CAT判例、ニューサンス・除雪妨害 (2022 ONCAT 97 )
○ 今回は雪の季節に関係したテーマです。
自分の住戸の隣に、団地内の除雪作業で出た雪を捨てる事を拒否した所有者に、
判決で総額5,261.5ドル(日本円で約60万円)の賠償金が課せられた事件です。
左は札幌近郊で見られる風景ですが、実はトロント郊外の通称タウンハウス(townhouse)と呼ばれるコンドミニアムです。
家族関係以外が共同で住む住宅は共同住宅法(The Condominium Act)ですべてコンドミニアムに含まれ、 このタウンハウスも住戸所有者(Unit owner)で構成される管理組合が共用部を管理するコンドミニアム(共同住宅)です。
(注:この写真は本件裁判の建物とは無関係です。)
目次
○ コンドミニアム裁判所 判決 (No. 2022 ONCAT 97)
○ 判決理由 (REASONS FOR DECISION)
A. 事案の概要 (INTRODUCTION)
B. 事案の結果 (RESULT)
C. 事案の背景 (BACKGROUND)
D. 争点と分析 (ISSUES & ANALYSIS)
○ E. 結 論 (CONCLUSION)
○ F. 判 決 (ORDER)
コンドミニアム裁判所 判決 No. 2022 ONCAT 97
CONDOMINIUM AUTHORITY TRIBUNALDATE: September 9, 2022
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コンドミニアム裁判所 判決
判決日: 2022年9月9日
事件番号: 2022-00108N
事件名: カールトン コンドミニアム管理組合(法人番号132) 対 エヴァンス, 2022 ONCAT 97
準拠法令: 共同住宅法1998 1.44
裁判官: パトリシア・マックエイド (コンドミニアム裁判所副議長判事)
原 告: カールトン コンドミニアム コーポレーション No.132 / 代理人弁護士 デビッド ルー
被 告: ロス・エヴァンス
聴聞: 文書並びにオンラインにて実施ー2022年6月7日 ー 2022年8月10日
判決理由 (REASONS FOR DECISION)
A. 事案の概要(INTRODUCTION)
[1] 原告・カールトン コンドミニアム管理組合(以下CCC132管理組合と略記)は、
当該コンドミニアムの区分所有者である被告ロス・エヴァンスの「不適切な行為」
(inappropriate conduct)が、同コンドミニアムの宣言書の駐車場規定に違反し
ており、そのためCCC132管理組合は被告に対し、宣言書規定の遵守とニュー
サンス(迷惑行為)の禁止、及びこの対策のために管理組合が支出した費用の
補償を被告に課すことを求めて当裁判所に提訴したものである。
[2] 被告は、本件審理に参加しなかった。
2022年3月21日、被告は健康上の理由から 2カ月の延期を裁判所に申請した。
2022年4月29日、延期申請は当裁判所議長判事により却下決定が下された。
2022年6月 2日、被告は裁判所書記官から被告が参加するしないにかかわらず、
当法廷は審理を再開することの告知を受けた。
[3] 本件聴聞を通じて、裁判官は本事案の争点を下記と判断した。
1.被告は駐車場規則に関係する管理組合の統治文書(governing documents:
宣言書・管理規約・使用細則)の規定に違反しているか。
2.被告の行為は、宣言書及び管理規約に違反してニューサンス(迷惑行為)を
構成しているか。
3.原告は、駐車場規則の法令遵守及びこれまでの手続きに要した費用の補償
を被告に課す権利を有するか。
B. 結 果 (RESULT)
[4] 以下に示す理由により、裁判官は、2021年12月及び2022年1月の被告の行動は、
宣言書第W章の規定に違反しており、ニューサンスを構成することを認める。
但し、管理規約違反については認めることができない。
被告はCCC132管理組合が本件処理のために支払った費用3,390ドルと裁判費用
