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7.民泊条例の概要

民泊条例

民泊に関する法令体系は、
住宅宿泊事業法 > 住宅宿泊事業法施行令 > 住宅宿泊事業の実施の制限に関する地方条例 > 管理規約  の順位になっています。

上位法優先の原則により、上位法に抵触する定めは無効ですので、管理規約はこれらの他の法令規定の内容に抵触しない範囲で、 かつ、区分所有者相互間において専有部分の管理又は使用を調整するために必要な事項に限られます。

例えば、学校の敷地の出入口の中心点から半径100メートル以内の区域にある共同住宅では、 その学校の授業のある日にまたがらない休業日が2日以上続く場合のみ民泊実施できるという制限がついた条例の指定地区では、 実質、民泊は営業不可能で禁止されているのと同じことになります。

1. 条例制定の根拠法

条例制定の根拠法は第十八条(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)であり、 その内容は政令で定める基準に従うこととなっています。

1.住宅宿泊事業法

 (条例による住宅宿泊事業の実施の制限)
第18条 都道府県(第68条第1項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理する保健所設置市等の区域にあっては、 当該保健所設置市等)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、 合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、 住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。

 

2.政令(住宅宿泊事業法施行令)で定める基準

 (1)住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例の基準(法第18条関係)
法第18条の政令で定める基準は、以下のとおりとする。
@ 区域ごとに、住宅宿泊事業を実施してはならない期間を指定して行う。
A 区域の指定は、土地利用の状況その他の事情を勘案して、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である地域内の区域について行う。
B 期間の指定は、宿泊に対する需要の状況その他の事情を勘案して、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である期間内において行う。

2. 各自治体の民泊条例の状況

各自治体の民泊条例の状況は国の民泊制度ポータルサイトに掲載されています。

「民泊制度ポータルサイト・各自治体の窓口案内(条例等の状況等)」
URL:http://www.go.jp/kankocho.minpaku.municipality.html

3. 北海道条例に見る具体例

「北海道住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例」平成30年3月30日北海道条例第6号

(趣旨)
第1条 この条例は、住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号。以下「法」という。) 第18条の規定に基づき、住宅宿泊事業(法第2条第3項に規定する住宅宿泊事業をいう。以下同じ。)の実施の制限に関し必要な事項を定めるものとする。

(実施の制限) 第2条 住宅宿泊事業のうち次の各号のいずれかに該当するもの(以下「制限対象事業」という。)の実施を制限する区域及び当該区域において制限対象事業を実施してはならない期間は、 別表第1のとおりとする。

(1) 法第2条第4項に規定する住宅宿泊事業者が届出住宅(同条第5項に規定する届出住宅をいう。以下同じ。)を自己の生活の本拠として使用していないもの

(2) 届出住宅に人を宿泊させる間、前号の住宅宿泊事業者が不在(日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内のものを除く。)となるもの

(3) 届出住宅の居室(住宅宿泊事業の用に供するものに限る。)の数が5を超えるもの

2 一の届出住宅が2以上の前項の区域にわたる場合は、それぞれの同項の期間において当該届出住宅に係る制限対象事業を実施してはならない。

附則
1 この条例は、平成30年6月15日から施行する。

2 知事は、この条例の施行の日から起算して3年を目途として制限対象事業の実施状況等を踏まえて必要な措置を講じ、 その後は、5年を経過するごとに、社会経済情勢の変化等を勘案し、この条例の施行の状況等について検討を加え、 その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

別表第1(第2条関係)
区域期 間

1 次表に掲げる市町村の区域において、制限対象事業による生活環境の悪化を防止することが 特に必要であると認めて知事が指定する小学校、中学校、義務教育学校、 中等教育学校若しくは特別支援学校(小学部又は中学部を設置し ているものに限る。)又はこれらに準ずるもの の敷地の出入口の周囲100メートルの地域

国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日 (以下「休日」という。)、日曜日、土曜日その他の授業を行わない日を除く期間

2 別表第3に掲げる市町の区域において、 制限対象事業による生活環境の悪化を防止することが特に必要であると認めて知事が指定する都市計画法(昭和43年法律第100号) 第8条第1項第1号に掲げる第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、 第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域又はこれらに準ずる地域

