民泊と管理規約
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10. 民泊と管理規約

管理規約の改正についての解説です。
民泊について管理規約を改正しようとする場合は、 お住まいの地方自治体の条例も関係してきますので、 7. 民泊条例の概要 もあわせて参考としてください。

1.管理規約の改正の必要性

1.管理規約の改正の必要性

住宅宿泊事業法の成立に伴い、管理組合が管理規約を制定、変更する際のモデルとして国土交通省が作成・公表している「マンション標準管理規約」が改正され、 分譲マンションにおいて住宅宿泊事業(いわゆる民泊)の実施を可能とする場合及び禁止する場合の規定例が示されました。

 民泊をめぐるトラブルを未然に防止するために、住宅宿泊事業を許容するか否かについて、 あらかじめマン ション管理組合において、区分所有者間でよくご議論いただき、 その結果を踏まえて、住宅宿泊事業を許容するか否かを管理規約上明確化しておくことが必要です。

2.国土交通省資料

(1) 分譲マンションにおける住宅宿泊事業の届出について [PDF/350KB]
(2) 住宅宿泊事業に伴う「マンション標準管理規約」の改正について
(3) 改正の概要について[PDF/136KB]

マンション標準管理規約及び同コメント

住宅宿泊事業のうち、住宅宿泊事業者が同じマンション内に居住している等のいわゆる家主居住型のみ可能 とする場合等の規定例等の関連の留意事項が「マンション標準管理規約コメント」において示されました。
(1) マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメント(民泊関係改正)[PDF/214KB]
(2) マンション標準管理規約(団地型)及び同コメント(民泊関係改正)[PDF/217KB]
(3) マンション標準管理規約(複合用途型)及び同コメント(民泊関係改正)[PDF/211KB]

2.特区民泊と管理規約(国土交通省通知)

国土交通省は特区民泊の際にも同様の規約改訂に関する通知を出しています。

3.規約改正をしない場合

 Q 規約改正をしなければ民泊を認めることになりますか?

 A 規約に民泊可能の決まりがなければ、都道府県知事は許可するにあたって、 管理組合として民泊を禁止する意思がない旨の誓約書の提出を求めます。

 住宅宿泊事業法施行規則では、 都道府県知事は、民泊申請者の所有するマンションの管理規約の提出を求め、 規約に民泊可能の決まりがない場合、 届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていないことについて確認をし、 管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がない旨の誓約書 (理事長等の氏名・役職・連絡先等を記載)の提出を求めています。
(住宅宿泊事業法施行規則第4条第3項第13号及び法施行要領(ガイドライン))。

つまり、管理規約に民泊可能の決まりがない場合、 改めて理事長が管理組合として禁止する意思がないことの誓約書を提出しない限り、許可されることはありません。

集会の特別決議によらないこのような誓約書は求められても出すべきではありません。
理事長が総会に諮らずに理事会での決議で、或いは独断で民泊の許可・禁止にかかわる誓約書を出した場合は、 善意の第三者である監督者の都道府県知事には責任がありません。(民法第93条2項) 誓約書の法的効果に対する責任・不法行為による損害賠償(民法709条)請求等の判断は管理組合の自治に任されます。

後々のトラブルを考えたとき、臨時総会を開き、民泊賛否の規約改訂にかかわる特別議決(組合員の4分の3の賛成が要)を行った後、 その議事録を行政に提出するほうが賢明です。組合員の生命財産が危機に瀕している緊急の事態でもないのですから、 あわてることはありません。
民泊申請者の都合ではなく、組合全体の利益のために行動してください。

申請者が理事長の同意を得た等の事実と異なる旨の誓約書を勝手に作成した場合は、 私文書偽造罪(刑法159条)で、3ヶ月以上5年以下の懲役です。

つまり、規約改正をしていない場合でも、 そのマンションで民泊をしようとする者が都道府県知事に住宅宿泊事業法第3条の許可申請をしようと管理組合に相談した時点で、 改めて総会を開き、民泊の許可・禁止にかかわる規約改正を行い、その議事録を都道府県知事に提出することになります。

詳細は    7. 民泊新法の概要・「住宅宿泊事業法における届出の仕組み」 を参照ください。

4.専有部分の使用に関する規約の基本的な考え方

ア 法の基本的な考え方
他の住民に不安や恐怖を与える行為は、区分所有者の共同の利益に反する行為として禁止されている(区分所有法6条1項)。

イ 規約の基本的な考え方
マンションの専有部分は、本来それぞれの所有者がその意思に従って管理及び使用をすべきものであり、 専有部分に関して規約で定めることができるのは、その管理又は使用に関するすべての事項にわたるのではなく、 区分所有者相互間において専有部分の管理又は使用を調整するために必要な事項に限られる。

たとえば、専有部分の内部の部屋をどのように利用するかは、 原則として他の区分所有者に何の影響も及ぼすものではありえないから、 その使用方法についてどのような制限をしてもよいとはいえない。

しかし、そのマンション全体の使用目的に照らして、 共同生活の妨げとなるような営業行為をすることを禁じるなど、 他の区分所有者との間の専有部分の調整のために必要な事項は、規約で定めることができる。 (以上は法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」改正区分所有法の解説P179)

5.専有部分の使用に関する判例

専有部分につき住居以外に使用を禁止されているマンションで、 区分所有者の夫が経営する病院の看護士などの育児保育室として使用することが、 区分所有者の共同の利益に反するとして、区分所有法57条1項の使用禁止請求が認容された判例 (横浜地判平成6・9・9判タ869号199頁)では、 管理組合の構成員である他の区分所有者全員と、当該区分所有者双方の諸事情を下記のように 考慮して使用禁止請求を認容しています。

病院経営者の保育室としての本件建物使用には、本件病院の公共性、 人員確保の必要性などの理由があるにしても、それにより本件住民らは少なからず被害・影響を受けていること、 本件マンションの所在地の環境が比較的閑静であること、 経営者である夫は他の場所に保育用施設を設置するなど代替手段が可能であるのに対して、 住民らは被害を避けるために転居しようとしても経済的理由等から困難であること、 経営者らは本件マンションの部屋を保育施設に利用することで病院経営による利益を享受するのに対して、 住民らは一方的不利益を受けるにとどまること、などが重視されています。

単純に、規約で住居以外に使用を禁止されているから、 保育室としての利用は用法違反・規約違反とは言っていないことに注意が必要です。

6.不法行為にもとづく損害賠償請求

不法行為にもとづく損害賠償請求とは、違法行為により損害を被らされた場合に、相手方に賠償を求める請求のことで、 自ら違法性のある行為をして他人に損害を与えておいて、被害者にその権利実現のための弁護士費用を全部負担させるのは衡平ではないという考え方から、 規約に規定した上で、不法行為を行った相手方に対して弁護士費用を請求することを言います。

規約条文の書きかたも含めて注意すべき点について、「弁護士費用を請求できるか」 に詳しく説明していますので、 民泊関連規約改訂を行う際には、参考としてください。

掲載 2018/5/17