621.50ドル及び裁判所規則48条に従って、1,250ドルを補償金として管理組合に
弁償しなければならない。
C. 事案の背景 (BACKGROUND)
[5] CCC132は、78戸のタウンハウスからなる築約43年の複合施設(complex)である。
被告は2016年12月に当該住戸の所有者となった。各住戸には、付属のガレージ
の前の短い車道に続く駐車スペースがある。駐車スペースは、特定の住戸ごとに
住戸所有者が排他的に使用できる共用部の一部として規定されている。
被告の住戸は、タウンハウスの列の端にあり芝生エリアに隣接しているが、その
芝生エリアは、冬には CCC132内で除雪した雪の捨て場所にあてられている。
CCC132内の道路は私道であるため、CCC132管理組合が除雪と搬出を実施する。
この除雪工事は株式会社サンシャイン・スノー・サービス(以下「サンシャイン社」)
と契約を結んでいる。
[6] CCC132管理組合は、被告の行為が迷惑行為を構成すると主張する幾つかの
事件を引用しているが (これについては、この判決で後述する)、いずれも除雪
の雪の捨て場所に関する被告の行為が招いたものであることは明白である。
被告とCCC132管理組合の間の電子メール (本件では CCC132管理組合に
よって証拠として提出された) で明らかになったように、被告は2021年3月に
初めて除雪と雪捨て場について懸念を表明し、以後は、彼の住戸の隣のエリ
アを雪の貯蔵エリアとして使用しないことを要求した。彼は 代替の雪貯蔵エリ
アについて考える時が来たと述べている。
[7] 被告はまた、彼の住戸の基礎に隣接する積雪の影響について懸念を表明し、
調査のために構造技術者を雇ったが、その技術者の報告によると、被告住
戸の基礎壁(foundation wall)に近い場所での雪の堆積によって土壌の水分
含有量が増加した結果、ガレージのコンクリートスラブを含むユニット全体に
ひび割れや傾斜が生じたと結論付けていると主張した。
CCC132管理組合はその後、ケラー・エンジニアリング(Keller Engineering
(ケラー社))に問題の調査を依頼した。
被告側の調査報告書は、裁判所には証拠として提出されていないが、しかし、
その結論は、ケラー報告書の中で、言及されていた。
[8] ケラー社は2021年7月と9月に被告の住戸に立会い、コンクリートの土台と
ガレージのコンクリートスラブを含め、被害の兆候がないか、被告の住戸の
全体的な状態を評価した。
彼らは、観察されたひび割れは軽微であり、おそらく年間を通じて発生する
建物の小さな振動の結果であると考えられると結論付けた。
証言の中で、ケラー レポート (2021年10月4日付け) の著者マット・マイケルーク
(Matt Michaluk)氏は、積雪の場所が住戸に悪影響を与える可能性は低いと述
べている。
[9] 2021年11月、被告は、アン・バーグーン(Anne Burgoon)氏に電子メールを送信し、
雪貯蔵エリアが移動されているかどうかを尋ねた。Ms.バーグーン氏は、そうではない
と答えた。アン・バーグーン氏はCCC132管理組合を担当する管理会社のプロパティ
マネージャーである。
2021年12月15日、被告はMs.バーグーン氏への電子メールで、除雪装置が彼の
車両に危険なほど接近しており、引き続き「自分の車両を保護」すると述べた。
2021年12月15日、Ms.バーグーン氏は被告へのメールで、車道は管理組合が
所有および維持の権限と責任を有する共用部(the driveway was a common
element which the corporation owns and maintains)であり、彼は区分所有者
として使用(and that he uses as owner of the unit)していると述べ、続けて、
彼の車両について心配があるなら、その車両は自分のガレージに駐車するべき
であると述べた。
[10] 当然のことながら、2021年から2022年にかけて冬の季節が到来すると、この
問題に関する緊張が高まった。CCC132管理組合によると、被告はサンシャイン
