満という条件だけではなく、
昭和63年1月29日厚生省生活衛生局指導課長通知によって、「室内の清掃・寝具類の管理等、施設の衛生管理の基本的な部分はなお営業者の責任において確保されており、
施設の衛生上の維持管理責任は、社会通念上、営業者にあるとみられる」ことも旅館業法の適用対象とした理由になっています。
旅館業法の適用を逃れるために定期借家契約を結んで使用期間1ケ月未満のレンタルビジネス(民泊)をするのは違法で、簡易宿所営業の許可が必要です。 借地借家法第40条(定期建物賃貸借)に「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には(定期借家契約は)適用しない」との規定があります。
マンスリーマンション
マンスリーマンションは、使用期間が1ケ月を超えること、利用者が生活の本拠として利用していること、施設の衛生管理の基本的な部分は利用者にあることをすべて満たしたことを前提に、
旅館業法ではなく、借地借家法第三章の「定期建物賃貸借」(平成12年の借地借家法改正によって創設された手続きで「法定更新」が適用されない)が実務で主流となっています。
(3) 下宿営業(第2条第5項)
1ケ月以上の期間を単位として宿泊させる営業をいいます。
[通達;昭和61年3月31日付厚生省指導課長通知]
○下宿営業の範囲について (昭和六一年三月三一日) (衛指第四四号)
(各都道府県各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)
旅館業法(昭和二三年法律第一三八号。以下「法」という。)第二条第五項に規定する「下宿営業」については、 昭和三二年八月三日衛発第六四九号公衆衛生局長通知第一(四)により、「なお、いわゆるアパート、 間貸し等のように一時的又は比較的短期間の止宿のための施設と通常目されないものは法第二条第五項の下宿には該当しないものであること」として、 下宿営業に該当するか否かの判断についての例示がなされている。
しかしながら、これまでの運用において下宿営業と貸室業との区別が必ずしも十分ではなかつたため、 本来下宿営業の許可の対象とならない施設についても許可が求められている事例も見受けられるとの指摘がなされている。
「下宿営業」とは、法第二条第五項に定義するとおり、「人を宿泊させる営業」であつて、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けるものをいうが、 「人を宿泊させる営業」という旅館業の営業の本質においては、他の旅館業の営業と相違はないものである。
ここで、「人を宿泊させる営業」とは、アパート、間貸し等の貸室業との関連でみると、
一 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること。
二 施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業しているものであること。
の二点を条件として有するものであり、これは下宿営業についても同様である。
このような観点からみると、例えば、いわゆる学生下宿は、部屋の管理が専ら学生に委ねられており、しかも、
学生がそこに生活の本拠を置くことを予定していることから、営業の許可の対象とはならないものである。
今後とも、以上の観点から、許可の要否につき判断されたい。
(付記)
一について
法は、営業者がその営業施設の構造設備についてのみならず、
施設の管理面についても責任を負うことを前提として必要な規制を行つている。
このため、法第四条は、営業者に宿泊者の衛生に必要な措置を講じることを義務づけており、
施設についての衛生上の維持管理は営業者において行うことを予定している。
この点において、室内の管理が間借り人に全面的に委ねられている間貸し等と根本的に異なるのである。
旅館業においては、その営業施設が社会性を有する形で、 一般大衆に利用されるものであるからこそ、公衆衛生又は善良の風俗の維持の観点から必要な規制を行うのである。 従つて、宿泊者に生活の本拠を与えることを予定したアパートのような形の営業形態は、個々人の生活の集積に過ぎず、 少なくとも現行の旅館業法による規制は予定しないものである。
なお、いわゆる「ホテル住まい」として、他に生活の本拠を有さない者が、長期間ホテル等に滞在する場合等においては、 その者は、そこに生活の本拠があると認められることもあろうが、営業全体としてはそうした形態を予定していない場合、当然、前記二に該当することとなる。
10. 旅館業法に関連する厚生労働省通達
旅館業法の適用判断基準及び宿泊者名簿について、下記の厚生省通知が出ています。
○ 下宿営業の範囲について
(昭和61年3月31日衛指第44号 各都道府県各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)
