12. 民泊と税金
出典:国税庁平成30年6月13日「住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(FAQ)」
この情報は、平成30年4月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
※ 年末調整済みの給与所得を有する方で、 住宅宿泊事業を営むことで生じる所得(収入ー経費)が20万円以下の方については、 その他に所得がない場合、確定申告は不要です。
目 次
1 所得区分
2 必要経費
3 住宅借入金等特別控除の適用
4 居住用財産の3,000万円の特別控除の適用
5 消費税の課税
6 その他の注意点
1.所得区分
自己が居住する住宅を利用して住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業を行うことによる所得は、 原則として雑所得に区分されます。
所得税法上、「不動産の貸付けによる所得」は、原則として不動産所得に区分されますが、 住宅宿泊事業は、宿泊者の安全等の確保や一定程度の宿泊サービスの提供が宿泊施設の提供者に義務付けられており、 利用者から受領する対価には、 部屋の使用料のほか、寝具等の賃貸料やクリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、日用品費、 観光案内等の役務提供の対価などが含まれており、この点において、 一般的な不動産の貸付け(賃貸)とは異なります。
また、住宅宿泊事業に利用できる家屋は、
・ 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
・ 入居者の募集が行われている家屋
・ 随時その所有者等の居住の用に供されている家屋
に限定されており、その宿泊日数も制限されています。
以上のような住宅宿泊事業の性質や事業規模・期間などを踏まえると、 住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業を行うことにより得る所得は、原則として雑所得に区分されます。
※ 不動産賃貸業を営んでいる方が、契約期間の満了等による不動産の貸付け終了後、次の賃貸契約が締結されるまでの間、 当該不動産を利用して一時的に住宅宿泊事業を行った場合に得る所得は、雑所得とせず、不動産所得に含めていただいても差し支えありません。
また、専ら住宅宿泊事業による所得により生計を立てているなど、その住宅宿泊事業が、 所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合には、その所得は事業所得に該当します。
2.必要経費
住宅宿泊事業による所得金額は、住宅宿泊事業に係る収入金額から必要経費を控除することで算出します。
必要経費に算入できる費用は、
@その収入金額を得るため直接に要した費用及び
Aその年における販売費、一般管理費その他住宅宿泊事業による所得を生ずべき業務について生じた費用です。
具体例は、次のとおりです。
・ 住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料
・ 住宅宿泊管理業者等に支払う管理費用や広告宣伝費
・ 水道光熱費
・ 通信費
・ 非常用照明器具の購入及び設置費用
・ 宿泊者用の日用品等購入費
・ 住宅宿泊事業に利用している家屋の減価償却費
・ 固定資産税
・ 住宅宿泊事業用資金の借入金利子
※ 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃等は必要経費に算入できません。
住宅宿泊事業による所得を得るために支出した費用のうち、住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料や住宅宿泊管理業者に支払う管理費用など、 住宅宿泊事業を行うためにのみ支払うものについては、それぞれその全額を必要経費に算入することができます。
他方、水道光熱費や固定資産税など、業務用部分と生活用部分の費用の両方が含まれているものについては、 住宅宿泊事業に関する部分(業務用部分)の金額のみ必要経費に算入することができます。
住宅宿泊事業に関する部分の金額については、合理的な方法により区分して計算することになりますが、 例えば、主に住宅宿泊事業に利用している部分の床面積の総床面積に占める割合を基にするなどして計算することが考えられます (具体的な計算例については、国税庁平成30年6月13日「住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(FAQ)」をご参照ください。)。
3.住宅借入金等特別控除の適用
住宅宿泊事業法上、住宅宿泊事業に利用できる家屋は、
@現に人の生活の本拠として使用されている家屋、
A入居者の募集が行われている家屋又は
B随時その所有者等の居住の用に供されている家屋
とされていますが、
住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、床面積の2分の1以上に相当する部分を専ら自己の居住の用に供しているなどの要件を満たす必要がありますので、
住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるのは、上記のうち、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」を利用している場合に限られます。
住宅借入金等特別控除の適用については、その対象となる住宅を
@ 住宅宿泊事業に利用しない生活用部分
A 住宅宿泊事業にのみ利用する業務用部分
B 生活用にも業務用にも利用する併用部分のうち、主に生活用として利用する部分
C 生活用にも業務用にも利用する併用部分のうち、主に業務用として利用する部分
に区分した上で、総床面積のうち生活用部分(@とBの合計)に占める割合が2分の1を超えるか否かで判断します。
また、住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合のその控除額は、住宅借入金等の金額に、 総床面積のうち生活用部分(@とBの合計)に占める割合を乗じた金額を基礎として計算します。
※ 住宅借入金等特別控除の適用要件等の詳細については、タックスアンサー をご覧ください。
【住宅借入金等特別控除額の計算例】
1 家屋の状況
家屋の総床面積 250u
@ 住宅宿泊事業に利用しない生活用部分 108u
A 住宅宿泊事業にのみ利用する業務用部分 72u