社の従業員が除雪と雪の堆積作業をすることに嫌がらせをしてきたので、作業が
困難になってきたとサンシャイン社の作業主任者ビンス・マークワルド
(Vince Marquardt)氏が証言した。
ビンス・マークワルド氏は次のように証言した。
自分達サンシャイン社の従業員は、7〜8年以上も前から同じ場所に除雪した雪
を積んできたが、その際、被告は、彼らの作業場所である被告の住戸の近くから
作業の邪魔にならないよう自分の車を移動させていた。
しかしながら、2022年1月には、被告は雪の堆積場所に近い彼の住戸の車道の
右側ぎりぎりに自分の車を駐車させ、この妨害によって雪の堆積作業は困難と
なった。
2022年1月中旬、Ms.バーグーン氏は電子メールで被告に対し、車の駐車位置を
もっと左側に寄せるよう依頼し、もし、ロス・エヴァンス氏がそうしなかった場合、
結果として管理組合に発生した対策費用は、ロス・エヴァンス氏に負担を求め
ることになるであろうと述べた。
[11] CCC132管理組合に不動産管理サービスを提供する会社の従業員である
ダン・ミルン(Dan Milne)氏は、2022年1月に被告の車道に駐車している被告
の車両の写真を撮った。彼は、駐車している車について「所有者の住戸正面
の外壁の端から充分にはみ出している」状態であると記述している。
裁判官はミルン氏にどの位はみだしているかを尋ねた処、彼は、それは少なく
とも6インチ(約153cm)であると答えた。
[12] 2022年1月27日、CCC132管理組合の弁護士 (当時は Ms.ハウル(Ms.Houle))
は、被告ロス・エヴァンス氏に文書で、貴殿が駐車している場所は管理組合が
指定した車道からはみ出しており、そのため、サンシャイン社の除雪作業の侵
入路を遮断し、雪の貯蔵作業を妨害する嫌がらせのハラスメント(harassment)
行為であることを指摘した文書を送った。
Ms.ハウル弁護士は、被告に対して駐車場所の適正な使用について特定の指示
を与え、次のように述べた。
「貴殿が駐車できる場所は、貴殿の車両の端(及びサイドミラー)が、ガレージ
ドアが建物外壁に接している部分より内側になければならない。それが駐車場
にアクセスする場合の適正な使用方法である。」
Ms.ハウル弁護士は、共同住宅の宣言書及びCCC132管理組合の規則について
触れ、この規則に従って、管理組合が本件の法的手続きに要した費用の被告
への賠償請求額は、現在までのところ621.50ドルであることを伝えている。
[13] 2022年1月27日、除雪作業を行っているサンシャイン社のマークワルド氏は
管理会社Ms.バーグーン氏への電子メールで,CCC132管理組合理事会に
連絡して、これ以上、この問題に係らないために、サンシャイン社が別の場
所に雪捨て場を設けることを許可してもらえるか尋ねて欲しいと依頼した。
最終的に、別の場所に雪捨て場を設けたが、このため、CCC132管理組合は、
3,390 ドルの追加費用が発生した。マークワルド氏が指摘したように、昨年
までは、被告は彼の住戸に隣接する雪捨て場の使用には反対しなかった。
D. 争点と分析 (ISSUES & ANALYSIS)
争点1:被告は統治文書の駐車場の規定(具体的には管理規約の16条
及び 18条の規定)に違反しているか。
[14] コンドミニアム裁判所は宣言書、管理規約または使用細則で禁止、または
制限、または他の方法で管理する規定に関する紛争の裁判権を有している。
CCC132管理組合の駐車場規則に関連した規定条項としては、管理規約
第16条及び18条が本事案に該当するものであり、それらは次のように規定
されている。
第16条 所有者は、それぞれの住戸への歩道、出入り口、通路を妨害したり、
他の目的で使用したりしてはならない。
第18条 私有車(private passenger vehicle)以外の車両は、敷地以外のどの
場所にも駐車してはならない。
車道または駐車場以外の共用部のどの場所でも運転してはならない。
[15] CCC132管理組合の弁護士は、被告の「駐車行為」はこれらの規則に違反してい