○ 旅館業法営業上の疑義について
(昭和63年1月29日衛指第23号 各都道府県・各政令市・各特別区衛生部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)
○ 宿泊者名簿への記載等の徹底について
(平成17年2月9日健発第0209001号 都道府県知事・政令市市長・特別区区長宛て厚生労働省健康局長通知
○ 「旅館業における衛生等管理要領」の改正について
(平成29年12月15日生食発1215第2号 都道府県知事・各政令市市長・特別区区長宛て厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知)
(本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的な助言に当たるもの)
11. 旅館業法運用上の疑義について
[通達;昭和63年1月29日付厚生省生活衛生局指導課長通知]
○旅館業法運用上の疑義について (昭和六三年一月二九日) (衛指第二三号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生部(局)長あて厚生省生活衛生局指導課長通知)
標記について、東京都衛生局環境衛生部長より照会〔別添1〕があり、〔別添2〕のとおり回答したので、通知する。
〔別添1〕
(昭和六二年一二月二五日 六二衛環第七二七号)
(厚生省生活衛生局指導課長あて東京都衛生局環境衛生部長照会)
近年、社会需要の多様化に伴つて、新たな営業形態を持つ施設が出現しており、本件もいわゆるウィークリーマンションと称する短期宿泊賃貸マンションとでもいうべき施設で、 旅館業と貸室業の中間的な営業形態をもつものと考えられます。
旅館業法の運用にあたつては、昭和六十一年三月三十一日付衛指第四四号厚生省生活衛生局指導課長通知が示されているところですが、 本件の旅館業法上の取り扱いについて疑義が生じたため、至急ご回答願います。
(施設の状況及び管理等)
1 施設は既存のアパート、マンションの空室又は専用に建築した室を賃貸する。
2 利用日数の単位は、一週以上とし最長制限の定めはないが、実態としては一〜二週間の短期利用者が大半である。
3 利用者は手付金を支払つて予約し、入居時までに物品保証金及び利用料等を支払い賃貸契約を締結した上、入居する。
4 客室には日常生活に必要な設備(調理設備、冷蔵庫、テレビ、浴室、寝具類等)が完備している。
5 室内への電話器、家具等の持ち込みは禁止している。
6 利用期間中における室内の清掃等の維持管理は、全て利用者が行う。
7 シーツ、枕カバーの取り換え、浴衣の提供等リネンサービスは行わない。
なお、利用者からの依頼があれば請け負い会社を斡旋する。
8 食事は提供しない。
9 光熱水費は各個メーターで契約解除時に別途清算する。
10 本施設の利用者は、主として会社の短期出張者、研修生、受験生等である。
(質問点)
昭和六十一年三月三十一日付、厚生省指導課長通知によれば、旅館業法にいう「人を宿泊させる営業」とは、
1 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあるものと社会通念上認められること
2 施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として営業しているものであること
の二点を条件として有するものであるとされている。
本施設を、この二条件に照らして判断すると、
1 契約上、利用期間中の室内の清掃等の維持管理は利用者が行うこととされているが、一〜二週間程度という一月に満たない短期間のうちに、
会社の出張、研修、受験等の特定の目的で不特定多数の利用者が反復して利用するものであること等、施設の管理・経営形態を総体的にみると、
利用者交替時の室内の清掃・寝具類の管理等、
施設の衛生管理の基本的な部分はなお営業者の責任において確保されていると見るべきものであることから、本施設の衛生上の維持管理責任は、
社会通念上、営業者にあるとみられる。
2 また、生活の本拠の有無についても、利用の期間、目的等からみて、本施設には利用者の生活の本拠はないとみられる。
前記より、本施設を、旅館業法の適用対象施設として取り扱うのが相当と考えるが如何。
〔別添2〕
(昭和六三年一月二九日 衛指第二三号) (東京都衛生局環境衛生部長あて厚生省生活衛生局指導課長回答)
昭和六十二年十二月二十五日付け六二衛環環第七二七号をもつて照会のあつた件について、左記のとおり回答する。
記
近年、いわゆるウィークリーマンションをはじめとして、 新しい形態の旅館業類似営業がみられるが、これらが旅館業法にいう「人を宿泊させる営業」に該当するか否かは、 公衆衛生その他旅館業法の目的に照らし、総合的に判断すべきものであることはいうまでもない。
