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8 民泊と建築基準法

建築基準法における用途地域規制との関係、及び、 建築基準法、消防法における構造設備基準との関係についての解説です。

1. 建築基準法上の宿泊施設としての主な基準

建基法の要求項目ホテル・旅館の場合住宅を民泊使用した場合
界壁・間仕切壁
(法第26条、令第114条)
○ 準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達すること同左(戸建住宅は適用なし)
共同住宅でスプリンクラー設備を設置した場合、住宅用防災警報器を設置等した場合について緩和
用途による耐火建築物等要求
(法第27条)
@ 3階建以上の場合
A 2階の部分の床面積の合計が300u以上の場合
適用なし
廊下の幅
(法第35条、令第119条)
○ 居室の床面積の合計が200uを超える階の場合
 (1) 中廊下→1.6m以上
 (2) 片廊下→1.2m以上
適用なし
居室から直通階段までの距離
(法第35条、令第120条)
@ 主要構造部が準耐火構造又は不燃材料の場合、50m以下
A その他の場合、30m以下
ほぼ適用なし
2以上の直通階段
(法第35条、令第121条)
@ 主要構造部が準耐火構造又は不燃材料の場合、宿泊室の床面積の合計が200u超の階
A その他の場合は、宿泊室の床面積の合計が100u超の階
ほぼ適用なし
避難階段の設置
(法第35条、令第122条)
○ 5階以上の階適用なし
排煙設備の設置
(法第35条、令第126条の2)
○ 延べ面積500u超適用なし
非常用照明装置の設置
(法第35条、令第126条の4)
@ 居室
A 避難経路
※ 避難階の居室等で、屋外への出口に至る歩行距離が30m以下(避難階の直上階・直下階の場合は、20m以下)のものは対象外
ほぼ適用なし
内装制限
(法第35条の2、令第128条の4、令第129条)
@ 居室及び避難経路の内装仕上げを難燃材料等とする
 (1) 耐火建築物の場合→ 3階以上の床面積が300u以上
 (2) 準耐火建築物の場合→ 2階の床面積が300u以上
 (3) その他の場合→ 床面積が200u以上
  ※ 100u以内毎に防火区画されている場合は対象外
火気使用室の内装仕上げを準不燃材料とする(住宅の場合、最上階は適用除外)
(戸建住宅の場合)
火気使用室の内装仕上げを準不燃材料とする
(住宅の場合、最上階は適用除外)
屋内階段の寸法
(法第36条、令第23条)
○ 直上階の居室の床面積の合計が200uを超える場合等
 (1) 階段及びその踊場の幅:120p以上
 (2) けあげ:20cm以下 踏面:24cm以上【勾配40°】
○ 上記以外の場合
 (1) 階段及びその踊場の幅:75p以上
 (2) けあげ:22cm以下 踏面:21cm以上【勾配46°】
(1) 階段及びその踊場の幅:75p以上
(2) けあげ:22cm以下 踏面:21cm以上【勾配46°】

(住宅内階段はけあげ:23cm以下 踏面:15cm以上【勾配57°】)


※ 「適用なし」、「ほぼ適用なし」とは、住宅構造として本来規定されているものであって、当該項目に関してはあえて追加の規定は要しないとの趣旨です。
詳しくは、【例】 「共住省令の構造類型と設備」 を参照ください。

2. 用途地域による建築物の用途制限

各用途地域における住居の環境の保護や、商業・工業等の業務の利便の増進を図るために、建築することができる建築物の用途については、次の表に示すような制限が行われています。

ただし、特別用途地区を指定して条例を定めた場合や、特定行政庁が、個別に、当該用途地域における環境を害するおそれがない等と認めて許可した場合には立地可能。

項目番号
ホテル、旅館
住宅、共同住宅、寄宿舎等
老人ホーム、福祉ホーム等
老人福祉センター、児童厚生施設等
公共施設・学校等小学校、中学校、高等学校
病院、大学、高等専門学校、専修学校等
神社、寺院、教会、公衆浴場、診療所、保育所等
店舗等店舗等の床面積が150u以下のもの
店舗等の床面積が150uを超え、500u以下のもの
店舗等の床面積が500uを超え、1,500u以下のもの10
店舗等の床面積が1,500uを超え、3,000u以下のもの11
店舗等の床面積が3,000uを超えるもの12
事務所等事務所等の床面積が1,500u以下のもの13
事務所等の床面積が1,500uを超え、3,000u以下のもの14
事務所等の床面積が3,000uを超えるもの15

 

○:建てられる用途  ×:原則として建てられない用途
@、A、B、C、▲:面積、階数などの制限あり

注: 第二種住居地域、準住居地域、工業地域、工業専用地域、用途地域の指定のない区域については、大規模集客施設の床面積の合計が10,000u以内でなければならない。
※ 市街化調整区域を除く。

3. 違法貸しルームへの対応

多人数の居住実態がありながら防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物については、 お住まいのマンションが所在する市が特定行政庁に指定されている場合は、その市の窓口に、 お住まいのマンションが所在する市町村が特定行政庁に指定されていない場合は、都道府県の窓口に、 ご連絡ください。

平成25年9月6日付け国土交通省住宅局建築指導課長通知「国住指第4877号」

各都道府県・建築行政主務部長 殿
「多人数の居住実態がありながら防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策の一層の推進について(技術的助言)」

オフィス、倉庫等の居住以外の用途に供していると称しながら多人数の居住実態がある建築物、 マンションの一住戸又は戸建て住宅を改修して多人数の居住の用に供している建築物等において、 防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある状況で使用されている実態が判明しています。

このような建築物については、 既に「多人数の居住実態がありながら防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策について」 (平成25年6月10日付け国住指657号)において、国土交通省より情報提供を受けた物件等について、 立入調査等の実施や違反物件の是正指導等を行うことをお願いしていますが、居住者の安全性を速やかに確保する観点から、 引き続き、下記の事項に十分に留意のうえ、立入調査等の実施や違反物件の是正指導等を進めていただくようお願いします。

違法な居室空間建築基準法違反の形態

マンションの一住戸や戸建て住宅を改修し、一の部屋の中に間仕切壁等(天井に達していない間仕切り、 凹凸を設けて空間を上下に区画するもの、壁・床・天井により二段に区画された空間を設けるもの等を含む。)を設置して、 一定のプライバシーが確保された独立して区画された部分を整備し、当該部分で各居住者が就寝する等居住している場合。

上記のような「貸しルーム」の事例における区画された部分についても、 その区画された各部分が、一の「居室」に該当するものとして、 居室の採光(建築基準法第28条第1項)、建築物の間仕切壁(建築基準法施行令第114条第2項)等の規定を満たすことが必要である。

 

所有者等からの相談への対応について
「貸しルーム」(計画中のものも含む。)の所有者、事業者、設計者等の関係者から、 当該物件が、建築基準法に違反するものであるかどうかについて相談があった場合には、 必要な調査等を行ったうえで、違反の有無等に係る情報を適宜提供されたい。

なお、分譲マンションについては、国土交通省住宅局から一般社団法人マンション管理業協会及び公益財団法人マンション管理センター宛てに 平成25年6月10日付けで別添の「違法貸しルームへの対応について〜居住者・区分所有者・管理組合のみなさまへ〜」が通知されていることに留意されたい。

出典:
国土交通省住宅局建築指導課長通知「国住指第4877号(平成25年9月6日)」を要約して掲載

掲載 2018/5/17