ると主張する。なぜなら、被告は純粋に出入りの目的で車両を駐車しているのでは
なく、彼の住戸に指定された駐車場所を越えて駐車しているからである。
少なくとも 2022年の冬には、被告の車道に駐車する行為によって除雪作業に問
題があったが、管理規約第16条と18条に従っていない。被告は自分の車道(他
の所有者が「共有する」車道ではない)に車両を駐車しているが、住戸の正面か
ら6インチはみ出している可能性がある。彼が規約第16条に反して、歩道、進入
路、またはその他の車道を妨害しているという証拠はない。
然しながらMs.ハウル氏は、2022年1月27日付の書簡で、車両を適切に駐車する
ことについて具体的な指示を出したが、被告はその指示を規則外の説明として
無視したものと思われる。
[16] さらに、規約第18条は、車道または駐車場以外の共用部のどの場所でも運転
又は車両を駐車してはならないと規定しているが、この規定は雪に覆われた
アスファルトの車道から約6インチ先に駐車してはならないことについても適用
される。
CCC132管理組合にとって問題となるのは、被告の車両の駐車方法である。
しかし、除雪作業については、被告が車両を駐車するやり方がCCC132のこれ
らの規則に違反しているかどうかについては疑問がある。
[17] CCC132管理組合が引用した管理規約(上記のパラグラフ[14]記載)は、
裁判所に提示された特定の事実に基づけば、本事案に関連する条項では
なく、裁判所が管轄権を有する規則ではないことを裁判官は認める。
争点2:被告の行為は、宣言書及び管理規約に違反してニューサンス
(迷惑行為)を構成しているか。
[18] コンドミニアム裁判所は、共同住宅の住戸内、または共用部、(またはもし存
在するなら、管理組合が管理する資産)に対する迷惑行為、不快を与える行為、
秩序を破壊する行為に関して、共同住宅の統治文書で規定する禁止及び制限、
またはその他の方法で管理することに対する紛争について、これを審理する裁
判権を有している。
CCC132共同住宅宣言書 第W章 第1条 (e)項には次のように記載されている。
「所有者、家族、またはゲストによる住戸または共用部で、迷惑となるような
状態の存在及び活動は許可されない。」
さらに、管理規約は次のように述べている。
「所有者は、自己の住戸で下記の行為をすること、それを許可すること、そこに
何かを持ち込んだり保管したりすることを行ってはならない。」
(a) 他の所有者の住戸または共用部を快適かつ静かに楽しむ権利を妨害また
は干渉する行為
[19] CCC132管理組合は陳述書の中で、被告の行動は明らかにCCC132共同住
宅の他の居住者を混乱させており、CCC132管理組合が行うメンテナンスと修理
の義務を果たす能力を妨げていると述べている。
更に、管理組合は、上記の規定は迷惑行為を構成するものを特定していない
が、そのような特定がないからといって、管理組合がこれらの規定を執行する
資格を失うべきではないと主張する。さもなければ、所有者は規則に触れない
行動の基準値を勝手に誇示する可能性がある。
[20] CCC132管理組合が提出した陳述書の中で自ら認めているように、被告の行為
がニューサンスを構成するかどうかについては、共同住宅法(the Condominium
Act, 1998)の第117条第(2)項及び共同住宅法施行令(Ontario Regulation 48/01)
に基づいて作成されているCCC132共同住宅宣言書及び管理規約では、ニューサ
ンス(迷惑行為)の明確な定義は記述されていない。
ニューサンスについての法学上の確立された解釈によれば、ニューサンスの主張
が認められるには、その干渉行為が実質的かつ不合理であることを要し、かつ、
実質的干渉行為の頻度及び継続期間の組み合わせで構成されることが必要で、
些細な干渉はニューサンスの主張を裏付けるのには不十分である。
[21] それでは、被告の行為は宣言書第W章の規定に違反し、ニューサンスを構成す
るというCCC132管理組合の主張の根拠は何であろうか?
