7.既存住宅の性能表示制度
1. 既存住宅の性能表示制度の概要
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)は平成12年4月1日施行時は新築住宅対象でしたが、 平成14年12月施行で適用対象が既存住宅に拡大されました。
「住宅性能表示制度」の詳細は、「一般社団法人住宅性能評価・表示協会」 のHpを参照してください。 ここでは、既存共同住宅における評価の概要について述べています。
1. 既存住宅の住宅性能表示制度は、既存住宅売買の当事者間で物件情報を共有化し、 契約の透明性と円滑化をはかることが目的です。
@ 第三者機関による現況検査で住宅の現況(劣化や不具合)がわかれば、 その後の安心・適切な維持管理が可能になります。
A 大規模修繕の前の検査で劣化や不具合部分の指摘を受けた後、評価を一旦中断して、 大規模修繕で指摘箇所を修繕した後に、再検査を行って最終評価書の交付を受けることができます。
B 検査項目も単なる躯体の劣化や不具合部分にとどまらず、生活環境の良好な維持という観点から、 総合的な検査項目になっていますので、安心です。
2. 既存住宅の性能評価を受けると、万一、その住宅にトラブルが起きても指定住宅紛争処理機関(各地の単位弁護士会) が迅速・公正に対応することになっています。
○「登録住宅性能評価機関」(国土交通大臣登録)は、現況検査により「部位等・事象別の劣化判定」「綜合判定」(必須事項)を行うほか、
「特定現況検査」と「個別性能に関する個々の性能事項」を選択事項として判定申請できます。
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○「指定住宅紛争処理機関」(国土交通大臣指定)は、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関です。
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3. 現況検査の結果明らかになった不具合等に関して、補修意思がある場合には、
一旦評価を中断し、補修後に再検査を受け、最終評価書の交付を受けることも可能です。
大規模修繕を計画される場合は、現況調査前に評価機関にご相談ください。
4. 都道府県別の評価機関のリストは次の国交省のHpをクリックしてください。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000016.html/
5. 共同住宅の性能評価は、住戸(専用部分)と住棟(共用部分)がセットで評価される必要がありますので、 申請は管理組合としての申請になります。
6. 評価を受けたい場合には、管理組合に、過去に実施した共用部分の評価結果があるかどうかを確かめてください。 その結果を現在の評価に有効に活用することができます。
7. もし無い場合には、全く新規に共用部分の評価も受けることも可能ですが、大規模な共同住宅では負担が大きくなり、 性能評価書だけを目的とするなら現実的ではないかも知れません。ただし大規模修繕前の現況調査を予定されている場合は、 その旨を伝えて評価機関と相談してください。
8. 管理組合に、過去に実施した共用部分の評価結果がある場合でも、
そのうちの現況検査結果には現在の評価に活用するうえでの有効期限があります。
○ 適切な維持管理に関する計画等が認められ、評価申請日が竣工時より10年以内
の場合は過去5年以内の評価結果
○ 適切な維持管理に関する計画等が認められ、評価申請日が竣工時より10年以上
経過の場合は過去3年以内の評価結果
○ 適切な維持管理に関する計画等が認められない場合は過去2年以内の評価結果
9. ○ 適切な維持管理に関する計画等とは、
@ 他の法令に基づく昇降機その他設備の検査等の実施
(昇降機及び昇降機等定期検査報告書、消防用設備等点検結果報告など)
A 適切な管理規約(区分所有法第30条又は第65条に規定する規約など)
B 適切な長期修繕計画(計画期間が20年以上で、修繕工事の実施予定時期
及び当該工事の予定額が明記されているものなど)
C 適切な金額の修繕積立金の額及び区分経理
(定期総会の議案控え、その他修繕積立金の額が明記された書類など)
2.「住宅性能表示制度」利用上の注意
評価書の頁の最初に下記の注意が記載されています。
<ご注意>
@ 下記の住宅の売買にあたり、売主と買主との間でこの記載内容を契約の内容とする旨の合意がなければ、 この記載内容は参考資料であって、売主が買主に対して検査時の状態で引き渡すことを約束したものとはなりません。 A この現況検査・評価書は、建物の隠れた瑕疵(欠陥)の有無を示すものではありません。 B この現況検査・評価書の記載内容は、 検査・評価の時点からの時間経過による変化がないことを保証するものではありません。 |
2.「住宅性能表示制度の見直しの概要
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づく「住宅性能表示制度」の性能表示基準と評価基準は、 新築住宅(10分野32項目)と既存住宅(7分野29項目)に分かれています。
但し、新築時に建設住宅性能評価書が交付されていない既存住宅の場合、建築後では評価できない項目があるため、 現地調査で目視、計測等により判断できる性能表示事項に限られ、6分野16事項の適用にとどまります。
平成27年(2015年)4月1日施行 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)改正 により「日本住宅性能表示基準」の「性能表示基準」および「評価方法基準」の範囲が改訂されました。
日本住宅性能表示基準・評価方法基準の改正
1 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の制定に伴う改正
○ 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下、建築物省エネ法)の制定に伴い、「断熱等性能等級」及
び「一次エネルギー消費量等級」について、建築物省エネ法に基づく基準を引用するため、日本住宅性能表示基準
(以下、表示基準)及び評価方法基準を改正する。
2 既存住宅に係る劣化の軽減及び温熱環境・一次エネルギー消費量の基準の追加
○ 既存住宅について新たに「劣化対策等級」、「断熱等性能等級」及び「一次エネルギー消費量等級」を追加するため、
これらに係る表示基準及び評価方法基準を策定する。
3 既存住宅に係る耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の基準の見直し
○ 既存住宅に係る「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」について、基準の合理化を図るため、
表示基準及び評価方法基準を改正する。
4 既存住宅における評価対象住宅の範囲の見直し
○ 新築時に交付された建設住宅性能評価書等に加えて、一定の信頼性のある図書等の活用を可能とし、
評価対象住宅の範囲を拡大するため、評価方法基準を改正する。
5 その他改正事項(評価方法基準)