休日、日曜日、土曜日及び12月31日から翌年の1月3日までの日(休日を除く。)を除く期間

3 制限対象事業による生活環境の悪化を防止することが特に必要であると認めて知事が指定する別荘地

制限対象事業による生活環境の悪化を防止することが特に必要であると認めて知事が指定する期間

解説

本条例は、住宅宿泊事業法第18条に基づき、 住宅宿泊事業(民泊)による生活環境の悪化を防止するよう当該事業の実施を制限する区域等を定めるため制定したものです。

なお、札幌市については、この条例は適用されません。

○ 本条第1項は、住宅宿泊事業法の実施を制限する区域及び実施してはならない期間を別表第1のとおりとする旨規定するものです。

○ また、本条例の対象となる住宅宿泊事業(制限対象事業)の条件として、 (1)〜(3)のいずれかに該当するものとする旨規定しています。

○ (1)については、事業者が届出住宅を生活の本拠として使用していない場合は、 当該届出住宅は制限の対象となるというものです。

○ (2)については、事業者が届出住宅を生活の本拠として使用していた場合にあっても事業者が不在となる場合は、 当該届出住宅は制限の対象となるというものです。 ここでの「不在」については、日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲のもの(原則1時間以内)は除きます。

○ (3)については、事業者が届出住宅を生活の本拠として使用していた場合にあっても当該届出住宅において住宅宿泊事業の用に供する居室の数が5を超える場合は、 当該届出住宅は制限の対象となるというものです。

○ (1)〜(3)に該当しない住宅宿泊事業は規模が限定的であり、住宅宿泊事業者が常住することなどを鑑み、 地域の生活環境への影響は小さいと考えられることから、制限の対象としないこととしたものです。

<別表第1の1>

○ ここでの「生活環境の悪化を防止することが特に必要」と認められる地域とは、 次のいずれにも該当し、住宅宿泊事業の実施を制限する必要がある旨当該地域の市町村長から知事に意見の提出があった地域を指します。

ア ホテル等の不特定多数の人の出入りする施設(第二種中高層住居専用地域で制限される施設を基準とする。)がないこと

イ 住宅宿泊事業の実施を起因とする登下校の防犯上の対応等(見守り活動等)の負担発生が見込まれること

○ 「これらに準ずるもの」とは、インターナショナルスクールなどの学校法(昭和22年法律26号)第1条に規定する以外の小中学校等に準ずる学校を指します。

○ 「敷地の出入口」とは、通常において生徒が登下校のため使用する門又はそれに準ずる出入口を指します。

○ 「周囲100メートルの区域」とは、敷地の出入口の中心点からの直線距離が100メートル以内の区域(すなわち敷地の出入口の中心点から半径100メートル以内の区域)を指します。 この区域に住宅の敷地の一部でも含まれる場合は、当該住宅は制限の対象となります。

○ 「その他授業を行わない日」とは、各市町村教育委員会又は各私立学校規則等に基づく休業日を指します。

○ 住宅宿泊事業を実施してはならない期間は、右欄に掲げるとおりですが、 例えば、授業を行う月曜日は実施してはならない期間に該当するため、その前日の日曜日から1泊2日の宿泊は実施してはならないこととなります。 同様に、休日の翌日が授業を行う日である場合は、該当休日から1泊2日の宿泊は実施してはならないこととなります。 また、授業を行う金曜日は実施してはならない期間に該当するため、 当該金曜日から1泊2日等の宿泊はできないこととなります。

<別表第1の3>

○ ここでの「生活環境の悪化を防止することが特に必要」と認められる別荘地とは、 次のいずれにも該当し、住宅宿泊事業の実施を制限する必要がある旨当該地域の市町村長から知事に意見の提出があった別荘地を指します。

ア 管理規約等があるなど、静穏で良好な別荘地の環境を維持していること

イ ホテル等の不特定多数の人の出入りする施設がないこと

○ ここでの「生活環境の悪化を防止することが特に必要」と認められる期間とは、 別荘地に別荘所有者が多数滞在する期間を指します。

○ なお、実施を制限する必要がある旨の市町村長の意見はありませんでしたので、住宅宿泊事業を制限する別荘地はありません。

<別表第1の4>

○ ここでの「生活環境の悪化を防止することが特に必要」と認められる道路事情が良好でない集落とは、 次のいずれにも該当し、住宅宿泊事業の実施を制限する必要がある旨当該地域の市町村長から知事に意見の提出があった集落を指します。

ア 渋滞等が専ら住宅宿泊事業の実施を起因として発生又は拡大すると考えられるものであること

イ 渋滞等が発生する道路等の他にその機能を代替する道路等が集落内にないこと

○ ここでの「生活環境の悪化を防止することが特に必要」と認められる期間とは、 例年道路渋滞が発生すると想定される期間等を指します。

○ なお、実施を制限する必要がある旨の市町村長の意見はありませんでしたので、住宅宿泊事業を制限する道路事情が良好でない集落はありません。

掲載 2018/5/17