パラグラフ[6]で述べた如く、幾つかの事件が存在したが、しかし、裁判官は最初に
駐車行為について焦点をあてる。
[22] 上記に要約された証拠が示すように、被告は2021年3月に最初に貯雪場所に関
する問題を提起し、彼の所有地に隣接するエリアをもはや貯雪に使用しないよう要
求した。これに先立って、彼の車両の安全性に関する苦情はなく、彼の車両が損傷
の危険にさらされたとの事件もないように見える。サンシャイン社でも問題は発生し
なかった。実際、被告は以前、自分の車を動かすように求められた場合、協力的で
あった。
2021年12月、被告は自分の車両の近くで除雪作業を行うことは容認できないと
述べ証拠が示すように、除雪と保管を妨げるような方法で車両を駐車し始めた。
Ms.バーグーン氏の電子メールを通じた被告へのCCC132管理組合の対応は、
幾分唐突で否定的であると見られるかもしれないが、彼が自分の車をガレージ
に駐車できるという彼女の指摘は適正であった。
ここで裁判官はまた、CCC132管理組合が住戸の隣に雪を蓄えることを許可する
ことによって、住戸の基礎に損傷を与えていたという立場を支持する証拠が私の
前にないことを告知しておく。もしも被告がそれを真実と証明することができれば、
裁判上の判断に供しうるものである。
[23] 裁判官は、2021年12月と2022年1月の被告の行動は宣言書第W章に反する迷
惑行為を構成していたことを認める。それらは、CCC132管理組合の保守義務を遂
行する能力に対する実質的かつ不当な干渉である。
被告は、Ms.バーグーン氏及び弁護士を通じて、サンシャイン社の仕事を妨げる
ような方法で駐車し続けると不利な結果が生じるであろうとアドバイスされた。
CCC132 管理組合には、保管場所を他の場所に移動する以外に選択肢はなか
った。敷地外の雪を取り除くために費用が発生したが、それはすべての所有者
が分担する必要がある費用であり、些細な費用ではなかった。
[24] 上記のように、CCC132管理組合は、迷惑行為であると主張する被告の他の行
為にも言及した。たとえば、別の住戸所有者(および理事会メンバー)のキャロル・
アン・アームストロング(Carol Ann Armstrong)氏との幾つかのやり取りと、彼が車
道で工事用標識コーンを蹴った事件. Ms.ハウル氏は、これらの事件について彼に
数通の手紙を書いた。
[25] 工事用標識コーンの蹴りに関しては、裁判官は取るに足らない出来事として認め
る。2021年3月、被告はMs.バーグーン氏に電子メールを送り、彼の車道のアスファ
ルトに突き出たバルブがあり、これは障害物で安全上の問題であることを知らせた。
Ms.バーグーン氏は、調査すると答えた。真相はどうやらアスファルト請負業者が
バルブを打ち込む作業を行い、その間、誰かがバルブにつまずくのを防ぐために
バルブが見えるように工事用標識コーンが置かれたものらしい。
被告はこの工事用標識コーンを道路に蹴り飛ばしたというものである。
[26] Ms.バーグーン氏は、被告に電子メールでなぜそうしたのかと尋ねたところ、被告
は、「カナダの価値観にもっと合致する方法」でそれを移動する必要があったことを
認めた。被告のMs.バーグーン氏への電子メールによると、彼の行動はMs.アーム
ストロング氏と難しい関係にあるようで、彼の車道に足を踏み入れたことへの反応
と見られている。
[27] 自分の車道で工事用標識コーンを蹴るのは、状況に対する過度の反応だったか
も知れないが、ニューサンス(迷惑行為)ではない。それは些細な事であり、他とは
無関係な単独の事件である。
CCC132管理組合はまた、おそらくニューサンスのパターンである迷惑行為、不快
を与える行為、秩序を破壊する行為を示唆する他の事件を指摘する。これらの事
件の大部分は、Ms.アームストロング氏との交流に端を発している。
Ms.アームストロング氏は、被告の行動上の問題について証言した。具体的には、
2021年3月、彼女が猫をつれて散歩中の出来事である。被告は住戸から出てきた
が、車道で立ち止まった。彼は彼女の猫と話し始め、そして彼女に嫌がらせと脅迫
的なコメントを言ってきた。彼女はこの事件を警察に通報したが、その時、彼が彼
の言葉通りに行動するとは思っていなかったと証言した。
Ms.アームストロング氏は、2021年4月と2022年1月の事件にも言及した。
彼が彼女や彼女の家族の安全に脅迫を加えているとは感じなかったが、