B 併用部分のうち主に生活用として利用する部分 42u
C 併用部分のうち主に業務用として利用する部分 28u
併用部分 70u
うち主に生活用として利用する部分 70u × 108u/(108u+72u)
うち主に業務用として利用する部分 70u × 72u/(108u+72u)
2 生活用部分の面積
@108u + B42u = 150u
3 住宅借入金等特別控除の適用判定
150u ≧ 125u(家屋の総床面積250uの2分の1)
∴ @とBの合計が総床面積(250u)の2分の1以上であるため、住宅借入金等特別控除の適用が可能
⇒ 住宅借入金等特別控除の控除額は、住宅借入金等の金額に、総床面積のうち生活用部分の占める割合(60%:150u/250u)
を乗じた金額を基礎として計算します。
(注1)通常居住の用に供している家屋を特定の期間(年間合計で1か月未満程度)に限って住宅宿泊事業に供している場合には、 その家屋の全体を「生活用部分」として、住宅借入金等特別控除を適用しても差し支えありません。
(注2)固定資産税や住宅借入金の利子の金額を必要経費に算入する場合にも、生活用部分と業務用部分を合理的に区分する必要があります。
上記の例のような場合には、生活用部分が150u、業務用部分が100uと考えられますので、 固定資産税等の金額に業務用割合40%(100u/250 )を乗じた金額を必要経費に算入して差し支えありません。
また、上記の例における減価償却費の金額は、「主に住宅宿泊事業に利用している部分の床面積」を100uとして計算することになります。
4.居住用財産の3,000万円の特別控除の適用
居住用財産の3,000万円の特別控除は、
@現に居住の用に供している家屋を譲渡するか、
A居住の用に供さなくなった家屋を、
居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する場合に適用を受けることができます。
※ 居住用財産の3,000万円の特別控除の適用要件等の詳細については、タックスアンサー 3302 をご覧ください。
譲渡した住宅宿泊事業に利用している家屋が、@の「現に居住の用に供している家屋」である場合には、
原則として、居住用財産の3,000万円の特別控除の適用を受けることができます。
但し、その家屋のうちに、居住の用以外の用に供している部分があるときは、
居住用財産の3,000万円の特別控除の適用対象となるのは、居住の用に供している部分に限られます。
居住の用に供しているかどうかは、その家屋の構造や設備の状況及び実際の利用状況などを総合勘案して判断することになります。
※ 居住の用に供している家屋のうちに居住の用以外の用に供している部分がある場合の、 居住の用に供している部分の計算方法については、タックスアンサー 3452 をご覧ください。
譲渡した住宅宿泊事業に利用している家屋が、Aの「居住の用に供さなくなった家屋」である場合には、 その譲渡が居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに行われたときは、 原則として、居住用財産の3,000万円の特別控除の適用を受けることができます。
なお、この場合、居住用財産の3,000万円の特別控除の適用に当たっては、居住の用に供さなくなった後の家屋の利用状況は関係ありません。
5.消費税の課税
住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業において宿泊者から受領する宿泊料は、 ホテルや旅館などと同様に消費税の課税対象となります。
なお、当課税期間の基準期間(個人事業者の方は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1千万円以下の場合、 当課税期間は原則として免税事業者に該当しますので、消費税の申告・納税義務はありません。
(注)1 消費税法上、住宅の貸付けは非課税とされていますが、貸付期間が1か月未満の場合や旅館業法上の旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合には、 消費税の課税対象とされています。
2 消費税の納税義務の判定については、国税庁HPに掲載している以下のパンフレットをご覧ください。
【課税事業者に該当する住宅宿泊事業者の方へ】
課税事業者に該当する住宅宿泊事業者の方が、ウェブサイト上に住宅宿泊事業に提供する物件を掲載するため、 当該ウェブサイトの運営事業者に掲載料を支払っている場合、支払先が国内事業者か国外事業者かにより、 次のとおり取扱いが異なりますのでご留意ください。
○ 国内事業者への支払い
住宅宿泊事業者における課税仕入れとして、仕入税額控除の対象となります。
○ 国外事業者への支払い
@ 一般課税で申告する方で課税売上割合が95%以上の方又は簡易課税制度を適用している方
支払った掲載料は、仕入税額控除の対象となりません。
A 一般課税で申告する方で課税売上割合が95%未満の方(@以外の方)
支払った掲載料は、仕入税額控除の対象となるとともに、同額をリバースチャージ方式により課税標準額に加算して申告・納税する必要があります。
(注) リバースチャージ方式を含めて、詳しくは国税庁HPに掲載している以下の情報をご覧ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/01.htm
6.その他の注意点
(国税庁発表資料のFAQには掲載されていない、その他の注意事項)
(1) 雑所得は他の所得区分と損益通算ができないので、民泊運営で赤字になっても、 他の所得と相殺できず課税所得を減じることはできない。雑所得の税率は所得水準に応じて15〜55%(住民税10%含む)
(2) 民泊の規模によっては固定資産税(地方税)における居住用家屋の敷地についての特例措置(住宅用地の特例)が外れる可能性がある。
(現行の住宅用地の特例では、200uまでなら評価額が6分の1、200u超は3分の1となる。)
一般的な戸建の場合、本人が居住する面積が半分以上あれば、そのまま特例対象となるが、
半分未満の場合、特例の対象外となり、固定資産税納付額が4倍強になるケースもある。
(3) 居住用の宅地を同居していた子供らが相続した場合、 330uまでは小規模宅地等の特例で評価額の8割を減じることができるが、民泊を営んでいた場合は居住用宅地とはみなされず、 特例の対象外となる可能性がある。アパートなどの賃貸経営の場合は50%の評価減が認められているが、 民泊は営業日数に180日の上限があり事業とは認められず、特例は適用されない可能性がある。
掲載 2018/7/5