照会の施設については、貴見の通り、旅館業法の適用対象施設として取り扱つてさしつかえない。
12. 宿泊者名簿への記載等の徹底について
平成17年2月9日健発第0209001号
都道府県知事・政令市市長・特別区区長宛て厚生労働省健康局長通知
旅館業法施行規則の一部を改正する省令(以下「改正規則」という。)が、平成17年1月
24日厚生労働省令第7号をもって公布され、平成17年4月1日から施行されることとなった。
貴職におかれては、下記の内容を十分御了知の上、
貴管内の関係団体及び旅館業者等への周知を図るとともに、その実施に遺漏なきを期されたい。
記
1 改正の背景
旅館業法(昭和23年法律第138号)第6条に規定する宿泊者名簿については、 感染症が発生し又は感染症患者が旅館等に宿泊した場合において、 その感染経路を調査すること等を目的として、営業者に対して、宿泊者の氏名、住所、 職業その他の事項を記載させることとしているところであるが、 当該旅館等に外国人が宿泊していたような場合、当該外国人の身元を後日確認するためには、 現在の旅館業法で規定されている事項のみでは特定が不十分となるおそれがあった。
また、近年の諸外国におけるテロ事案の発生を受けて、 我が国内においてもテロ発生に対する脅威が高まってきており、 不特定多数の者が利用する旅館等においてはその利用者の安全確保のための体制整備がますます重要となってきている。
なお、本改正による措置は、平成16年12月10日に政府の国際組織犯罪等・ 国際テロ対策推進本部において決定された「テロの未然防止に関する行動計画」において、 その実施を求められたものである。
2.改正の内容
(1)営業者が備える宿泊者名簿に記載すべき事項として、 宿泊者の氏名、住所及び職業に加え、 当該宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人である場合にはその者の国籍及び旅券番号を併せて記載することとされ、 また、その他都道府県知事が必要と認める事項を記載することとされた(改正規則第4条の2)。
(2)経過措置として、施行日以前から宿泊を開始している宿泊者に係る宿泊者名簿の記載については、 なお従前のとおりとすることとされた(改正規則附則)。
3 本改正により営業者が実施すべき事項
(1)宿泊者名簿に住所等を記載することについては、 旅館業法第6条に基づき従来から実施されてきたものであるが、改正規則施行後においては、 宿泊者が自らの住所として国外の地名を告げた場合、営業者は、当該宿泊者の国籍及び旅券番号の申告も求めることとする。
(2)氏名及び旅券番号等を宿泊者名簿に記載する際には正確を期する必要があるため、 本改正により宿泊者名簿に国籍及び旅券番号の記載をすることとなる宿泊者に対しては、 旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することとする。
これにより、当該宿泊者に関する宿泊者名簿の氏名、 国籍及び旅券番号の記載に代替しても差し支えないものとする。
13. 旅館業法の改正内容
旅館業法の一部を改正する法律(平成29年法律第84号)
(第195回特別国会で平成29年12月8日成立、平成29年12月15日公布)
施行日:平成30年6月15日(※ 民泊新法施行日と同一)
1.ホテル営業及び旅館営業の営業種別の旅館・ホテル営業への統合
ホテル営業及び旅館営業の営業種別を統合し、旅館・ホテル営業とする。
2.違法な民泊サービスの広がり等を踏まえた無許可営業者等に対する規制の強化
(1) 無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の権限規定の措置を講ずる。
(2) 無許可営業者等に対する罰金の上限額を3万円から100万円に、
その他旅館業法に違反した者に対する罰金の上限額を2万円から50万円に引き上げる。
3.その他所要の措置
旅館業の欠格要件に暴力団排除規定等を追加
厚生労働省 生食発1215第2号 平成29年12月15日通知
(A.撤廃項目)として
@ 客室の最低数・A 寝具の種類・B 客室の境の種類・C 採光・照明設備の具体的要件・D 便所の具体的要件
(B.公衆衛生等の観点から根拠を明確に説明し得る必要最小限のものとする)として
@ 客室の最低床面積・A 入浴設備の具体的要件が緩和された。
また、旅館業法施行令における規定の根拠が明確でない規制、例えば、玄関帳場又はフロントは、受付台の長さが1.8m以上とする。 客室のカギを保管する設備は受付台から適当な距離を隔てること、受付台の前の1.6m以内には、植木、 カーテン等を備え付けてはならないことなどの制限が撤廃された。
掲載 2018/5/17