しかし彼の行為は、共用部における楽しみを奪うものであると証言した。
Ms.バーグーン氏は他の入居者が被告の住戸に近い共用部にいるときに
被告の住戸の扇動的な展示物が他の入居者に不快感を与えている断続
的な件について証言した。
[28] 意見陳述の終わりに、原告代理人弁護士は、ニューサンスの定義を辞書で調
べ、それを「迷惑、不愉快、不快な感じを与えるもの」("annoying, unpleasant or
obnoxious".)として引用した。
被告の行為はそれらにすべて当てはまる可能性があるが、しかし、法廷での訴訟
の場合、関連する統治文書に別の法で確たる定義が存在しない場合、ニューサン
ス(迷惑行為)を法的概念(legal concept.)として定義するよう求められる。
不愉快で、不快な行為はコンドミニアムコミュニティ内で時々横行することがあるが、
それ自体は、私の前にあるような宣言書または管理規約の規定違反ではない。
さらに、これらの事件は、証人が証言したように、断続的であり、循環して繰り返され
る行動パターンではない。たまたま、コンドミニアムの居住者が共用部を楽しんでい
るときに、被告が車道にいるときの行動によって多分、不快な感じを受けたのかも
知れない。
しかしながら、証拠に基づく考えに立てば、裁判官は、管理規約に規定がある「共用
部において静かな楽しみと快適さを享受する権利」に対して被告が実質的または不
合理な妨害行為や干渉を行ったと認めることはできない。
[29] 原告代理人弁護士はシュニッツラー 対 メトロポリタン トロント コンドミニアム管理
組合No.1321 (Schnitzler v. Metropolitan Toronto Condominium Corporation
No.13215 2022ONCAT62 (CanLII))の判決を裁判官に照会した。
これは、裁判所の管轄権に関する第2段階(訳注:調停)の手続きの中でなされ
た抗告に対する決定である。そのため、「攻撃的な罵声」が迷惑な騒音になると
いう証拠は含まれていないが、ロビーなどの共有エリアでのそのようなやり取り
や下品な言葉の使用は、共有エリアの使い方や楽しみを不当に妨げる可能性が
あるため、裁判所の管轄内の紛争である。当法廷では管轄権は問題にされてい
ないので、この事案は当事案とほとんど関係がない。
[30] 要約すると、除雪作業を妨害する被告の行動は、宣言書第W章に違反して
迷惑行為であったことを裁判官は認める。
ただし、被告が管理規約に違反しているとは認められない。
争点3:原告は、駐車場規則の法令遵守及びこれまでの手続きに要した費用
の補償を被告に課す権利を有するか。
[31] CCC132管理組合は、この件で被った以下の費用について、被告が補償する
ことを求めている。
1. 雪をサイト外に運ぶために発生した3,390 ドルの費用
2. CCC132管理組合の法律顧問から被告に送付された様々なコンプライアンス
レターに起因する1,243 ドルの費用
3. この手続きに関連する7,145.32 ドルの訴訟費用
[32] これらの費用の算定根拠をCCC132管理組合は、宣言書附則(Article X)の規定
に基づいている。
各所有者は、そのような所有者の作為または不作為の結果として、またはそ
れらによって引き起こされた損失、費用、損害、怪我、または責任から、管理
組合を補償し、損害を与えないようにするものとする。ただし、被保険者 (1つ
または複数の保険証券で定義) によって引き起こされ、管理組合に対して被
保険者となった損失、費用、損害、怪我、または責任を除く。
この条項に基づくすべての支払は、共益費に対する追加拠出とみなし、それに
よって回収可能とする。
[33] 裁判官は、被告の車両の駐車および除雪作業への影響に関する被告の行動
はニューサンスを構成すると認める。これらの事実に基づいて、被告に補償を課す
ことを認める。
上記のように、Ms.ハウル氏は 2022年1月27日に被告に手紙を送り、彼の行動
によって費用が発生すること及びその負担について助言した。この手紙は、
2022年1月16日と22日のCCC132管理組合からの電子メールに続き、管理組
合が彼の行動の結果として費用が発生した場合、彼らは補償を求めることを被
告に通知し、1月22日の電子メールで、彼が協力しなかった場合の対応を具体
的に指摘した。これらの対応は弁護士からのもので、彼らの関与に関連する費
用も被告に請求される。
[34] 妨害の認定を考えると、宣言書附則(Article X)の規定に従って、被告の行動
の結果として発生した追加の除雪費用を示す3,390 ドルの総額及び2022年1月
27日のコンプライアンス レターの費用621.50 ドルをCCC132管理組合に弁済す
るよう被告に命令することは公正かつ適切である。
[35] 2021年4月30日と6月14日のコンプライアンス レターの費用に関しては、これ
らの書簡は、当法廷において裁判官がニューサンスとして認定した事案よりも
以前のものである。Ms.ハウル氏はそれらの書簡の中で、いくつかの事件に言
及しており、その中には裁判官が認定した事案以前に証拠があったものもあれ
ばそうでないものもあった。証拠にあるものは、一部の所有者の苦痛を引き起こ
した可能性があるが、宣言書または管理規約の違反を構成しないことが判明し
た事件に関連している。 したがって、これらのコンプライアンスレターの費用の
請求は認められない。
[36] しかし、裁判官は、これまでの書簡を通じたアプローチに見られるMs.ハウル氏
の弁護士としての見識を賞賛したい。(I do,want to commend for aspects of her)
CCC132管理組合が、被告の行動は宣言書と管理規約に違反していると考えて
いたことを指摘し、2通の書簡で、当事者の行動に影響を与えた可能性のある潜
在的な医学的及び/又は精神的健康状態があったかどうかについて照会と調査
を行っている。その際、管理組合に対し住居管理を行う自らの義務を認めて当事
者と連絡を取るように求めていた。
これは被告の福祉(wellbeing)に対する懸念を表明したもので、コンドミニアムコミ
ュニティ全体の最善の利益のために協力するという意図を暗示していた。
[37] 被告はMs.ハウル氏に返信しなかったが、2021年4月30日のMs.バーグーン氏へ
の電子メールで、すべての居住者と快適に暮らせるようにしたい、良好な友好関係
を築いていきたい、それが彼の目標であると述べている。
彼は、昨年、人生を変える重要な出来事が数多くあり、苦労したこと、そして仕事
を休んで無給でいたことについて、それとなく言及していた。
[38] 本件訴訟に関連する費用7,145.32ドルについて考察すると、当法廷が下す権限
は共同住宅法1.44条に規定されている。法1.44条 (2)項は、費用の命令は「裁定機
関の規則に従って…決定されるものとする」と述べている。
この事案に関連する裁判所の実務規則の費用関連の規則は次のとおりである。
48.1 事案が和解契約または同意命令によって解決されず、裁判官が最終決定
を下した場合、敗訴当事者は、裁判官が別段の決定をしない限り、勝訴した
当事者の裁判料金を支払うものとする。
48.2 裁判所は、通常、一方の当事者が手続きの過程で発生した訴訟費用また
は支払 (「費用」)を他方の当事者に賠償するよう命令することはない。ただし、
必要に応じて、裁判所は、当事者の費用の全部または一部を他の当事者
に支払うよう命令することができる。これには、不当かつ不適切な目的で行
われた、または遅延または追加の遅延を引き起こした当事者の行動に直接
関連した費用が含まれる。
[39] 裁判所実務規則において裁判所における費用裁定手続きは、2022年1月1日
発行の「費用の裁定に関するガイダンス」で次のように規定している。
考慮すべき要因の中には、当事者または代理人の行為が不合理であったか、
不適切な目的であったか、または遅延または費用を引き起こしたかどうかが含ま
れる。訴訟が不誠実または不適切な目的で提起されたかどうか、すべての当事
者および代理人の行動、費用を課す命令が当事者に与える潜在的な影響、また、
訴訟が提起される前に、当事者が係争中の問題を解決しようとしたかどうか、
裁判所はまた、管理組合の統治文書の条項、および宣言書と管理規約の違反
の潜在的な結果を当事者が明確に理解していたかどうかを検討する場合がある。
[40] 裁判官は、規則48.1 に従って、被告に対し、原告が支払った150 ドルの裁判
費用を弁償する事を命じる。
発生した訴訟費用を評価する際に、CCC132管理組合は、本件での主張に関し
て、部分的にしか勝訴しなかったことに注意する必要がある。
被告は本裁判の審理に参加しなかったが、裁判官は彼に不当性があるとは考
えていない。CCC132管理組合は、本訴を申請する前に、管理組合と被告との間
の問題に対処するための申し入れを行ったが、成功しなかった。
一連のコストの潜在的な影響を考慮すると、7,145.321ドルは取るに足らない額
ではないことに注意すべきである。裁判所に提出された証拠は、被告が無給で
仕事を休んでおり、個人的な課題に対処しようとしていることを示唆している。
裁定されたコンプライアンス コストに加えて、7,000 ドルのコスト裁定の影響は
相当なものになる可能性がある。
[41] コンドミニアムの宣言書には明確な補償条項が含まれており、CCC132管理組
合は被告に何度かそのことを知らせていた。
裁判所と本法廷は、他の所有者に対してコンプライアンスを実施するための費用
を補償するよう他の所有者に要求することは不公平であるという原則を明確にし
た。また、費用の裁定は任意であり、コンドミニアム管理組合は法的およびコン
プライアンス費用を負担する際に、合理的かつ賢明に行動しなければならない
ということも確立された法の論理である。
訴訟費用の全額補償が認められることはまれである。これは、被告が裁判審理
に参加しなかったため、プロセスがより合理化されたケースであった。
裁判手続きにおける被告の行動は、実際にはCCC132管理組合の費用や審理
の複雑さを増加させず、むしろ彼の裁判欠席がこれらを軽減するのに役立ったと
いえる。
また、これは所有者が何年にもわたって規則に違反していたというケースではな
かったが、CCC132管理組合がこの訴えを今提出することで、除雪問題につい
て、次の冬のシーズンが昨年の繰り返しにならないようにしようとしていることを
評価(appreciate)する。
コミュニティに対する CCC132管理組合の懸念を最小限に抑えることはできない
間にも他の問題は断続的に発生している。
[42] 裁判官は、宣言書規定 (補償条項を含む) にはある程度の関連性があり、この
文脈(コンテキスト)では、宣言書の遵守を確保するために、他の所有者が負担する
費用を最小限に抑えることが適切であり、したがって、被告がいくらかの責任を負う
ことは不合理ではないと考える。
この審理を通じてコンプライアンスを確保するための法的費用の負担について、
CCC132管理組合から提供された費用請求書に基づくと、この第3段階の審理に
係る訴訟費用は約4,500 ドルである。
上記のさまざまな要因を考慮して、裁判官は1,100ドルを妥当な額として裁定する。
E. 結 論 (CONCLUSION)
[43] 本件を要約すると、除雪作業を妨害する被告の行為は、CCC132共同住宅宣言
書第W章に違反するニューサンス(迷惑行為)であると認める。
従って共同住宅法第1.44条第 (1)項第3号に従い、本法廷は被告に対し、621.50
ドルの弁護士費用と、発生した追加の除雪費である3,390 ドルをCCC132管理組合
に補償するよう命令する。
共同住宅法1.44(1) 4 およ裁判所実務規則第48条に従って、被告は、本裁判の
手数料として原告により支払われた150ドルと1,100 ドルの訴訟経費に対して
CCC132管理組合に賠償しなければならない。
F. 判 決 (ORDER)
[44] 当法廷は次のように命じる。
1. 被告は、特に迷惑行為となる除雪に影響を与える方法での車両の駐車に関して、
CCC132共同住宅宣言書第W章を遵守すること。
2. 共同住宅法第1.44 (1) 3 に従い、この判決から 30日以内に、被告はCCC132
管理組合に3,390ドルの金額を補償金として支払え。
3. 共同住宅法.44 (1) 3 に従い、この判決から 30日以内に、被告は、発生した弁護士
費用及び費用に関して、621.50 ドルを補償金としてCCC132管理組合に支払え。
4. 共同住宅法.44 (1) 4 並びに裁判所実務規則48条に従い、この判決から 30日以内
に、被告は、この件に関する費用としてCCC132管理組合に1,250ドルを支払え。
裁判官 パトリシア・マックエイド (コンドミニアム裁判所副議長判事)
公開:2022年9月9日
Patricia McQuaid Vice-Chair, Condominium Authority Tribunal Released on: September 9, 2022
(以上 マンションNPO 訳) (2022年11月25日初版掲載・随時更新)
(Initial Publication - 25 November 2022/ Revised Publication -time to time)